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Ecology on Wheels 〜クルマにまつわる環境学〜
vol.2
「エコバス」を楽しんじゃおう!

日常使うクルマのエコ運転から最新のFCEVまで、
自動車にまつわる環境問題を考える自動車エココラムです。


 都心の幹線道路に面したわが家は、排ガスと騒音のため、この猛暑でも窓をあけられない。ベランダに出て、ゴーと走り過ぎるトラックやシューッとため息をつくバスを見ると、私までため息が出てしまう。ある日、夕飯の準備をしていると、夫が「この暑さどうにかならないの?」と聞いた。ガス台の前に立ってイラついていた私が、「みんながエコカーに乗れば、少しは涼しくなるかもね」と投げやりに答えると、へぇーっという顔をして彼はネット検索を始めた。
 夕食を食べながら、「インフラの問題があって、自家用“エコ”車の普及はこれからだけど、走るところや給油所が決まっている路線バスなら“エコバス”がもう走ってるんだよ」と、彼は得意げに調査結果を披露してくれた。普及してきたCNGバス(※1)に加えて、ガスタービンEVバス(※2)、燃料電池ハイブリッドバス(※3)(以下、FCHV-BUS)も登場している。ちょうど夏休みだし、家族で「東京エコバスツアー」に出かけることになった。
 まずは、海01系統を走るFCHV-BUS、平たくいうと、門前仲町と東京テレポート駅を結ぶ燃料電池の都バスに乗った。バス停で待っていると、太陽や星の絵が描かれた背高バスがスーッと静かに入ってきた。ユニバーサルデザイン(※4)に基づいて設計されているので、床が低く、段差がなく、通路が広い。車椅子や年配の方はもちろん、3歳の息子にとっても乗り降りしやすい。他にも普通のバスと違うところが沢山あって、「このバスは燃料電池バスです」というアナウンスが流れたり、液晶画面に「ディーゼルエンジンの半分のエネルギーで走ります」なんてメッセージが表示されている。
 まぁ、そんな演出をしなくても、走り出せば誰でも普通のバスと違うとわかるはず。例えば、普段はシフトダウンしてアクセルを吹かす坂道でも、もの静かにグングンと登っていく(※5)。なんといっても、私はバスにめっぽう弱くて、30分も乗れば酔ってしまうけれど、このバスなら全然気持ち悪くならなかった。ディーゼル特有の排ガスの匂いがなく、乗り心地が抜群だからだと思う。それどころか、下り坂で回生ブレーキ(※6)のウィーンという音がすると、「エネルギーを無駄にしないように集めてる!」と思えて、気分が良くなってしまう。あぁ、小学生の頃にこんなバスがあったら、遠足のとき先生の隣りでじーっと我慢しないでよかったのに……。
 終点で東京駅へ向かう普通のバスに乗り換えたら、振動が大きかったり、ガクンと変速ショックがあったりして、やっぱり酔ってしまった。息子が遠足に行く頃には、こんなエコバスが普及するといいなぁ、なんて思いながら、もう一台のエコバス、丸の内シャトルの乗り場に向かった。

 


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※1)圧縮天然ガス(Compressed Natural Gas)の略。都市ガスにも使われている天然ガスを燃料に使う。オクタン価の高いメタンを主成分とする天然ガスを圧縮して使うことで、ディーゼルエンジン並みの動力性能が確保できるという。一方で、従来のディーゼル車と比べると、NOxの排出量が少なく、PMや黒煙は排出されず、振動も騒音も低い。都バスでは、東京都の環境対策の推進に伴って、CNGバスへの切り換えが進んでいる。

※2)ガスタービンとは、燃料を燃やして発生した高温高圧のガスをタービンに吹き付けて回転させることで推進力を得るシステムだ。このバスの場合は、軽油、CNG、LPGなどを燃やして発生したガスでタービンを回して発電し、モーターを動かしている(シリーズ方式)。発電時に燃焼を伴うが、それ以外は電気自動車と同じ構造となる。振動が少なく、排ガスがクリーンで、多様な燃料を使えるのが利点だ。従来のディーゼルエンジンと比べて、NOx、PMなどを低減できる上に、騒音はEVと同レベルの55dB(従来型は75dB)に抑えられていると謳われる。日本橋でも、同じ型のシャトルバス「メトロリンク日本橋」が運行されている。

※3)トヨタの燃料電池とハイブリッドに関する技術を投入して、日野が架装を手掛けた日本初の燃料電池ハイブリッドバス。燃料電池は、水素と空気中の酸素を化学反応させて、電気と水に変える原理を利用しているので、従来のガソリンに代わって水素を積む必要がある。日野ブルーリボンシティをベースに、屋根の上に160リットル×5本の高圧水素タンク、後席後ろに燃料電池スタック、2次電池、それらの働きを制御するハイブリッドユニット、従来のトランスミッションのスペースにモーターが収められている。状況にあわせて、燃料電池か2次電池を使い分けてモーターに電気を送るシリーズ−ハイブリッド方式をとる。JHFCの実証試験のために、2003年夏から都バスに導入されて、2004年12月まで走る予定。運行スケジュールは、数日前に深川営業所(Tel.03-3529-3322)に問い合わせのこと。

※4)年齢や障害の有無に関係なく、誰でも使いやすいようなデザイン。今回乗ったバスの中では、ピクトグラムと呼ばれる絵文字や、押しボタンが判別しやすいように背景と反対色を使うといった工夫がされていた。

※5)普通のガソリンエンジンのクルマは、たいてい3000〜4000rpmのあたりに“最大トルク”と呼ばれる最も大きな力の出る領域がある。そのため、変速することで広い速度域で大きなトルクを使えるように設計されている。しかし電気自動車のエンジンにあたるモーターは、理論上、電流を流し始めたときに最も大きな力を出せるので、発進時に最大トルクを使うことができる。また直流モーターなら、電圧はそのままで、電流値を制御するだけで力の大きさを変えられるため、ギアチェンジの必要がない。FCHV-BUS2は、最高出力109ps×2、最大トルク26.5mkg×2を発生する。

※6)減速時に、モーターを逆に回すことで発電してエネルギーを回収するシステム。普通のバスはブレーキの他、排気ブレーキやリターダーと呼ばれる補助ブレーキを積んでいる。FCHV-BUSの回生ブレーキは、補助ブレーキの役割を果たしている。



川端 由美 (カワバタ ユミ)

1971年生まれ。大学院でセルロースや炭素などの天然高分子を専攻(材料工学修士)。エンジニアとして就職するも、子供のころからのクルマ好きが高じて自動車雑誌の編集部に転職。エンジニア時代に電気自動車用の部品を設計した経験を買われ、次世代自動車の企画を担当する。3年前に長男を出産してからは、自動車の安全対策、環境やエネルギー問題といった次世代に与える影響を総合的に見られるようになったと感じている。母親、技術者、そして自動車ジャーナリストというハイブリッドな目線を活かしたリポートを展開する。



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