| Ecology on Wheels
〜クルマにまつわる環境学〜
vol.3
続「エコバス」を楽しんじゃおう!!
日常使うクルマのエコ運転から最新のFCEVまで、
自動車にまつわる環境問題を考える自動車エココラムです。
私がクルマの運転を好きな理由のひとつに、「運転していれば酔わない」というのがある。バスに乗ったらすぐに酔ってしまうから遠足は憂鬱だったし、意中の男の子からドライブに誘われても遠出は断るしかなかった。そんな私にとって、前回リポートした燃料電池バスは夢の乗り物といっていい。でもその後、普通のバスに乗り換えたら、すぐに気分が悪くなり、ゲンナリしてしまった。
「丸の内シャトルはディーゼルっていっても、排ガスは低レベルで、走りもスムーズってホームページに書いてあったよ」と夫がなだめるので、気を取り直して、今度はガスタービンEVバスである丸の内シャトルに乗ることにする。新丸ノ内ビル前のバス停で待っていると、赤と白の丸っこいバスがやってきた。15分毎に丸ノ内口を出て、大手町、有楽町をぐるりと回っていて、どこのバス停で乗り降りしても無料だ。ニュージーランド製のバスを日の丸自動車が購入して、運営費用は地元企業からの協賛金でまかなわれている。
「ガスタービン」とは、燃料を燃やすと出てくるガスを、扇風機の羽みたいな形の“タービン”に吹き付けてパワーを得る機械のこと。このバスでは、タービンを回して発電し、一旦電池に貯めてからモーターに電気を送っている。充電する代わりにガスタービンで発電する“電気バス”だから、渋滞や信号でストップ&ゴーが多いエリアは得意とするところだ。それに軽油をディーゼル車より低い温度で完全に燃やすので、NOx、黒煙、未燃焼ガスのような悪玉をぐんと減らすことができるらしい(※1)。
室内の作りと走りっぷりは、燃料電池の都バスとよく似ている。普通のバスでおなじみの排ガスの匂いはないし、カタタタタという振動がない。発進のときにキュィーンという微かな音がして、加速すると後ろの方でシューンと何かが回るような音がするのは、レギュレーター(※2)やモーターの音だろう。それでも普通のバスと比べたらとても静かだし、スムーズな走り出しと快適な乗り心地のおかげで、バス酔い知らずだ。
ところで燃料電池の都バスと丸の内シャトルでは、目的がずいぶん違う。都バスがJHFC(※3)のテストという大義を掲げる一方、丸の内シャトルは地域の環境改善と活性化や交流が目的だ。それぞれ主張はあるけれど、どちらも人目につく地域を走ることで、公共機関や企業、地域の取り組みとしての環境保全をアピールする力は大きい。排ガスが低く抑えられているし、静かでスムーズだし、いいことばかり。こんなバスが増えて、道路沿いの環境が良くなれば、幹線道路に面した我がマンションの評価額だってあがるかもしれない。
でもなぜ、もっと沢山走っていないのだろうか……、というところで紙幅が尽きたので、次回は、エコバスの課題を徹底調査する。

<< Ecology on Wheels 〜クルマにまつわる環境学〜 インデックス
(※1)ハイブリッド車の排ガス試験が確立されていないため、厳密には比較できないが、アメリカでの試験や日本で行なった排ガス試験を参考にこのように表記した。DPF(Diesel
Paticulate Filter、ディーゼル微粒子除去装置)と呼ばれるディーゼル車の排ガスからPMを取り除く装置を積んだバスと比べて、NOxは5分の1、PMは3分の1以下、HCは3分の1以下、COは10分の1だという。従来のディーゼルエンジンと比べて、低い温度で軽油を燃焼させてNOxを低減し、燃焼室の形状を完全燃焼しやすい形にすることで未燃焼ガスを減らしている。(情報提供=日の丸自動車興業、東京電力)
(※2)交流を直流に変える整流器のこと。正確には、交流→直流をレギュレーター、その逆をインバーターと呼ぶが、どちらも同じ意味で使われていることがある。電池に蓄えられた電気は直流なので、モーターで使うためには交流に変えなくてはならない。反対に、回生ブレーキで発電した電気は交流なので、整流器を通して直流に戻してから電池に蓄える。
(※3)水素・燃料電池実証プロジェクト(Japan
Hydrogen & Fuel Cell Demonstration Project)の略。経済産業省の旗振りの下、自動車メーカーや石油会社などが参加して実施している水素・燃料電池に関する実証プロジェクト。主に燃料電池自動車の実証試験、水素ステーションの運用を行なっている。
日の丸自動車/丸の内シャトルの紹介
http://www.hinomaru.co.jp/metrolink/marunouchi/index.html
JHFCのホームページ
http://www.jhfc.jp/
川端 由美 (カワバタ ユミ)
1971年生まれ。大学院でセルロースや炭素などの天然高分子を専攻(材料工学修士)。エンジニアとして就職するも、子供のころからのクルマ好きが高じて自動車雑誌の編集部に転職。エンジニア時代に電気自動車用の部品を設計した経験を買われ、次世代自動車の企画を担当する。3年前に長男を出産してからは、自動車の安全対策、環境やエネルギー問題といった次世代に与える影響を総合的に見られるようになったと感じている。母親、技術者、そして自動車ジャーナリストというハイブリッドな目線を活かしたリポートを展開する。 |
|