| Ecology on Wheels 〜クルマにまつわる環境学〜
vol.15
ボルボが主催する 子供たちのための環境教育イベント

ボルボの故郷、スウェーデン・イエテボリで開催された環境教育のプログラムに、初めて日本の子供たちが選ばれて参加しました。
“Bicycle〜♪”
クイーンの名曲にのせて、少年たちがロンドンの街に忘れられていた自転車をリサイクルする映像が流れている。まだ幼い面差しの子供たちが、水と緑の惑星を背景に、自分たちの生活を支える海を守ることの大切さを訴えている−−スウェーデン最大の自動車メーカー「ボルボ」が、UNEP(United Nations Environment Program=国連環境計画)とのパートナーシップの下、10〜16歳の子供たちを対象に行なっている環境教育プログラム「ボルボ・アドベンチャー」のワンシーンだ。
インターネットを通じて、世界42カ国300以上のプロジェクトの応募があった中から、ボルボの故郷であるイエテボリで開催される最終選考会に招待されるのはたった10チーム。選考にあたっては、プロジェクトの内容だけではなく、問題の認識、解決へのアプローチ、広報力といった総合的なチーム力が問われる。
そう書くと、ちょっと堅苦しそうだけれど、その内容はいたってユニーク。マジメなプレゼンテーションの合い間に、遊園地や博物館で楽しい時間を過ごしたり、ホスト役を務める地元スウェーデンの子供たちの家や学校におじゃましたり、発表が終わってほっとしたあとは森に出かけてスウェーデンの自然を満喫したり、と楽しいアクティビティが織り交ぜられている。
1週間近いプログラムを通じて、日本、トルコ、カナダ、インド、ドイツ、ブラジル、メキシコ、イギリス、ウガンダ、ギリシャと、様々な国から集まった子供たちが言葉の壁を越えて、それぞれの地域が抱える問題や、お互いの違う点を理解しあっていく姿は、見ていてとても面白い。緊張気味の子供たちが最初に取り組んだワークショップでは、カラフルなペン、紙や布、ビンや置物といった雑貨を使って、自分たちの環境活動の内容を紹介するもの。そうした作業を通して、知っている英単語を並べたり、自分たちの言葉を相手に教えてカタコトの会話を成り立たせてしまう子がいたり、と思い思いの方法でコミュニケーションを広げていく。
もちろん、プレゼンテーションも見ごたえあり。パワーポイントを駆使するインドの生徒、政治家の役割までを論じるギリシャの子供たち、と大人顔負けなものもあれば、音楽にあわせて踊りながら発表するブラジル、蛍のいる水系を守る様子を劇仕立てで伝える日本と、お国柄が表れているのも楽しい。
最優秀プログラムに選ばれたのは、ジュースの紙パックを回収・リサイクルして環境問題を改善し、それで机を作って教育環境の向上まで達成したトルコの少年たちだった。優勝賞金は、なんと! 1万ドル(約120万円)。
ボルボが環境教育に取り組む理由
でも一見すると、クルマと関係ないイベントを自動車メーカーのボルボが開催するのはなぜだろう。
「自動車メーカーとしては、当然、持続可能なモビリティへのアプローチをしています。そうした環境負荷が小さいクルマを作るのはもちろん重要ですが、持続可能な社会を作ることも大切だと考えています」とは、ボルボカーコーポレーションで環境広報を務めるマリーン・ペルソンさん。
社会貢献の思想が発達したスウェーデンでは、将来を担う子供たちが身近な環境問題を認識したり、環境について学ぶ手助けをするのは、責任ある企業として当然のこと。このほかにも、ボルボは、環境や持続可能性に関する研究や技術に授与する「ボルボ環境賞」を設けたり、NGOとパートナーシップを結んだりしているそうだ。
「子供たちとは、“互いに学びあう”関係です。安全も環境もボルボの創業当時からの企業理念ですが、そうした取り組みをすることだけでなく、社会が知識を共有することが重要なのです」と、ペルソンさん。
表彰式にはボルボの社長も駆けつけたが、少しも権威的ではなかった。あくまで子供たちが環境について学ぶ手助けを大人がして、大人も子供たちによって気づかされるといった、お互いが経験を重ねる場として運営されている。
「私たちにとって理想のクルマとは、乗る人も、まわりの人も心地いいものです。企業でも、勤めている人だけでなく、関係している人々すべてが心地よいことが大切です。そうした心地よさは、誰もがひとしく享受できるはずのものなのです」と、ペルソンさん。
スウェーデンには、たとえ私有地でも誰もが森の中に自由に入って歩き回ることができるという法律がある。安全も、環境も、自然と同じように誰もが享受できるものであり、そのための努力は惜しまない、というのがこの国の考え方のようだ。
http://www.volvoadventure.org/

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川端 由美 (カワバタ ユミ)
1971年生まれ。大学院でセルロースや炭素などの天然高分子を専攻(材料工学修士)。エンジニアとして就職するも、子供のころからのクルマ好きが高じて自動車雑誌の編集部に転職。エンジニア時代に電気自動車用の部品を設計した経験を買われ、次世代自動車の企画を担当する。3年前に長男を出産してからは、自動車の安全対策、環境やエネルギー問題といった次世代に与える影響を総合的に見られるようになったと感じている。母親、技術者、そして自動車ジャーナリストというハイブリッドな目線を活かしたリポートを展開する。 |
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