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白井貴子の『地球と仲良くね!』-02

FUJI ROCK 2005 
フジロック一番のエコロジックブース 
アバロンフィールドに初参戦!


 2005年の夏は、私にとって大変有意義な夏でした。大盛況に幕を閉じた愛・地球博や八丈島の台風の中でのお祭りやら。思い出すだけでもゾットするほどの強烈な暑さの年でしたが、全力で駆け抜けることができました。
 そんな中何といっても思い出深いのは、やっぱりなんといっても夏の野外フェス、日本を代表するビッグイベント、Fuji Rockを経験したことです!しかもライブが終った後も、3日間ずっと会場にいてキャンプしながらFuji Rockを満喫、予期せぬ楽しいことに沢山遭遇しました。
 今回の「地球と仲良くね!」は、めちゃくちゃ暑かった夏も終わり、月夜の美しい季節となりましたが、そんな秋の夜長を満喫しつつ、この夏をしみじみ振り返ってみたいと思います。

 一度はお客さんとしても、勿論出演者としても参加してみたいと思っていたFuji Rock。いつだったかレッチリが出ると知った年には「今年こそ行くぞ!」ってマジで思ったこともありました。でもその年は残念ながら日程が合わず断念。その後、なんと我が家のキャンパーだけが私の相棒、ギターリストの本田君の友達にレンタルされてFuji Rockのキャンプサイトに外泊?したこともあって、帰ってきた時には車に向かって「どうだった?盛り上がった?」なんて聞いたとか聞かなかったとか!?そんな流れもあり、今回初めてのFuji Rock、しかも出演者として参加できたことはとても光栄なHAPPYな出来事でした。
 最近の私は音楽番組にも音楽雑誌にもほとんど出てないから、きっと会場に来た人の中には「この人いったい誰?」なんて思った人も沢山いるんじゃないかと思います。そんな私に出演のチャンスをくれたのは、Fuji Rockのプロデューサーの日高さん。80年代の終わり、私がほとほと日本の音楽界に失望し、もんもんと次の自分を模索するためにたどり着いた国、今から15・6年前のロンドンでお会いしたのが日高さんでした。

 「あの時メキシカン屋でテキーラ飲みながら,なんだか必死で音楽談義したよね。あの時も随分酔っ払ってたなー」なんてひとしきり昔の話に花が咲く中、だんだんと日高さんがアウトドア好きなのがわかるようになりました。そんな日高さんならと、私も最近の環境関係の活動を話すうち、アバロンフィールドというブースの話しになりました。
なんでもそこは自然エネルギーを利用したエコなブースだということで、パティ・スミスがポエムリーディングしてから、注目を浴びているONな場所なんだそうです。
 「ロックの女王様」から「エコの女王様」に進化遊ばしてる!?最近の白井貴子さんには、もってこいのフィールドじゃーないですか!出たいなーなんて思っていた矢先、
 「そこなんて白井君いいんじゃーないの?」と話しはトントンと進み、私は迷わず出演させていただくことに!アバロンでは、毎回オープニングにエコライフトークセッションがあるそうで、そこにも参加させてもらうことになりました。

 そんないきさつで迎えたフジロック。我がRODチームはどういうわけだかアフリカ勢がなんと7人!全員で10名という大所帯となりました。どうしてって「フジロックに出るよ!」と声をかけたら、皆一斉に「僕も行きたい!」「ハイ!私も!」と希望者続出!フジロックはアフリカ人にも大人気。もういいやっ!そーんなに行きたいなら、もう皆で行っちゃおう!ということになったわけです。
 そんななんだか遠足気分で出かけたフジロックでしたが、会場の苗場に着いた時にはあまりの人の多さにかなり仰天しました。苗場はそういえば小学生の頃、家族でスキーに行った以来だったんですが全く違う場所みたいです。もう30年以上も前のことだから当たり前かな?

