エコロジーオンライン 
エコピープル 環境ニュース エコ・コラム
 top >>> eco-People  >>>市瀬慎太郎さん

eco people file no.30

紙と環境のエコバランスを求めて 株式会社市瀬 市瀬慎太郎さん

暮らしのいろいろなシーンでお世話になる紙。この年始を考えただけでも、年賀状、正月用の箸袋、ポチ袋、新しい手帳にカレンダー…。デジタル全盛の時代と言われるなか、日常生活でもビジネスシーンでもまだまだ紙は大量に使われている。これから先もきっと、なくなることはないだろう。
そんな“紙”をとおして地球環境保全に貢献する、株式会社市瀬の市瀬慎太郎さんを訪ねた。

トップランナーへの道

株式会社市瀬の創業は明治41年。以来、洋紙の販売一筋。比較的安定した出版業界への販売を主に続けてきたが、そんな業態にあるとき変化が訪れる。
「1990年代後半になって、それまで好調だった出版神話が崩れてしまったんです。新規開拓を考えたときにたどり着いたのがエコロジーでした。勉強し始めたら、これがおもしろいんですよ。それで環境配慮型の紙を扱ってみることにしたのです」
 さっそく行動に移した。とはいえ、紙の販売会社→印刷会社→広告代理店→企業という通常の販売ルートで攻めるのは時間もかかり、難しい。そこで、企業への直接アプローチをはじめたのだ。
「電話でアポイントをとって環境部を訪ねるというゼロからのスタートでしたが、中でも、企業が環境への取り組みをアピールする『環境報告書』に特化したことで突破口が開けた気がします。積極的に取り組んでいる企業はきちんと話を聞いてくれました。やって正解だ、と確信しましたね」
 勢いに乗り、2003年には同業者の中でいち早くFSC認証()を取得した。同時に、世の中の流れも変わっていった。
FSC認証紙が市場に出始めた2002年、環境報告書に採用している企業は200社中6社。その後少しずつ増えて2005年には半分の100社を超えた。株式会社市瀬は、実にその半分の50社以上にFSC認証紙を納めている。現在は、環境報告書だけでなく社内広報誌など横の展開へと広げているところだという。今でこそ環境を意識する紙業会社も増えてきたが、ひとあし早く取り組んできた市瀬はすっかりエコペーパーのトップランナーになった。

みんなが潤う仕組みをつくる

市瀬さんの発想と行動力は、製品としてのエコロジーだけにとどまらない。これまでに培ってきたノウハウやネットワークを活かして、さまざまな環境配慮型の仕組みもつくり出した。国内の森林整備を促進するための新しいビジネスモデル、『3.9(サンキュー)ペーパー』もそのひとつだ。
「3.9ペーパーは、印刷物をつくりたい企業や団体が製紙工場までの輸送コストを森林所有者の代わりに負担して、日本の間伐材でできた紙をもっと使っていこうという仕組みです。日本の森林は下草刈りや間伐などの手間をかけなければ荒れてしまうのですが、せっかく手入れをしても、間伐した木は放置されたままです。山から運び出す費用をユーザーが負担して、もったいない木を活用していこうということなんです」
間伐材の活用は、森林の保全や木々によるCO2の吸収も大いに期待できるほか、森林関係者の収入確保にもつながっていく。どんなにいい仕組みでも、携わる人みんなが利益を得られなければ、続けていくことはできないと市瀬さんは言う。
「営業では、紙の販売と一緒に森林についての提案もしています。日本の山は、資金不足や人材不足で荒廃して本当に大変な状況なので、森を育てたり木を使ったりする人たちと知り合ううちに、何とかしないと、と思うようになりました。3.9ペーパーのシステムも、根底にあるのは日本の森を健全にしたいという想いです。国内の木材が活発に動いて、持久力が上がって、山に暮らす人たちの生活を次世代につなげていけるようになれば理想的ですよね」
そんな想いに賛同して、3.9ペーパーを採用し始めた企業・団体は十数社。引き合いも増え、今年はさらに増えると市瀬さんはみている。見せかけだけではない中身の伴った仕組みだからこそ、多くの理解と共感を得られるのだろう。

世の中のエコ意識を高める

 困っている人たちと、支援したいと思っている人たちを上手につないでいく市瀬さん。そこには、人柄を現すような細やかな気配りがある。環境についてどうすればいいかわからないという企業には、社内で使用する企画書づくりも手伝う。人と人とのコーディネートもする。
「森林整備事業の支援をしたいという大手企業に地方の森林組合を紹介したところ、社内で森林に対する意識が少しずつ上がってきたといいます。社員の方々が自発的に勉強会を開いたり、森林にも積極的に足を運ぶようになって、地元との温かい交流も生まれているようです。こういう企業が増えていけば日本の森林も大切にされるようになりますよね。それに、回りくどいかもしれませんが、結果的に私たち自身の商品販売や企業価値を上げることにもつながると思っています」
 世の中のマインドが高まることが自らの営業につながる。そうした考え方ができるのも、自分のできることの領域に線を引かず、広い視野でものを見ているからこそではないかと思う。
そんな市瀬さんに、今年の抱負を伺った。
「京都議定書の第一約束期間が始まる1年前ということで、世の中でもますます環境への関心が高まって、FSC認証をはじめいろいろな取り組みや仕組みができていくでしょう。その際、紙を扱う私たちにとって大切なのが、再生紙かバージンパルプか、FSC認証か別の何かかという白と黒だけの世界ではなくて、シーンに合わせたエコ製品やシステムを用意していくという“バランス”だと思っています。そうした提案や手伝いをどんどんしていきたいですね。今年はきっと追い風が吹きますよ(笑)」
 笑顔で熱っぽく語る市瀬さんの、紙を超えた今後の挑戦から目が離せない。

※FSC認証:Forest Stewardship Council(森林管理協議会)による、「適正な森林管理」(Well-Managed)を認証する制度。

 

LINK

株式会社市瀬 http://www.ichise.co.jp/

 



市瀬慎太郎(いちせ しんたろう)さん

1967年2月、宮城県仙台市生まれ。環境に配慮したエコペーパーのコーディネーター。東京電力と共同開発した『尾瀬の木道エコペーパー』をはじめ、企業独自の印刷用紙の開発を行うなど企業の印刷用紙アドバイザー件コーディネーターとして活動。印刷用紙の他、ミニストップで販売している『5円の木づかい箸』のプロジェクトなども手がける。2005年9月『3.9ペーパーシステム』のビジネスモデルの特許を出願(申請中)






















 top >>> eco-People  >>>市瀬慎太郎さん

(C) Ecology Online / All right Reserved.