| Ecology on Wheels 〜クルマにまつわる環境学〜
vol.4
エコバス・“プロジェクトX”
今回乗った2台のエコバスは、乗ってみるといいことずくめなのに、まだ日常どこでも見かけるほどは走っていない。そこで、普及のための課題を徹底調査。沢山の人の足として働くバスのエコ化という大きなプロジェクトを支える人々にインタビューしました。
燃料電池の都バスは、静かで乗り心地が良く、公害ゼロ。ガスタービンEVの丸の内シャトルも、負けず劣らずの快適な低公害バスだった。でも燃料電池都バスはたった1台きりだし、ガスタービンEVバスも4台が走っているだけだ。そこでエコバスに携わる人たちに、「なんで普通のバスの代わりにエコバスをもっと沢山走らせないの?」と聞いてみることにした。まずはガスタービンEVバスを運行している日の丸自動車興業(株)の佐藤憲一さんのお話から。そもそも一日中、無料で走らせるなんて、どうしてできるんだろう?と不思議だった。
「それは地域のまちづくり協議会に参加する企業を中心に、スポンサーを募っているからです」と佐藤憲一さんはいう。無料で街中のスポットを結ぶコンセプトと、超低公害車が持つイメージの相乗効果が企業の支持を得たようだ。1年経った今では、無事採算の目処が立ってきたという。4年前からお台場で走る無料バス“ベイシャトル”(※1)のノウハウがあったおかげだ。「バス事業という本業で社会貢献したいと考えています。ビジネスですから、きちんと利益が出る形で環境に優しいバスを走らせ続けたいのです」
このバスと佐藤憲一さんの出会いは、日比谷の事務所を訪れたとき、偶然にも、隣接した東京電力社屋前で行なわれているガスタービンEVバスの試乗会を見たことだ。普通のバスの2倍もする高価なガスタービンEVバスを4台も購入する思い切った投資ができたのは、日の丸自動車の社長が自ら試乗して気にいり、直轄プロジェクトとなったからだ。以来、上司の三柴伸生さんと一緒に、運行やメインテナンスは日の丸、技術面のサポートは東京電力と二人三脚で進めてきた。
「自動車メーカーではないので、ナンバーを付けるために大臣認定(※2)を取るのに苦労しました」という東京電力の佐藤
宏さんは、二人と苦楽を共にした仲だ。「私たちは技術面でプロジェクトを支え、日の丸自動車さんはお客さん側の視点に立ってプロジェクトを進めています。よいパートナーですね」2000年にプロジェクトを始め、緑ナンバーのバスとして2002年に大臣認定を取り、公道を走れるようになった。
水素を使う燃料電池バスと違い、どこでも手に入る軽油を燃料に使うガスタービンEVバス。一般の路線バスや観光バスでも使えるのではないか、と期待が膨らむが、ディーゼルエンジンを積む普通のバスほど柔軟とは言えないのが現状だ。街中のストップ&ゴーは得意だが、高速走行に充分なパワーがないから観光バスには向いていないし、上述の通り車両の価格が安くないので、普通の路線バスではなかなか利益を出すのが難しい。当初は、バスを輸入・販売するつもりで検討していた東京電力だが、今後は「エコバスの趣旨を理解してくれる事業者を技術支援して、普及の協力をしたい」と考えている。
丸ノ内シャトルは、企業と連携し、バスも街の一部として育てていく形のまったく新しいビジネスモデルだからこそ、成功した例といえる。じゃあ、燃料電池バスはどうなの?という疑問を、今度は東京都に向けてみた。

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(※1)お台場や有明といった臨海副都心を走る無料巡回バス。この地域の主要交通がゆりかもめしかなく、エリア内の移動が不便であったことから、東京都港湾局が民間に広くアイデアを募集したところ、日の丸自動車から無料巡回バスの提案があり、地域のまちづくり協議会や各施設の賛同を得て、走ることになった。自動車で目的に施設に行って帰ってしまっていたお客を地域内に留める効果に加えて、混雑時に商業施設から少し離れた駐車場の利用を促し、地域内の渋滞解消も狙っている。
(※2)国土交通省の大臣認定を指す。安全および公害防止の基準が定められていない試験的に製作された自動車は、基本的には公道を走ることはできない。これらテスト車に関して、基準の策定を目的に公道の走行試験ができるように、条件付きで大臣認定を受けること。この大臣認定を受けることで、ナンバーが交付される。
川端 由美 (カワバタ ユミ)
1971年生まれ。大学院でセルロースや炭素などの天然高分子を専攻(材料工学修士)。エンジニアとして就職するも、子供のころからのクルマ好きが高じて自動車雑誌の編集部に転職。エンジニア時代に電気自動車用の部品を設計した経験を買われ、次世代自動車の企画を担当する。3年前に長男を出産してからは、自動車の安全対策、環境やエネルギー問題といった次世代に与える影響を総合的に見られるようになったと感じている。母親、技術者、そして自動車ジャーナリストというハイブリッドな目線を活かしたリポートを展開する。 |
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