 道路沿い会場へ向かう皆、リュックを背負い、両手に沢山の荷物を抱えて大行列!来るわ来るわ途切れることなく続く人に「これがあの有名なロックフェスか!」とびっくりでした。普段はきっとこの時期、静かな山の緑がまぶしいほどの場所なんでしょうけど、今は突如現れた街のようです。しかも色とりどりのテントが早くも所狭しと並んでいるんですが、ほとんどがスキー場の斜面とあって「これ寝てる時きっとかなり気持ち悪いんじゃーないのかなー?お酒飲んでると酔いも早そー」なんて思える風景に、かなりのサバイバル感も溢れています!皆、好きなアーティストに会うために頑張って来てるんだ!お客さんって本当にありがたいなー、と思ってしまいました。
 会場はスキー場のゲレンデを大小うまくふり当て、10箇所ほどのブースがあります。アバロンフィールドはメイン会場のグリーンステージを中心しにて徒歩で約40分くらいの、一番西側の最初にありました。広すぎず狭すぎず森が身近に感じられるいい場所です。ステージのテントがインディアンの住処みたいな飾りつけで、自然の大切さが伝わる、ポリシーが感じられる作りがとってもいいです。今年のアバロンはFuji Rock9年目にして初めて廃油を使って発電する機械を導入、照明も音響もほとんどをクリーンエネルギーで賄うことに挑戦したそうです。真っ赤なエンジンから吐き出されている廃油の煙のニオイもかがしてもらいました。たとえて言うなら油のこびりついた年期のある天ぷら屋さんやお好み焼き屋さんに入った時の油のニオイ、とでもいうんでしょうか?でもガソリンのような不愉快なニオイじゃないのがなにより良いですねー。小さな太陽光パネルも数箇所に点々とあり、私にとってはまさにこれから自宅でも色々TRYしてゆきたいと思っている環境でのライブが、とても楽しみになってきました。

 エコトークセッションは、今回のクリーンエネルギーの取り組みを伺って、また紫外線が強ければ強いほど腕輪のビーズが光るアクセサリーの話になったりと色々な話になりましたが、最後に私はいつもの思いをまた一言のたまわっちゃいました。(笑)
 「エコロジックというと、少し気難しいまじめなイメージがあるけど、そんな難しいことではなくて、私はただおいしい水が飲みたい!おいしい空気が吸いたい!おいしい魚が食べたい!それが一番大きいんです。究極のグルメと呼んでいるんですけど、そのために毎日、少しでも地球に元気に、健康に長生きしてもらいたい。だって私達は地球がなければ生きられないんですから。一人、一人のエコな取り組みが結果、大き力になるの。そのために各自、今からできることを少しづつやりましょう!」なんて具合です。

