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eco people file no.17

住むこと。その先に見えるもの。
相根昭典さんさんにお話を伺ってきました。

化学物質を排除した、住まう人にも環境にもやさしい住宅が近年注目されてきている。そんな中、従前とは少し違った視点でエコロジカルな建築を手がける、AMBIEX(アンビエックス)代表の相根昭典さんをたずねた。

健康と環境にこだわると、日本の「木」「伝統」「文化」にたどりつく。

相根さんの建てる家は、気持ちがいい。空気が澄んで、やさしく軽やかに感じる。そう感じる大きな理由は、化学物質を徹底的に排除していることと、電磁場が人の体に与える影響を極力抑えていることからだろう。特に、日本では規制もなく軽視されている電場について、相根さんは心を配る。
「いまの住宅は、電気の屋内配線が小屋裏や床下に網目状に張りめぐらされている状態です。その上で生活する私たちの体は絶えず電気を帯びて、ブラウン管のようにホコリを吸い寄せています。私たちの建物では、アースをとったり、日常生活で長居をしない廊下に配線をかためたりして対応しています」。こうした心遣いが細部にまで行き届いていることが、心地よさのヒケツなのだろう。
もちろん躯体もしっかりしている。木組みの伝統工法で木材をたくさん使ってつくられた建物は、耐震性にも優れ、温熱環境もいい。自然の事象をそのまま「受けて、流す」という、日本古来の工法の良さを最大限に活かした結果だ。
しかし、手作業の伝統工法にこだわり、木をたくさん使い、しかも天然の建材のみで、となると、気になるのが住宅のビジュアルと建築費用だ。いくらいいものでも、この部分の訴求力が弱ければなかなか広がってはいかない。
「ナチュラルやモダンなど現代風の住宅も思い通りにつくることができます。ずっと研究してきた天然素材の接着剤とインクも実用化できる段階まで来ました。まずは見た目のかっこ良さで選んでもらい、住んでみたらエコだった、というのが理想です。費用もプレハブメーカーと変わりませんよ」と自信に満ちている。
その自信は、いままで手がけてきた実績から来ているようだ。
もうひとつの住宅の形として相根さんが力を入れているものに、エコビレッジがある。入居希望者が共同で住宅を購入するコーポラティブ方式に、田舎暮らしの要素がミックスされたコミュニティーだ。そこでは、健全な建物に住み、風車や太陽光発電などでエネルギーを自給する。また、ビオトープや菜園もあり、入居者同士の長屋的な交流も生まれる。東京都日野市や町田市鶴川に建設したエコビレッジでは、入居後のいまも非常に良いコミュニティーが維持されているという(詳細はEOLオーガニック「エコロジカルで健康的な住まいとは」>>)。

回る建築のしくみをつくる。人と山のために。

戸建てから集合住宅へと広がる相根さんの想いは、さらに大きな対象へと続いていた。それは、健全な建材の入手に欠かせない場所、山林だ。住宅をつくる人、山で仕事をする人、その両者を結ぶ工場や流通の機能をすべてひとつに集約して、「資源が回る建築」を実現させようというものだ。
何もないところから建物をつくっていく大工は、危険な上に緻密な頭脳を要する仕事だ。しかし、社会保障もなく年収も決して高いとはいえない上、機械化などで仕事も大工の数自体も減っている。いっぽうの山林も荒廃が進んで危機的状況にあり、そこで働く林業従事者も続々と山をおりているのが実情だ。
これらを食い止めるためには、「国産材を使った、伝統工法による住宅建築を増やしていくことだ」と相根さんは言う。3年前から宮城県栗駒山でプロデュースをしている仕組みがそれにあたる。バラバラに点在していたこれらの仕事をまとめてひとつの組織にし、山林の再生と健康住宅の安定供給を両立させる。同時に、建築業界でのオーガニック認証づくりにも取り組み、化学物質管理まで含めたトータルな山おこしをしていこうというものだ。
「組織にすれば、そこで働く人々の保険や年金、ケガの保障もされます。昇給もできます。それに、大工の養成や伝統技術の継承、山林の再生も同時にできるんです。中間マージンや流通コストも大幅に削減できるため、消費者にとっても、安全な住宅をプレハブメーカー並の費用で建てられるというメリットがあります」。この栗駒山の取り組みをビジネスモデルとして成功させ、全国に広めていきたいという。

とき、来たり。だからこそ、本物をしっかりつくっていく。

「エコロジー」や「循環型社会」という言葉が言われるずっと前から健康住宅にこだわってきた相根さんの目に、環境を意識した動きが活発になっているいまの世の中は、どのように映っているのだろう。
「企業もCSRに取り組み、NPOもたくさんできて、たしかにブームのようになっています。でもその中に、どれだけ本物があるかは今はわかりません。消費者の中にも、このままじゃいけない、という潜在意識はあるんですが、それが顕在意識にまで到達していない状態ですね。ポンと背中を押してあげればいい、そんな時代がようやく来たんだと思います」。
技術者としてだけでなく、マーケッターとしても鋭い感性をもつ相根さんには、もうひとつの顔がある。それは、日本有機食品認定連絡協議会の理事という顔だ。建築士がなぜ食品なのか。その答えもやはり建物にあった。有機食品が有機なまま私たちの手もとに届くよう、建物の検証をしているのだそうだ。
「せっかく手間暇かけてつくってきた有機食品も、その流通過程にある工場、倉庫、小売店が有害物質で汚れていると、食品も汚染されてしまうんです。食べ物への付着の力というのはすごいんですよ」。
山林、住宅、そして食、これらを有機的に結びつけている相根さんが目指すのは、スウェーデンのエコビレッジだという。「全人口900万人のうち100万人が暮らしています。中には、エコロジカルなスーパーや病院、銀行機能までも備わっています。いろいろなジャンルの人が住み、そこで仕事もできるような、少し大きなネットワークをつくりたいですね」と、夢を語る相根さん。同時に、続けてこうも言う。「エコロジーという言葉に甘えてはいけないと思うんです。むしろ、現状の社会の仕組みに勝てるくらいのものがあってはじめてエコロジーができる。きびしいですよ」と。
にこやかに、そして静かに語るその目は、一過性のブームが去り、本物が残ったあとの少し先の未来を、しっかりと見据えていた。

LINK

ANBIEX  http://www.ambiex.jp/



プロフィール:相根昭典(さがね あきのり)さん

一級建築士。1954年、京都に生まれる。1990年に株式会社アンビエックスを設立。シックハウスなどが問題になる前から、化学建材を使わない健康住宅づくりや、安全な素材の研究・開発を独自に行ってきた。「健康住宅の先駆者」としてTV、新聞、雑誌などにも数多く登場し、全国で健康住宅セミナーの講師、学会での講演もこなす。「住環境保護対策委員会W.G」「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議」のコアメンバー、日本農林規格登録認定機関の理事を務めている。著書に「健康な住まいを手に入れる本」(共著・コモンズ発行)などがある。

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