| Ecology on Wheels
〜クルマにまつわる環境学〜
vol.1
クルマと環境、どっちも大切
日常使うクルマのエコ運転から最新のFCEVまで、
クルマを取り巻く環境問題を考える新連載がはじまります。
私が子供の頃には、誰もが最速のスポーツカーに憧れる「スーパーカーブーム」という現象があった。当時は、フェラーリが5リッター・エンジンを積んで、4リッター・エンジンのランボルギーニとどちらが先に最高時速300km/hを出せるか競争していた。だから小学生のころは、女の子なのにピンクレディと同じくらいカウンタックが好きだった。そして自分で運転するようになると、クルマは一気に行動範囲を広げてくれる魔法のジュウタンのように思えた。しまいにはエンジニアとして就職した会社を辞めて、自動車雑誌の仕事に就いてしまった。
ところが近頃、私の愛する自動車は苦境に立たされているらしいと、ヒシヒシと感じる。たとえば、息子の親仲間と話すとき。食の安全や環境問題に熱心なお母さんの口から、「クルマって環境に悪いんですってね」という言葉が出てくる。たしかに、そう思われても仕方ない事実がある。環境庁の試算(※1)では、自動車を含む運輸部門から出されるCO2は排出総量の約2割を占めるし、京都議定書で決められた二酸化炭素の排出削減目標に届かない理由に乗用車の普及(※2)があるという報道もされている。
自動車危うし、である。先程のお母さん仲間に、プリウスのように環境に優しいクルマも出てるのよと言っても、「いくら環境に優しいクルマでも、乗れば二酸化炭素が出るんでしょう?」と厳しい指摘が飛び出す。そのとおり。エンジンをかければ、自動車はCO2、NOx、SOx、PM(※3)……といった環境を痛めつける物質を撒き散らしている。
もちろん本当にエコな生活をするなら、クルマなんて乗らない方がいいに決まっている。でもちょっと待って。「私は運転しないから……」と言う人でも、都バスに乗ったり、スーパーに野菜を運んでくるトラックのお世話にはなっている。家を建てるときも、ゴミを出しても、クルマを使わないことなんてない。さらに地方では、クルマは1人1台。運転しない生活なんてありえない。
じゃあ、「自動車なしで環境に優しい暮らしができないなら、どうしたらいいの?」と思ったアナタ。あるいは環境に悪そうなスポーツカーやレースが好きだから、エコな話題からは目をそらそうと思っていたアナタも。ひとりひとりの取り組みが重要になってきている今だから、クルマと環境、どちらも大切だと思っている私と一緒に、自動車のエコロジーを考えてみませんか?

※1 京都議定書に基づいて二酸化炭素排出量の目標を定めた地球温暖化対策推進大綱による。
※2
日本では、毎年600万台の新車が販売され、7000万台もの自動車にナンバーが付けられて走っている。前者は、2003年自販連調べの国産車登録台数と2003年日本輸入車組合調べの輸入車登録台数(ただし、三輪車とその他の日本車は除く)の合計により、後者は2003年自動車検査登録協力会調べの自動車保有台数(ただし、二輪車、三輪車、非牽引車、特殊用途用車は除く)による。
※3
自動車の動力源であるエンジンを動かすとき、化石燃料を燃やした結果、排出される環境負荷物質。温室効果ガスとして知られているCO2(二酸化炭素)の他、NOx(窒素酸化物)は酸性雨の原因であるとともに光化学スモッグの要因、SOx(硫黄酸化物)は酸性雨のの原因と言われている。PM(粒子状物質)はものが燃えることで生じるすすのうち、10μm以下という細かい粒を指し、呼吸器に影響を及ぼすと言われている。
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川端 由美 (カワバタ ユミ)
1971年生まれ。大学院でセルロースや炭素などの天然高分子を専攻(材料工学修士)。エンジニアとして就職するも、子供のころからのクルマ好きが高じて自動車雑誌の編集部に転職。エンジニア時代に電気自動車用の部品を設計した経験を買われ、次世代自動車の企画を担当する。3年前に長男を出産してからは、自動車の安全対策、環境やエネルギー問題といった次世代に与える影響を総合的に見られるようになったと感じている。母親、技術者、そして自動車ジャーナリストというハイブリッドな目線を活かしたリポートを展開する。 |
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