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Ecology on Wheels 〜クルマにまつわる環境学〜
vol.7
働くくるまのモーターショー

11月3日から5日間にわたって、「働くくるまと福祉車両」をテーマに掲げて開催された第38回東京モーターショー。その名の通り、単なる商売の道具だった“商用車”から、人間のパートナーとして“働くくるま”に変わってきているのだろうか。

 モーターショーっていうと、スタイルのいいお姉さんがピカピカのスポーツカーの前でポーズをとる図を想像しちゃうけど、今回紹介するモーターショーはちょっと違う。みんながよく知っている乗用車のショーは2年に1回だけど、それと交互にトラックや重機などの商用車のイベントが開催されている。以前にこのコラムで紹介した燃料電池の都バスも、一昨年の商用車ショーでお披露目されたものだから、結構、注目の新技術の発表の場になってるってわけ。
 そして前回までは、「第36回東京モーターショー−商用車−」とお堅い名称だったのが、今年は「働くくるまと福祉車両」と柔らかいテーマになった。あわせて中身も変わり、バスやトラック、重機といった商用車らしいメンツに加えて、多人数乗りの乗用車が増え、移動式カフェやクルマ椅子のまま乗れるスポーツカーといった身近な感じがするショーモデルが登場するという。もちろん、企業の環境や社会貢献への意識の高まりとともに、エコ技術を詰め込んだ部品や商用車への注目度は俄然上がってきているから、環境面からも期待できそうだ。
 会場は、おなじみの千葉県・幕張にある国際展示場、幕張メッセ。ここからは、くどくど説明するよりも、写真を見ながらレビューしていこう。




“車載用エコマネージャー”と呼ばれるエコ運転診断装置。最近の車であれば、この装置をコネクターにつなぐことで簡単に燃費やエンジン回転数などの情報を取ることができる。それらのデーターは携帯通信を使ってセンターに集められた後、「空吹かし」「アイドリングストップ」などの挙動が解析される。結果はインターネットでPCや携帯電話に送られてくるので、自分の運転の癖を客観的に見ることができる。運転を監視されることで省エネ効果が生まれ、2003年に北海道で行なわれたモニター試験の結果を全国規模に換算すると、杉木立1567万本が年間に吸収するCO2と同じ量の削減が期待できるという。
(リンク)
独立行政法人 環境再生保全機構(http://www.erca.go.jp/


いすゞ自動車からは、写真のエルフDME(ジメチルエーテル)車の他、エルフCNG-MPI(圧縮天然ガス)車、エルフHEV(ハイブリッド)車のエコトラック3兄弟(?)が登場。DMEはディーゼルとほぼ同じくらい着火しやすい上に、汚水などの廃棄物を処理する過程、いわゆるバイオマスで生産でき、かつ黒煙を全く排出しないので、将来の環境エンジンとして期待されている。また特筆に値するのは、「みまもりくんオンラインサービス」。パケット通信を使ってリアルタイムに車両データを把握できるというのは、上述のエコマネージャーと似ているだが、メーカー主導でオプションとして簡単に選択できる方式は珍しい。なかでも省燃費リポートは環境保全のために有用で、車両ごとに燃料代、燃費などのコストに加え、CO2、NOx、PM排出量といった環境データを採取できる。また乗務員ごとにアクセル/ブレーキ操作を記録しているので、省燃費運転のアドバイスを受けられる。
(リンク)
いすゞ自動車株式会社(http://www.isuzu.co.jp/

トラックの床板には、「アピトン」という熱帯雨林産の木材が使われているのをご存知だろうか?越井木材工業株式会社では、インドネシアをはじめ、東南アジアに自生するアピトンの天然林を伐採する代わりに、成長の早い「アカシア」をマレーシアで植林して使うことを提案している。アカシアのセリングポイントは、10〜15年で伐採可能な大きさに成長し、強度はアピトンと同等で、7〜8割程度に軽量化できるというもの。4tトラックに敷き詰めた場合では、50kgも軽くなる。軽量化による省燃費でCO2削減と同時に、植林で炭素を固定化もできる。
(リンク)
越井木材工業株式会社(http://www.koshii.co.jp/


マツダからは、停止時のアイドリングストップ機構とカード式キーレスエントリーが組み合わされたシステムを持つ配送車が提案されていた。エンジンをかける動作は始業時に一度行なうだけで、配達員が運転席を離れる時には自動でアイドリングストップと始動をしてくれる優れもの。具体的には、停止時にはシフトレバーを「P」の位置に入れるかハンドブレーキをかけるとエンジンを停止し、乗り込んでブレーキペダルを踏むと今度はエンジンがかかる仕組みだ。運送会社によってはドライバーに必ずキーを携帯させるなどして、配達時のアイドリングストップを義務付けているが、このシステムならば運転手はカードキーさえ持っていれば、特に意識しなくても無駄なアイドリングは避けられることになる。
(リンク)
マツダ株式会社(http://www.mazda.co.jp/




 「働くくるま」のショーを見て感心したのは、生活の役に立つために働く車や、厳しいコスト削減に揉まれている商用車には、シビアな要求をクリアした技術が満載だってことだ。エコ技術に的を絞ってみると、例えば、環境を保つことは大切だけど、同時に企業にとっては利益を追求することも重要だから、いくらいいエコ技術でも、業務の効率が下がったり、あまりにコストが上がるものは普及しないだろう。それにいくら排気ガスがきれいでも、信頼性が高くないと仕事には使えない。商用車の世界で磨かれたエコ技術が評価されて、もっと沢山のクルマに使われるようになれば、お手頃価格になってもっともっと多くのエコカーが現れるかもしれない。
 まあ、そう巧くいくかはわからないけれど、ただひとつハッキリ言えるのは、今では自動車は単なる道具から暮らしに欠かせないパートナーになっているということだ。だからこそ、クルマにとって、人や環境にフレンドリーなことが重要になってきている。街でトラックやバスを見かける度に、無骨な彼らの内に秘められた“優しさ”を思い出してくれたら、パートナーとしてのクルマのあり方が見えてくるんじゃないかと思う。

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川端 由美 (カワバタ ユミ)

1971年生まれ。大学院でセルロースや炭素などの天然高分子を専攻(材料工学修士)。エンジニアとして就職するも、子供のころからのクルマ好きが高じて自動車雑誌の編集部に転職。エンジニア時代に電気自動車用の部品を設計した経験を買われ、次世代自動車の企画を担当する。3年前に長男を出産してからは、自動車の安全対策、環境やエネルギー問題といった次世代に与える影響を総合的に見られるようになったと感じている。母親、技術者、そして自動車ジャーナリストというハイブリッドな目線を活かしたリポートを展開する。


 


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