80年代、“ロックの女王”として日本のロックシーンの牽引役を務めた白井貴子さん。その当時は、女性であっても男性以上にカッコいいロックを目指し、宣伝用の写真であっても笑顔を見せなかったほど、気を張った人生を送っていたという。最高のロックショーをしたい!そのためには、自分の楽曲が売れなければならない。売れることが明日を作って行く…そう考えていたのだ。
しかし、音楽業界の理想と現実のギャップに悩み、大きな壁に阻まれる。大人のロックミュージシャンとしてどう成長していくべきか、経済的な成長を常に要求されるメジャーシーンのなかで、心身ともにぼろぼろになっていく。そんな時、ロンドンで野生のマーガレットと出会う。厳しい環境の中、凛と咲くその花の姿に、自分の人生観を見直したという。「ネガティブになっていた自分に、その生き生きと咲いている野生のマーガレットは、幼い頃、元気だった自分の姿を思い出させてくれた。同時に、自分が探していた力強さや大きな優しさ、自分の歩むべき姿を示してくれた」と白井さんは語る。
それからの白井さんは、自分だけを見つめるような内向的な考えを改め、自分を取り巻く環境や自然など、外向的な価値観を高めるようになった。事実、マーガレットとの出会い以降、日本各地で開催される環境問題や教育問題の様々なイベントに積極的に参加するようになっている。
そんな白井さんが新たなスタジオを森のなかに建設中だ。完成は2005年の8月予定。10年をかけ、日本中どこを探してもない、エコロジカルなスタジオにしたいという思いを現実のものにしつつある。その名も「マーガレットグランド」。森の中ということもあり、降る雨を水回りに活用し、太陽光などの自然エネルギーも取り入れたスタジオになるという。とにかく、エネルギーからゴミに至るまで、無駄なく活用できる画期的なスタジオ。しかし、このスタジオを造るにあたっては、いろいろと苦悩もあったという。
「スタジオを建設するということは、地球に杭を打つということ。その重大さを再確認しました。森の中ということもあり、ただ杭を打つだけではなく、どうしてもいくつかの樹木も伐採しなければならない…。そんなこともあり、森を買ってから10年の歳月をかけ、森と共存できる建設地を決めました」と白井さん。この10年で、自然と人間とのつき合い方について、いろんな勉強をしたという。
実際、森の中にいると、まるで深海に佇んでいるかのような錯覚に陥る。「森のざわめきは、私を包むように“野生の音”を響かせてくれるんです。風邪に揺れる木や葉っぱの音、動物たちの声…360°あらゆる方向から森の音楽が聞こえてくる感じ。感覚としては、海の中に漂っているみたいな。ものすごく、自然との一体感を感じるんです」と語る白井さん。自然に学び、自然に抱かれ、森が与えてくれる感性によって、新しい音楽が紡ぎ出されるのだろう。EOLはそんな白井さんの活躍を期待したい。
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