高層ビルが建ちならぶ新宿副都心。そのビルの高層階にある損保ジャパン環境財団のオフィスでは、杉やヒノキの間伐材でつくられた本棚や椅子が、すがすがしい香りで出迎えてくれる。
損保ジャパン環境財団は、1999年4月、地球環境問題の解決にむけて設立された財団法人。その専務理事を務める北村さんは、92年から損保ジャパン地球環境室長として環境問題と向き合ってきた。金融機関で初めてのISO14001取得やエコファンド「ぶなの森」の開発を主導して、社内の環境活動を牽引し、最近は、講演やシンポジウムで企業の環境取組をはじめとした社会的責任の重要性を発信するなど、幅広く活動している。
企業人として早いうちから地球環境破壊に立ち向かってきた北村さんに現在の世界の動向はどのように映っているのだろう。「個々の活動は活発に行われるようになってきましたが、全体のうねりはそれを上回る力で悪い方向へ進んでいます。でも、悲観的になる必要はありません。相当の覚悟をもって対峙すればまだ間に合いますよ」ときっぱり。
地球環境破壊というと、真っ先に思うのが地球温暖化。自然生態系の変化、農業、漁業への影響など、いろいろな現象が現れているというが、「人類がその影響をもっとも強く感じるのは、自然災害の増加によってではないでしょうか」と北村さんは指摘する。
その証拠に、大規模自然災害に対する支払保険金は1980年代後半から右肩上がりに推移し、1995年には1,700億ドルという数字にまで達した。経済的損失はこの2倍とも3倍とも言われ、もはや温暖化問題が企業の存続そのものにおいても無視することのできない問題になっていることがわかる。事実、環境問題への取組が遅いと思われた金融機関も、温暖化リスクを意識したカーボン・ディスクロジャー・プロジェクト(*1)やSRI(*2)などの取組が始まった。企業が、環境問題を大きなリスクと捉えはじめたことを端的に現しているといえるだろう。
企業を取り巻くリスクには、環境問題のほかに、法的リスク、風評リスク、市場リスクなどさまざまなリスクがある。なかでもコントロールが難しいのは社員の行動リスクだという。「社員の行動は、管理で制御できるものではない。社員が自社に対する誇りや愛情を持つことが、ひいては企業自体を守ることにつながります」。
同じように環境問題解決の鍵を握るのも人間だ。金銭的な援助ももちろん大切だが、北村さんは、複雑で多様な可能性を秘めている“人”にフォーカスをあてた活動を行うことで、環境問題に貢献できるのではないかと考えた。そこで損保ジャパン環境財団の活動の軸を人材育成に据えた。
損保ジャパン環境財団では、「木を植えるより、木を植える人を育てる」というキャッチフレーズのもと、CSO(*3)ラーニング制度に取り組んでいる。学生を対象にNPO・NGOへの長期インターンシップを支援するこの制度は、東京を拠点に20名から始まり、6年目の2005年には、全国4カ所の拠点で83名が活動するようになった。同窓生は250名を超えた。学生はインターン活動を通して、環境問題、NPOの社会的意義、市民社会のあり方を深く考える。彼らの活動と成長を父親のように見守る北村さんは、「これから先、地球は非常に重要な局面を迎えることになります。そのときに、彼らのような高い志と知識をもった人が要所要所にいてくれればと思っているんです」と目を細める。
地球環境をとりまく状況は厳しいように感じるが、北村さんたちは次代を担う若者の可能性に未来を賭けている。「人間は場や機会があればいくらでも力は引き出されるものです。」と取り組みはさらに続く。
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