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Ecology on Wheels 〜クルマにまつわる環境学〜
vol.11
トヨタの最新ハイブリッド車、ハリアー試乗記

トヨタ・プリウスに続いて、北米でのハイブリッド車人気を確立すべく登場したレクサスRX400h(日本名ハリアー・ハイブリッド)が日本でも発売された。今までのハイブリッド車のような、メーカーの広告塔ではなく、販売戦略上でも重要なカギになるハリアーの最上級モデルとしての登場だ。自動車社会における「環境」の位置付けの変化の兆しと言っていいかもしれない。早速、試乗してその実力を確かめてみた。

 ゴシップ好きのアメリカの知人と世間話をしていたら、トヨタ・プリウスが「クールだ」と褒めちぎっていた。日本では優等生イメージのプリウスだが、彼女いわく、ゴシップ紙ではレオナルド・デカプリオやキャメロン・ディアスといったハリウッドのセレブたちが、環境キャンペーンや寄付のためのパーティにこぞってプリウスで乗り付けたことが話題になっていたという。それで、ハイブリッドカー=クールな乗り物というイメージが作り出されたわけだ。セールス面でも好調で、2003年の欧・米のカー・オブ・ザ・イヤーをダブル受賞したプリウスは、イチロー並みのヒットを飛ばしている。続いてトヨタの高級車ブランド「レクサス」から発表されたSUV注1)「RX400h」にも注文が殺到したのも当然の成り行きだ。
 そんな話題のモデルが、日本では「ハリアー・ハイブリッド」の名で発売されたので、早速、試乗してみることにした。
 アメリカではもう定番商品となったSUVだが、大きなサイズと大排気量のため、
日本では少々持て余すのではと心配していた。しかし実際に乗ってみると、運転席からの見晴らしが利くし、最新の車両安定システム「VDIM」注2)のおかげで急ハンドルを切っても安定している。プリウスと同じように前輪をモーターで駆動することに加えて、必要に応じて後輪を動かすモーターがあり、効率よく前輪駆動と4輪駆動を使い分けており注3)、モーターの得意分野である低速走行時はもちろん、高速道路を走ってもガソリンエンジン車より力強く感じる注4)。

 信号待ちでは、ハイブリッドシステムが働いてアイドリングストップをする。しかし高級車らしく防振や遮音に優れるので、エンジン再始動時の「ブルンッ」という振動やエンジン音が室内に伝わらず、注意して聞かないと気づかない。ひとつだけ残念なのは、エンジン音がボーっとガサツな音を立てること。肝心の燃費は、都心と高速を組み合わせたテストで9〜10km/リットルと、性能の割には悪くない成績だった注5)。

 でもちょっと待って! プリウスでは、渋滞の中を走っていても15km/リッター程度だし、普通に走っていれば燃費計は20km/リッター付近を指している。ハイブリッドでなくても小型車のヴィッツなら、10〜15km/リッターくらい走る。どうしてトヨタは、重くて、燃費の悪いハリアーにハイブリッドシステムを搭載したのだろうか。

「ハイブリッドシステムを搭載することで、環境に悪い、走りがいまひとつというSUVに対する嫌悪感を払拭したかった」と語るのは、チーフエンジニアの岡根幸宏さん。アメリカではベビーブーマーたちがSUVの流行を作っていて、そのムーブメントは抑えることができないところまで成長している。ならば、モーターの助けで力強い走りをアピールしておけば、自ずとSUVの中でも環境性能を高めたハイブリッド車を選ぶ人が増えるという考えだ。

 プリウスに続いて、ハリアー・ハイブリッドまでも人気を得たことで、今までハイブリッド車は「つなぎの技術」と横目で見ていた欧米のメーカーもハイブリッド車開発に動き始めた。さらにトヨタは、ハリアー・ハイブリッドの発売の直後にN.Y.ショーでも後輪駆動の高級車「GS」のハイブリッドを発表している。
 冒頭の知人は、キャメロン・ディアスが、「我が家に未来が来たようだわ」とプリウスのことをコメントしたと教えてくれた。まだ割高で、モデル数も限られているハイブリッド車は、多くの人にとって未だ未来的な存在だ。しかし、ハリアー・ハイブリッドの自然な感じは、ハイブリッド車が一歩現実に近づいたということなのかもしれない。

 

つづく

注1)SUV:スポーツ・ユーティリティ・ビークルの略で、もともとはトラックのシャシーに豪華な乗用車の装備を架装したものだった。初代ハリアーが専用設計のモデルを出して北米で大ヒットさせて、「背の高い乗用車」という独自の市場を築いた。

注2)VDIM:VSC(横滑り防止)、TRC(すべりやすい路面を感知して出力を制御する)、EBD付きABS(制動時に車輪のロックを防ぐABSと適正な動力を分配するEBD)といった従来のハイテク車両制御システムが車両のすべりや異常を感知してから制御を開始するのに対して、VDIMではアクセル、ステアリング、ブレーキといった操作系にセンサーを張り巡らせ、より緻密に車両の安定性を制御する。電動パワー・ステアリングでないとVDIMにはできないことから、搭載例は少ない。

注3)E-Four:
基本的には前輪駆動で、オンデマンドで後輪をモーターで動かす4輪駆動システム。すでにエスティマ・ハイブリッドに採用された実績がある。

注4)内燃機関(エンジン)とモーターの効率の良いところ選んで動かすのが、ハイブリッドシステムと言っていい。トヨタのハイブリッドシステムの場合、ガソリンエンジンの効率が特に悪い発進時にはモーターだけを使ったり、トルクの乏しい低速走行時にはモーターの力を発揮させることで、力強い走りを実現している。

注5)高効率を謳うハイブリッドシステム「THS2」にもまだ改善点は残されている。従来指摘されていたのは、高速走行時のモーターの力不足とエネルギー損失の改善だ。力不足に関しては、リダクションギアを導入することで解決している。具体的には、歯数の少ない小さなギアから歯数の多い大きなギアへ動力を伝えることにとって、減速すると同時にトルクを増幅させている。後者のエネルギー損失とは、遊星ギアを使った動力分割機構によって、エンジンで作り出した動力の70%をタイアに30%を発電機に常に分配して伝えているため、場合によっては非効率になる可能性もあることだ。


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川端 由美 (カワバタ ユミ)

1971年生まれ。大学院でセルロースや炭素などの天然高分子を専攻(材料工学修士)。エンジニアとして就職するも、子供のころからのクルマ好きが高じて自動車雑誌の編集部に転職。エンジニア時代に電気自動車用の部品を設計した経験を買われ、次世代自動車の企画を担当する。3年前に長男を出産してからは、自動車の安全対策、環境やエネルギー問題といった次世代に与える影響を総合的に見られるようになったと感じている。母親、技術者、そして自動車ジャーナリストというハイブリッドな目線を活かしたリポートを展開する。


 

 

 

photo ©黒須一彦


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