 そんな初日のシンポジウムが終った頃、いい塩梅の緑の斜面にはちょうどお昼時とあって沢山の人が好きな場所を陣取って皆、昼食を食べていました。それにしてもやっぱり凄い人!だんだんと渋谷のハチ公前みたいになってきました。アバロンブースの周りには沢山のオーガニックの屋台があって、日本食だけでなくタイヌードルやカレーといったオリエンタルなメニューも充実、美味しそう!皆、長い行列作って食事を手に入れているんですが、それにしても、ただただ皆、大勢の人が「食って、食って、食いまくる!」というもの凄い盛況の中、これだけの若者がもくもくと食べている様を見たの,私初めてだったから、思わず、
「お母さんも一安心、これだけ食べてくれれば日本の未来も安泰だわ!」とそのバイタリティー溢れる光景に「日本って平和でいいなー」と妙に感激しました。
 そんな賑わいの中始まったアバロン。最初の出演者はボカスカジャン・バンバンバザールというグループ。私は全く知らない人達だったんだけど、どうやらお笑いの人達みたいなんです。
 「なーんだ、私はお笑いの次なんだ!」と思わなかったといえば嘘になりますが、彼らのステージを一目、一聞きしたらそんな不満もすーっかりなくなりました。なんでって、トークがやたらと面白い!テンポが良くて覇気があって、演奏もとってもじょうずなんです。今や日本のお笑いはすごい市民権ですね!一時私は「お笑いやった方がこの国は曲、売れるの早いんじゃないの?」なんてマジに思ったこともあったけど、それにしても凄い勢い!
 まーちょっと言わせていただけば、決して芸術ではないけど、でもステージを見上げる皆の顔は誰もニッコニコ!あれだけの数の人をあんな満面の笑みにさせるなんて、本当凄い!これぞ娯楽!「かしまし娘やドリフターズの落とし子がここにも!」という日本の娯楽DNAを感じさせるステージに、お笑いをやっかむ気持ちも忘れちゃいました。
そんな楽しいステージの次が私の番。
彼らのあまりの盛況ぶりに、はてさて、さっきまでの山のようだったお客さんは、その後もずっとアバロンにいてくれるのかな?と少々、初めて白井貴子さんちょっと心細くなりました。それまでは「どうせ誰も私のことなんて知らないだろうから新人みたいな気持ちで思いっきり楽しんで歌っちゃおう!お客さんが少なくたってへつちゃらだわ!」なんて思っていたさっきまでの強気はどこへやら?
 でもそこは芸暦25年、百選練磨の白井さんです。知らないなら知らないなりに、まずは純粋にアフリカンビートを1から楽しんでもらうことから始めよう!と最初ラティール率いる「アフリカスヌヘルコム」のアフリカ勢に太鼓を叩いてもらいました。
 ドンドンドン!ババババッ!ドンバッ!ドンバッ!総勢7人のジャンベとサバールのビートがアバロンフィールドに響き渡ります。舞台袖、その素晴らしいアフリカンビートでダンスするうちに、さっきまでの不安や緊張がどんどん解けて、グイグイ私も心弾んできました。いい感じ、いい感じ!
時間が来て駆け出したステージ「皆さん!はじめまして!白井貴子です!」と大空に向かって声を放った後は、野となれ山となれ、あっという間にライブ突入していました。
 それにしてもロック好きの人達が集まるフジロックは私が「イエー!」といえば「イエー」って皆、返事してくれるし、ロングトーンで歌えば「ウオッー」って叫んでくれるし、いやー本当にやりがいがあるというか、反応が良くてうれしかったー。1988年ロンドンへ行って、2年後再活動を開始して以来15年。ヒット曲もない中で、でもプロとしては最低限ライブをやるからには盛り上げなくてはならなかった私にとっては、あまりの皆の音楽的温もりに、「私はもしかしたら、これまでかなり過酷な修行の道を歩んでいたのかも?」と思えて急にやけに切なくなっちゃった。あー頑張ってやってたんだわ!なんて心は走馬灯がグルグルと早回り。


 でもそんな厳しい状況の中で歌ってきたからこそ、今回のフジロックでは思わぬ底力、実力もグンとついていたことも実感できました。まるでマラソンランナーが高度の凄い場所でマラソンの練習積んだ後、山に降りて来て走ったら、身軽で気楽な楽しい走りができた!って思えるそんな感じです。

 まーそんな、とにかくありがたくいい感じのコールアンドレスポンスのアバロンフィールド。どんどんお客さんと仲良くなるごとに調子を増して弾みがついてきました。途中からはかなり激しい雨にもなりましたが、止めることも、止まることもなく歌い続けました。皆もフジロックへ来て洗礼のような雨に打たれ、テルテル坊主になりながらも最後までよく参加してくれたと、つくずく来てくれた皆に感謝でした!
 デビューして25年目にしてフジロック初参加の私にとって「青空が大好きな珍しいロック歌手」と言い続けてきた意味、甲斐があった!と思えるアバロンフィールドでのステ−ジは、決して忘れることのない思い出深いものとなりました。
 さー楽しいライブも終ったら、後はお客さんになって、Let's Go Fuji Rock!
休む暇もなく観戦開始です。この続きは次回のお楽しみ!

 









白井貴子

神奈川県出身、シンガーソングライター。1981年デビュー。ハードなパフォーマンスから「ロックの女王」と呼ばれ、女性ポップロックシンガーの先駆者的存在となる。1988年充電のためロンドンへ。ここで、厳しい環境のもと強く生きる「野生のマーガレット」と出会い、新たな人生観を見いだす。以降、環境問題や教育問題へのイベントにも積極的に参加。1996年以降「NHKひるどき日本列島」レギュラーとして活躍、1998年オリジナルレーベル「ROD」設立。現在では、映画、演劇、CM、TVコメンテーター、ナレーション、エッセイなど幅広く活動中。




 



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