「間伐紙と出合って、『森を育てる』ことを思い出しました」と言うのは、株式会社グレエイトの代表取締役を務める伊藤
隆さん。「はんこ屋さん21」というお店の名前の方が、一般には知られているかもしれない。印鑑や名刺をオンデマンドで作成をする店舗を全国に300店以上展開しており、すべての店舗で間伐材を原料にした名刺用紙をラインナップしている。
ご存知の読者も多いかもしれないが、間伐とは混みあった森林の木を抜き伐りすることだ。これを怠ると材木に適した大きさまで木が育たず、生産性のない森になってしまう。間伐紙とは、間伐により伐られた木、すなわち間伐材を原料として作られた紙を指す。
「私の故郷、会津では娘が生まれたら桐を植えろと言われていました。森に投資すると、子供が結婚する頃には回収できる“森の経済”が成り立っていたわけです。昔の人々は、間伐材の利用まで含めて、森は大切な資源の供給源ということを知り、森を育てる意識を持っていたのでしょう」と、伊藤さんは語る。
実は彼自身も、都会で一生懸命に働くうちに『森を育てる』ことを忘れかけていたという。そんなとき、林野庁の担当者と出会って、日本の森では間伐が滞ったために森が荒れる現象が起きていると耳にする。
「林業関係者だった叔父の話を聞いていたので、子供の頃には森の営みをよく知っていました。そして今の仕事には紙が欠かせない。だから、間伐紙を使えば、日本の森を育てる助けになると知って、すぐに何かしたいと思いました」
といっても最初から普通紙と同じわけにはいかなかった。紙質や強度、印刷技術など、いくつかの課題があったからだ。改良を重ねた結果、昨年10月からすべての店舗で間伐紙の名刺の発売を開始した。
普及している普通紙に比べると、若干コストがかかるが、環境問題に興味が薄いお客様にも手にとってもらえるようにとの配慮から、あえて普通紙と同じ価格で販売することにした。プロジェクトを担当している相地浄貴さんは、「普通紙の半数くらいまで売上が伸びています。暖かみのある風合いがいいと、間伐紙を選ぶお客様が増えているそうです」という。今後、封筒など他の製品にも展開する予定だ。
「経団連が間伐材の利用を推奨すると発表したことで、大企業での採用が進むといいですね。そうすれば他も追従して、普及してくると思います。グリーンコンシュマー製品に指定してもらったり、間伐材マークをもっと定着させることも必要です」と言う伊藤さんは、より一層、政治家が積極的に環境問題に関わって、法改正なども含めて環境に優しい社会システムを作るべきだとも考えている。
苗木を植えることと同じように、木を伐ることも本来は『森を育てる』営みだったはずだが、間伐への理解はまだまだこれからだ。日々の暮らしの中で、間伐紙を活用した製品を積極的に選んでいれば、少しずつでも着実に地球温暖化防止に貢献できるのだ。
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