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eco people file no.17

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風の音、せせらぎの音、夜行性の生き物たちの営みの音。夜中の森は思いのほかにぎやかだ。その中でただ一人、じっと「音」に耳を傾ける人がいる。ネイチャーサウンドアーティストのジョー奥田さんだ。

奥田さんは、自然の音を「神が創った完璧に美しい音=God made sound」と表現し、さまざまなシーンのGod made soundを私たちに届けてくれる。中でも特に魅力を感じるのは、島の自然音だという。「島というのは、それだけで完成された世界です。それに、どの島も、自然と人の関わり方が似ていますね。太陽に手を合わせ、水を拝むというように、自然を神として尊ぶことを本能的に知っている。皆が忘れてしまったことを自然と受け継いでいます」。

島を訪れるとまず、島の神様を祭る神社に挨拶をする。道ですれ違う人にも気軽に声を掛けて挨拶する。「僕は島の外から来た人間です。人の家にお邪魔するような気持ちで島の中に入っていくことで、はじめて、島の自然と自分の関係がスタートするのだと思っています」と言う奥田さんは、滞在中の限られた時間の中で、自然がくれる音だけをもらって作品にする。「絶対にこの音を録る」という気負いはない。

プロのドラマーとして輝かしい舞台を歩いてきた奥田さんが、最初に自然音録音に出会ったのは15年も前のこと。音楽プロデューサーのランディ・ピーターセン氏が手がけた、自然音と音楽が融合する楽曲『アメリカ国立公園シリーズ』に、アドバイザーとして携わったことがきっかけだった。自然音の編集作業をしていると、今まで聞いていた自然の音がまったく違うものとして奥田さんの心をとらえた。それを機にドラマーから一転、「この美しい自然の音を一人でも多くの人に聞いてもらいたい」という想いで、ネイチャーサウンドアーティストとして世界中の自然音を録り続けてきた。

自然界に存在するのは、穏やかで優しい音ばかりではない。雷や嵐、荒れ狂う波の音など、荒っぽくて恐ろしい音もある。しかし、奥田さんはそれらの音を作品の中に入れ込むことはない。ポジティブで、気持ちがよくて、楽しいと感じる音を集めた、エンターテインメントにこだわる。美しい自然の音が危機にあることを知ってほしいからだ。

自然録音を通じて、奥田さんは、自然破壊のスピードの速さを強く感じるという。直接自然に手を加えなくても、飛行機が上空を飛ぶだけで聴覚の鋭い生き物には極度のストレスになり、生態系への影響も少なくないのだそうだ。なかなか歯止めのかからない自然破壊に、奥田さん自身も怒りや憤りを感じることはあるが、「人は怒りのメッセージでは決して変わりません。僕の録る自然音が、“こんなに気持ちのいいもの、美しいものが壊されてしまっていいのかな”と、立ち止まって考えるきっかけになってくれればいい」というのがアーティストジョー奥田のスタンス。

奥田さんの活動の大きなモチベーションの1つになっているのが、現代の人たちへのメッセージであると同時に、「ずっと先の子孫が、“2005年の地球はこんな音がしたんだね”と振り返れるようなメッセージを残すこと」でもあるという。
両者のメッセージに共通するのは、自然の美しさ、心地よさを伝え、その尊さを感じて慈しんでほしいという想い。

そんな奥田さんのメッセージがたっぷり詰まっているのが、最新作品『AMAMI』。導かれるように訪れたという奄美の、豊かな自然音を収録したこのアルバムは、ロケハンでの自然音録音も60時間を超えた。そこから音を選んでストーリーにしていくというスタジオでの編集作業にも、膨大な時間を費やしている。今までの奥田さんの集大成ともいえるだろう。

奥田さんは現在、自然音を発展させ、音楽や映像を盛り込んだ作品づくりも模索しているという。「音に絵が加わると、メッセージとしてとてもパワフルになります。伝えたいものは変わらないので、今まで聴くことのなかった人にも見たり聴いたりしてもらうことができるのならば、表現方法の入り口として絵が加わってもいいと思っています」。

奥田さんの撒いた小さな種は、一般の人々の反響もさることながら、環境問題に力を入れ始めている企業からのCM起用等の形で、確実に実を結び始めている。
活動の幅を広げつつある奥田さんが今後行ってみたいのは、小笠原島、与那国島、バリ島、パラオなど。小笠原の森は、バリ島の海は、どのようなハーモニーを聴かせてくれるのだろう。奥田さんは、どんな形で、どんなGod made soundを、私たちや子孫に届けてくれるのだろう。次の作品が待ち遠しい。



LINK

ジョー奥田さんのホームページ http://www.joeokuda.com/index.html

ジョー奥田(きたむらひっしょう)

1954年生まれ。自然音録音家。
幼少より、ピアノ、ドラム、ギターなどの音楽に携わり、1980年の渡米後はプロドラマーとして数多くのレコーディングに参加する。その後、音楽全般にわたる録音制作を始め、サザンオールスターズのカバーアルバムなどをプロデュースする。アメリカ国立公園シリーズのアドバイザーを勤めたことをきっかけに自然環境音楽に興味を広げ、日本国立公園シリーズ第1弾『Mt.Fuji』、『川へ帰ろう=四万十川』『AMAMI』など、全方位の高感度録音を可能にするバイノーラルマイクを使用して録音した自然音を素材に、新しい音の世界をクリエイトしている。






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