| タスマニアとエコロジー Vol.
5
人類と森の発展に必要なもの

南半球にあるタスマニアでは半年前の冬、まとまった雨が降らず場所によって水不足となった。オーストラリア本土のニューサウスウェールズやビクトリア州でも水不足のニュースが流れ、庭の草木への水やりなど水の使用に規制がかけられた。ホバートから車で45分程南へ走った場所、ティンダーボックスも例外ではない。この辺りでは、ほとんどの住宅で1軒1軒が雨水を溜めるタンクを持っていて、生活用水として使用されている(写真1)。雨不足は人間の生活に支障がでるだけでなく、山火事の起こる危険性が増える(写真2)。たばこの飛び火、落雷、キャンプの火などが元となり、乾燥した草を燃やし山があっという間に火だるまに巻かれてしまう(写真3)。乾燥した天候が続くと天気予報で山火事の危険を注意し、道路標識の側にも注意の表示が出る。山火事はオーストラリアで頻繁に起こる為、自分の家にも影響する災害として人々は身近に捉えている(写真4)。
1976年2月7日のブラックチューズデーとして知られる山火事が大規模なものとして歴史に残っている。火はホバートを越え、山々を燃やし、家畜が煙りに巻かれ、火は近隣の町にまで被害が広がった。1400の民家が崩壊、52人の死傷者がホバートで犠牲となっている。火災は農作物、森、インフラなどにダメージを与え5時間で南部タスマニアの2,642.7 ha/kmの土地に110にも及ぶ火災が起きた*1。歴史に残る火事の傷跡、焦げた木を今だに山で見る事ができる(写真上)。
過去の教訓から山火事を事前に防ぐ対策として、乾燥した雑草を燃やす野焼きが行われている。森林火災は計画された野焼きで防止できるからだ。1979年には条例が施行され、州の火災委員会は山火事防止と撲滅に関する助言をするようになった*2。
地方自治体では健康な森を作る為、野焼きの手引きをし森林管理の手段として使っている。野焼きを行う理由と目的によって火の形態を選択することが必要だと紹介している。絶滅の危惧にある植物種の保護として利用するのか、山火事の原因となる蓄積した枯れ草を減らす為なのか、木や草の再生を促進させる為なのか、雑草を削減する為なのか、家畜用の牧草を作る為なのかなど目的を明確にすることによって色々な火の管理があると述べている*3。
野焼きの頻度と火の強さは植物種と植生タイプによって異なる。山火事の原因となる枯れ草を減らしたいなら、木の再生の為に起こす火の頻度より多くする必要があるし、水際の森林や熱帯林などは木の再生に火を必要としないが、長期間火事がないとほとんどの森林は退化する*4。従って、狭い所から野焼きを始めるよう勧めている。多くの植物種に対する火事の影響はまだ良く知られていないからである*5。
タスマニアの多くの植物は火災によって焼かれ再生するという環境で進化してきた。東に位置する乾燥した森林地帯では火事の周期が森の下層植物に影響を与えている。火事が起こる頻度によってある植生種は勢いを増し、再生に火が必要な種もある。また、火事が多すぎると消えてしまう種もある*6。
タスマニアの森には火が必要である。火災は森林を形成する植物の多様性を維持し、森の命と土地を守る。牧草地の生産力を高め、雑草を抑制している。そして人間もまたそれにより恩恵を受ける生き物だ
注:
*1 Wikipedia, the free encyclopedia, 2006: 1976 Tasmanian
Fires, ,
(accessed 7 Dec 2006).
*2 The Department of Premier and Cabinet of Tasmania,
2006: Tasmanian Legislation. Fire Management Act 1979, ,
(accessed 25 Dec 2006).
*3-5 Government of Tasmania, 1999: Tasmanian Bushcare Toolkit,
,
(accessed 10 Dec 2006).
*6 Parks and Wildlife Service Tasmania, 2006: Plants,
Fire, Flora & Fauna, ,
(accessed 10 Dec 2006).
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