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ハッピーなライフスタイルを探して
エコ-フレンドリーリビング
vol.2
ヴェトナム流スロゥタイム&スロゥフード
〜日々をいとなむ『たくましさ』

カレンダーを9月にめくる頃になると感じることがあります。
3年前の2001年の9月11日にN.Y.で起こった惨事。あの直後「世界はどうなるんだろう!? 日本はどうなるんだろう?」「世界がひっくりかえる!」というパニックにも似た雰囲気がU.Sをはじめ日本には漂っていたとか。
当時ワタシはヴェトナムの山あいの小さな村で暮らしていました。電話も電気も水道もない場所で、もちろん新聞もインターネットもありませんでした。その出来事を知ったのは、たぶん2〜3日後だったと思います。ワタシは何も知らず、そこで暮らすヴェトナム人と同じに毎日土と汗まみれで、雑草をひっこ抜いてコーヒーの苗木を植えて。ごはんを作って食べて、眠る─という生活をしていました。
そしてはじめて見る・食べるヴェトナムのお菓子やお料理に感激して、作り方を習っていました。調理器具もプリミティブなものしかなくても、こなれた手つきで難なくこなしてしまう、自分よりも10も15も歳の若い女の子たちに、感心しきっていました。
ヴェトナムには、ポピュラーなデザートに「チェー」と呼ばれるものがあります。豆をふんだんに使ったおぜんざいです。お砂糖をたっぷり使って、炊いた餅米を入れたりするあまーいデザート。豆の種類もたくさんあるので、そのぶんだけチェーもバラエティに富んでいます。ところがこれを作るのが、たいへん。半日はかかりました。まず豆を炊く。このとき使ったのは、シロインゲンよりも小さくて細い豆。ことこと、ことこと‥と午前中いっぱい、豆を炊きます。その間ワタシたちは畑に出て草刈りや整地。太陽が真上に来て、もう眩しくて目を開けていられなくなったら、お昼を食べに帰ります。涼しい風が抜けるお家で、ごはんを食べ終わってから炊いた豆の皮むきという大仕事。手で一つひとつ剥いていきます。豆は小さいし、いっぱいあるし。女の子と二人で、ヴェトナムの歌と日本の歌を教えあって唄いながら、笑いながら2時間くらい豆の皮を剥いていました。暑いけど、ときどき涼しい風が、ひゅる〜と通り過ぎて。ハエがぶ〜んと飛んで、たまに足の指やお鍋のふちに止まったり。お互い手先は動かし続けていて、剥いた豆の皮が積もっていく─、剥かれてつるんとした豆はお鍋にたまっていく─。そのとき、こういうのを『スローフード』っていうんだろうな、とストンと心に落ちてきて納得しました。
このあと餅米を炊いたり、剥いた豆を砂糖と一緒に煮たり─と、行程はまだまだ続くのですが、その晩、みんなでおいしく食べました。ボクトツとした甘い味がおいしいこと。これは今でも忘れることのできない味のひとつです。
そして9月といえば、『中秋の名月』。ヴェトナムでもお月様を愛でる行事があります。このときは村のこどもたちと一緒に、月の光が透き通るように明るい満月の晩、提灯を持って唄ったりしながら村中を歩きました。お月様を見るというより、夜ずっと起きて、唄ったりお喋りしながら練り歩くという行為が楽しいのでしょうね。素朴でちいさい楽しいお祭りでした。
ワタシは、今でもフと思うのですが、あのとき世界がひっくり返るなんて思ったのは世界で暮らす人の、ほんの一部なのではないでしょうか(もちろん巻き添えで悲劇は続いています)。普通にワタシたち人々が『日々をいとなむ』っていうのは、「世界で起きたニュース」に左右されないくらい『あたりまえ』に『連綿と続く』『たくましく』て『力強い』もの、なのかもって。


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イノウエ*アキコ

スキューバダイビング専門誌の編集を経て、情報誌などの制作・編集に関わった後、1999年10月に渡豪。タスマニアで環境保全、オーガニックを学んだ後、パーマカルチャー【永続的かつ自給自足な生産を可能にするためのランドスケープデザイン】を修める。2001年8月から04年2月まで周期的にヴェトナムでNGOの活動を通してパーマカルチャーを実践。東京在住、雑誌を中心にペーパープリンティングの編集・ライターに携わる。



ヴェトナムのデザート 「チェー」
街のカフェで出してくれるようなチェーは豪華! 氷や寒天が入ってつめたいデザートは200円くらい


露店のチェー屋さん。大きな深いお鍋にたっぷり煮込んで売りに来ます。蕎麦猪口一杯くらいで20円くらい


家庭で作るチェーも『手』を使わずには出来ないもの。炊いた豆の皮むきは、時間のかかる手間のかかる仕事だけど、これがあるからおいしくできるとも思えます

 



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