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Ecology on Wheels 〜クルマにまつわる環境学〜
vol.6
燃料電池車の試乗会、はじめました!

新聞やテレビで、しばしば耳にするようになった燃料電池車という言葉。でも実際のクルマを見た人は少ないし、普通の人が触れる機会はさらに少ない。そんな燃料電池車について、見て、聞いて、試乗できる見学会があるらしい。果たして、一台ウン億円の乗り心地はいかに?

そのメールは、突然やってきた※1)。「★:。:*:FCV試乗会はじめました :*:。:★」と、楽しそうなタイトルが踊っている。一瞬、イタズラかと思ったけれど、よく見たら“FCV”と書いてある。それって話題のエコカー、燃料電池車(Fuel Cell Vechicle)の略だよね?驚いて続きを読むと、水素エネルギーの実証テストを行なうJHFCが、一般の人のために開催している水素ステーションの見学会にFCVの同乗走行を盛り込むという。つまり、最新技術が山盛りのFCVを誰でも体験できるってわけ。早速、申し込んだところ、第1回目に参加することができた。

 さて当日は、JHFCパークのある横浜市・大黒町はあいにくの雨模様だったが、大勢の参加者が集まっていた。まず2階に上がってビデオを使った座学篇。次に1階のショールームで、FCVが走る仕組みや燃料電池とは何かを説明をしてもらう。実際のFCVや模型※2)を見ながら話を聞くと、化学が苦手な人でもずいぶん分かりやすいと思う。燃料電池とは、水素と酸素を化学反応させて水ができるときに、発生する電気を取り出す装置ってことらしい。普通に考える燃料−−ガソリンや石油−−とは関係ないし、電池のように電気を貯めるものではないので、燃料電池って名前からどんなものか想像しにくいのが辛いところ。「水素発電装置」なんて名前だったら、少しは分かりやすいのに、ね。

 次に、敷地内にある水素ステーションに移動する。ここでは精製されたガソリンから、水素を作っている※3)。供給装置の先にあるノズルをレセプターに差し込むと、バルブを開けて水素を入れることができる。給水素(?)の仕方はガソリンと似ているが、ちょっと違うのは静電気を逃がすアースがクルマと人間が触る部分の両方に付いていること。水素の場合、空気中の濃度が低くても静電気で引火する可能性がある※4)ためだ。でも安全に扱うための工夫を説明してもらってちょっと安心した。慣れているガソリンだって簡単に火が着く性質を持つのだから、要は扱う側の心がけが肝心なのだ。

 他にも面白いところはいっぱいあるんだけど、それは皆さんが参加してのお楽しみにして、いよいよ出光がホンダからリース※5)している「FCX」※6)への試乗だ。アイドリング音の代わりに、空気中の酸素を送るブロアーの音がして、アクセルを踏むとシュイーンと軽い音をさせながらグンと加速する。短い距離の試乗ではそれ以上はわからなかったが、出だしの加速感がガソリンエンジン車とは違う。回生ブレーキで集めた電気をキャパシターに貯めておいて、加速時にアシストしているからだ※7)。ドライバーの方の話では、スイッチを入れて10〜15秒で走り出すことができ、約10分で完全に温まるそうだ。
 この日は技術者が多かったが、何度も乗せてもらって子供みたいにはしゃいでいる人もいたし、化学の知識がない人にも分かりやすく説明してくれる。今後JHFCでは、11月25日までの毎週木曜日に試乗会を行なう予定だから、気軽に申し込んで1台ウン億円の乗り心地を体験してみて!

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※1「突然」といっても、もちろん心当たりがあって、この案内は以前にJHFCのイベントに申し込んだことのある人に送られている。筆者の場合、今年の春、JHFCが開催したセミナーに出席していた。

※2ショールーム内には、この日はトヨタFCVと日産の燃料電池車のカットモデルが展示されていた。まだ試験的な段階の技術なので、並べて見ると自動車メーカーによる違いがよくわかる。例えば、トヨタは燃料電池スタックをボンネットの中に収め、ニッケル−水素電池と水素を後ろに積む一方、日産は床下に燃料電池スタック、後席後ろにコンパクトなリチウムイオン・バッテリーを搭載する。

※3JHCFでは、水素供給システムについても実証試験をしており、関東エリアに10ヵ所ある水素ステーションはすべて異なる水素の製法や供給方法がとられている。大黒ステーションでは、触媒下で純水とガソリンを800〜850℃にて反応させて、水素を生成している。反応によって得られる水素の純度は72%程度だが、4種の吸着材を通すことでCO、CO2、メタンといった不純物を取り除いて、最終的には99.99%以上の高純度の水素を供給できる。もちろん吸着材は再利用が可能。大黒では使っていないが、燃料電池の特性上、原料の成分によっては、さらに脱硫して、硫黄濃度を1ppm以下に抑えなければならない。

※4水素の爆発限界幅は4〜75%。プロパンが2.2〜9.5%ということを考えると、決して低いというわけではない。どちらかというと、爆発限界幅が広いのが問題で、酸素と交じりあうことに関しては、細心の注意を払って管理する必要がある。小学校で行なった金属と酸を試験管に入れて、蓋をして発生した水素に火をつける実験は、爆発限界の幅広さを利用して、水素の存在を知るものだ。

※5FCVには、まだまだ部品が高価で生産コストがかかっているため、価格にすると一億円以上といわれる。そのため自動車メーカー以外の企業で使われているFCVは、リースの形式で貸し出されている。ちなみに、リース料は月に100万円。

※6試乗したのは、「FCX」と名付けられたホンダの燃料電池車。全長×全幅×全高=4165×1760×1645mmのボディに、最高出力82ps、最大トルク27.8mkgを生じるモーターを搭載する。燃料電池スタックはカナダ・バラード製、キャパシターはホンダ製となる。すでにアメリカでは後継車が発表されており、来年には日本でもリリースされる予定。

※7ほとんどのFCVは、効率を上げるために回生ブレーキによって電気の形でエネルギーを回収している。その電気を貯める方式が、大きくふたつに分かれる。乗用車に多いのが、電気を電池に貯める方式だ。一方、ホンダの他、トラックなどの大型車は、コンデンサーに電気を物理的に閉じ込めるキャパシターを採用している。両者の主な違いは電気容量で、一般的に同じ重さの装置ならば電池の方が沢山の電気を貯めることができる。しかしいざ電気を取り出そうとしたとき、化学的に電気を保存した電池より、ただ単に電子を閉じ込めておくキャパシターの方が瞬間的に放電できる。また電池は繰り返し使用によって劣化するが、キャパシターの電圧は充放電によって影響をうけない。

 ↓JHFCパークの案内、試乗申し込みはこちら
 http://www.jhfc.jp/park/index.html


川端 由美 (カワバタ ユミ)

1971年生まれ。大学院でセルロースや炭素などの天然高分子を専攻(材料工学修士)。エンジニアとして就職するも、子供のころからのクルマ好きが高じて自動車雑誌の編集部に転職。エンジニア時代に電気自動車用の部品を設計した経験を買われ、次世代自動車の企画を担当する。3年前に長男を出産してからは、自動車の安全対策、環境やエネルギー問題といった次世代に与える影響を総合的に見られるようになったと感じている。母親、技術者、そして自動車ジャーナリストというハイブリッドな目線を活かしたリポートを展開する。


 

 

 











 


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