空がグッと近づく爽快感、地上では得られない浮遊感、そして秘密基地のような排他的で独占的な感覚。子どものころ木登りをして感じたあの感覚を、もう一度体感できるのが、木の上の家、ツリーハウスだ。
日本のツリーハウスシーンを牽引し続ける小林さんは、ツリーハウスの現場や講演会、ワークショップなど、国内外を忙しく飛び回りながらツリーハウスの普及活動を続けている。そんな小林さんとツリーハウスの出会いは、12年前にさかのぼる。裏原宿にある小林さんのショップを貫く1本のヒマラヤスギ。「切りたくない」という想いから、木を活かした構造のカフェ&バーに増改築したことが始まりだった。その後、ツリーハウスの世界的第一人者ピーター・ネルソン氏と運命的な出会いを遂げ、小林さんの中でツリーハウスは大きな位置を占めるようになっていったのだ。
「ツリーハウスって、もう一人の自分になれる場所なんだと思う。だから、型通りの“家”である必要はなくて、窓も四角じゃなくて三角でも丸でもいいんだよね」と語る小林さんが手がけるツリーハウスは、どれも伸びやかで個性的だ。なんといっても、ツリーハウスの基本は木。木が今そこに立っているという事実の後ろには、生存競争にうち勝ってきた個の生命力の強さや、何十年何百年と生きてきた時の重みがあると小林さんは言う。だからこそ、基礎となるホストツリーの形や性格を最大限に活かしたツリーハウス造りに力が入る。「実用的なものなら木の上でなくてもいいでしょう? 決して『工務店です』みたいにはなりたくないんだよね」
「世界がひとつの価値、ひとつの正義になっていくような流れを、オレは決していいとは思っていないの。いろんなヤツがいるからいいんだよ。だからこそ、ツリーハウスっていう非現実的でムダなことを一生懸命やっているオレみたいな大人がいる、ということを見せたい」。小林さんは現在にいたるまで、自分という個性を表現するのに適した媒体を求め続けてきた。古着屋、カフェ&バー、ツリーハウス。体現する形は変わっても、「ムダなものこそすばらしい」という直感にも似た感覚はずっと小林さんの中心にある。そんな感覚や想いを「普段自然とまったく接することのないような街の人たちにこそ伝えたい」というのが、小林さんが原宿にこだわり続ける理由だ。小林さんにとってツリーハウスは、“街の人にわかる言語”で想いを伝えるための手段のひとつなのだ。
「想いを伝える手段はツリーハウス以外でもいい」と言う小林さんだが、ツリーハウスへの情熱はまだまだ消えることはなさそうだ。ツリーハウスのメッカであるアメリカ・オレゴン州のほか、世界中には至る所にツリーハウスがあるのだという。小林さんの今後の夢は、そんな、まだ見ぬ世界中のツリーハウスに出会うための旅をすること。来年の今ごろは、世界中を旅して回る小林さんに出会えるかもしれない。熱く夢を語る小林さんを、ヒマラヤスギは今日も静かに見守っている。
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