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Ecology on Wheels 〜クルマにまつわる環境学〜
vol.9
デトロイト・モーターショー“環境”速報

「How to エコドライブ」の続編となるはずだったが、急きょ、北米の国際自動車ショー、通称“デトロイト・ショー”の速報を割り込ませようと思う。北米で突如、環境技術が注目されることになった背景にあるものとは?

 ちょっと前に東京モーターショーについてリポートしたが、“モーターショー”と名の付く国際イベントは一年を通して世界各地で開かれている。今回訪れた北米のデトロイト・ショーはその先陣を切る催しだ。GM、フォード、ダイムラークライスラーといったビッグ3の本拠地で開かれるだけあって、発表されるショーカーを通して北米市場を見据えることができる上に、北米と密接な関係を持つ日本車メーカーの動向を探るにもうってつけの場だ。

 目玉はなんといってもピカピカの新型車だが、同時に「プレス・カンファレンス」と呼ばれるスピーチにもメディアの注目が集まる。たいていはCEOと呼ばれる企業のトップが、2004年にいかにビジネスで成功を収めたか、2005年はどんな方向に向けて進んでいくのかを世界中のメディアの前で華々しく発表することになっている。いままで北米では、パワフルな新型エンジンやデザインに注目が集まることが多く、環境に関しては日本や欧州ほど触れられることはなかったと言っていい。

 でも2005年のデトロイトは様子が違った。世界最大の自動車メーカーであるGMのCEO、リック・ワゴナーのスピーチを皮切りに、世界で初めて自動車の量産に成功したヘンリー・フォードの孫にあたる現チェアマン、ビル・フォードといった北米自動車界の若きエースたちが、熱く「環境」を語っていた。

 かねてから「2010年に燃料電池車を100万台作るメーカーになる」と公言していたGMは、燃料電池車“シークアル”を発表した。加えて、今まで「燃料電池までのつなぎ」と位置づけていたハイブリッド技術への姿勢を変えて、「グラファイト」という名のハイブリッド車を登場させた。今後20種類のハイブリッド市販車を展開する予定だ。

 一方フォードは、すでに販売されているエスケープ・ハイブリッドを皮切りに、ハイブリッド技術を4モデルに展開、燃料電池車の開発も行なっていくという。彼はデトロイト郊外にあるルージュ工場を20億ドルかけて環境工場に生まれ変わらせると宣言している。

 トヨタの副社長、齋藤明彦さんによれば、「ガソリンエンジンに限らず、ディーゼル車でも燃料電池車でも、ハイブリッド・システムを併用すれば格段に効率がよくなります。ハイブリッドは電子デバイスのひとつとして発展すると考えています」という。同社のプリウスは北米で発売されると間もなく3ヶ月分のバックオーダーを抱えていたが、今では納車まで半年待たねばならないそうだ。

 驚いたのは、今まで環境技術への関心が薄いと思われていたスポーツカーブランドも、環境技術に触れていることだ。スポーツカーの代名詞であるポルシェのCEOヴィーデキング博士も、2005年の中頃にはハイブリッドに関する何らかの発表を行なうと発言している。

 ユーザーの目線に立てば、中東の情勢不安の影響で北米ではガソリン価格が数年前の2倍に高騰し、効率のいいハイブリッド技術がにわかに注目されている懐事情がある。加えて、社会貢献への意識が高い知的階級に受け入れられたプリウスの成功を、指をくわえて見ているわけにはいかないという面もある。

 さまざまな思惑があるにせよ、北米の基幹産業のひとつである自動車業界で俄然環境問題が注目され始めたのは嬉しいかぎり。なんといっても私が「環境に関する記事を書くので資料をください」とお願いすると、多くの人が「That's amazing!いい記事書いてね」と環境専用の資料を渡してくれたのだから。新車のカタログと並んで環境資料が用意されているなんて、本当にamazingでした。

 

 

 

デトロイトショーとは

通称デトロイト・ショーの正式名は、North American International Auto Show(NAIAS:北米国際自動車ショー)。1907年、北米の自動車産業の本拠地であるデトロイトのビアガーデンで17の自動車メーカーが33台のショーカーを展示した「デトロイト・オートショー」がその始まりだ。1957年になると、GM、フォード、クライスラーのビッグ3に、ボルボ、イセッタ、メルセデスベンツ、ジャガー、ポルシェが加わり規模を拡大。1989年には、国際自動車ショーの位置付けになることにあわせて、名称が現在のNAIASとなる。現在、ジュネーブ、パリ、フランクフルト、東京と並んで、世界中の主な自動車メーカーが参加して、ワールド・プレミアム(新車発表)の場になっている。


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川端 由美 (カワバタ ユミ)

1971年生まれ。大学院でセルロースや炭素などの天然高分子を専攻(材料工学修士)。エンジニアとして就職するも、子供のころからのクルマ好きが高じて自動車雑誌の編集部に転職。エンジニア時代に電気自動車用の部品を設計した経験を買われ、次世代自動車の企画を担当する。3年前に長男を出産してからは、自動車の安全対策、環境やエネルギー問題といった次世代に与える影響を総合的に見られるようになったと感じている。母親、技術者、そして自動車ジャーナリストというハイブリッドな目線を活かしたリポートを展開する。


 

 

 

GMの燃料電池車、シークアル。スペース効率に優れる燃料電池車の特徴を活かして、薄くてフラットなシャシーを実現し、上にボディを載せるだけの構造に仕立てたことで、着せ替えが可能になった。


すでに発売されているフォード・エスケープ・ハイブリッド。北米でのデリバリーは、今年の2月から始まる。2006年までに4モデルの展開をする予定。


最高速度を競うソルト・レイクのレースで活躍したトヨタのハイブリッド車、プリウス。環境にいいインテリジェンスなクルマというだけでなく、低速トルクなどの性能面がアピールされている。


ディーゼル大国であるヨーロッパからは、ディーゼル・モーターのハイブリッドが登場。V8ディーゼルエンジンを搭載するメルセデス・ベンツSクラスは、モーターの助けを借りることによってディーゼルの特徴である低速トルクにさらに磨きをかけている。




 


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