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10月8日、浜離宮朝日ホールにて、WWFジャパン主催「温暖化の目撃者たち」シンポジウムが開催されました。参加者の年齢層は、開催日が土曜日であったこともあるのか、30〜60歳代まで幅広かいという印象をもちました。また、年齢別では、30歳代は女性の割合が、60歳代は男性の割合が高いようでした。
開会の挨拶では、WWFジャパン事務局長の日野さんから、「地球温暖化による地球の危機的な状況を認識し、何とか手を打つために行動しよう」との開会の意志がつげられ、シンポジウムがスタートしました。初めに、WWFジャパンの鮎川さんより、“WWFジャパンからのメッセージ”として、WWFジャパンとNTTデータ経営研究所、エコロジー・オンラインの共催によって進められている「温DOWN化計画」について説明が行われ、地球の気温上昇は2℃未満に抑え、産業革命以前の気温レベルに戻すことが必要であることが伝えられました。


第1部『日本が感じた温暖化』
NTTデータ経営研究所の溝内さん
太平農場を営む佐々木さん
地域環境ネットワークの三浦さん 虎屋の渡部さん

シンポジウムは3部構成からなり、1部「日本が感じた温暖化」では、まず、NTTデータ経営研究所の溝内さんから「温DOWN化計画」の一環として立ち上げられた“身近で感じた温暖化ストーリー”というブログについての紹介が行われ、環境問題への興味を広げるためにIT技術を活用するなど、興味深い話が行われました。また、その後の“日本が感じた温暖化”では、太平農場を営む佐々木さん、NPO法人地域環境ネットワークの三浦さん、虎屋の渡部さんの3人に、農業や山、食材調達の現場で感じた温暖化の影響についての話を聴くことができました。佐々木さんは、冷害が増えていることに触れて、「温暖化により寒冷化する場所もあるのではないか」との鋭い指摘をされていたことには、科学の現場にいる者として、驚かされました。また、三浦さんからは、樹木が感じる季節感に変化が現れていること、渡部さんからは、和菓子に使用する白小豆の品質が落ちていることなどが報告されました。


国立環境研究所の原沢さんによる科学的な説明によって、温暖化の影響の可能性が報告された。

1部の最後には、専門家である国立環境研究所の原沢さんにより、3人の方の報告に対する科学的な説明が簡単に行われました。また、専門家による最前線の研究成果が紹介され、専門家によっても、ハリケーンや洪水被害、気温上昇、積雪低下などが温暖化の影響によって起こっている可能性が高いことが示されつつあることが報告されました。現在の地球の状況が人為的な温暖化の影響であるか否かについては、来年発行されるIPCCレポートで明らかにされるそうです。



第2部『温暖化の目撃者』
民族衣装を身にまとうネパールのノルブ・シェルパさん。融解がすすむ氷河の写真をまじえて。
祖国の窮状を涙ながらに訴える、フィジー諸島のペニーラ・モーゼさん。

お昼を挟み、午後からは第2部「温暖化の目撃者」と題した、本シンポジウムのメインの発表が行われました。ネパールの氷河湖決壊と温暖化による氷河縮小の事実や、フィジー諸島における海面上昇による海岸線の侵食や水温上昇によるサンゴ白化、水不足、動植物の季節性の変化などが報告されました。両氏ともに、温暖化の状況や経験を語る場がほとんどないこと、先進国がもたらした温暖化の影響を途上国が被っていることを訴えました。フィジー諸島のペニーラ・モーゼさんの「孤島では政府からの援助が遅いため、島民が自主的に、植林や節水を行うなどの取り組みを行っている」との報告には、温暖化に対する危機意識がまだまだ低い日本の実情に、一寸恥ずかしさを覚えました。



北極圏 I.C.C.E プロジェクトの設立者、マリン・ジェニングスさん。
大変陽気だが、温暖化によってイヌイットの暮らしが危機に立たされていることを切実に訴えた。

2部の最後には、特別ゲストとして、北極圏 I.C.C.E プロジェクトの設立者、マリン・ジェニングスさんにより、北極イヌイットの生活と温暖化の影響についての話が行われました。永久凍土や雪の融解による、土壌中の二酸化炭素の放出やアルベドの低下によって、温暖化がさらに促進される事実や土壌の軟弱化の問題などが紹介され、イヌイットの生活は、数年以内に消滅する恐れがあることが指摘されました。



第3部『パネル討論』
司会の博報堂・船木さん
国立環境研究所の原沢さん
モンベルの辰野さん
東北大学の明日香さん
気象業務支援センターの村山さん
WWFジャパンから、鮎川さん

最後に、第3部の「パネル討論」では、博報堂の船木さんが司会を務め、5人のパネリスト(東北大学の明日香さん、WWFジャパンの鮎川さん、モンベルの辰野さん、国立環境研究所の原沢さん、気象業務支援センターの村山さん)とともに、温暖化問題に関しての討論が行われ、それぞれの温暖化に対する考えなどが披露されました。その中で、印象に残ったのは、村山さんが発言された内容でした。「1人1人が、必要なときに必要なものを使う省エネを実行すれば、京都議定書の二酸化炭素1990年比−6%はクリアできる」「1人が1本木を植えれば、温暖化はとめられる。木でなくても、鉢植えでもよい」。なんとなく説得力があり、これなら自分も実践できそうな気がしました。


若い参加者から鋭い質問も。 質問に丁寧に回答するパネリスト

今回のシンポジウムを聴いて、個人的には、「温暖化」と「教育」という2つの重大テーマについて考えさせられました。温暖化をとめるには、1人1人の意識改革が必要であり、地球環境に対する理解力の向上が必要であり、温暖化問題と教育問題は切っても切れない関係にあることを痛感しました。

本シンポジウムは大変よくできており、6時間近くに及ぶ長時間にもかかわらず、飽きることなく、楽しく有意義な時間を過ごすことができました。本シンポジウムに参加してよかったと思います。


海外からの「温暖化の目撃者たち」。全員揃って。

レポーター:杉浦 琴(すぎうら こと)

2005年東京工業大学大学院総合理工学研究科環境理工学創造専攻博士後期課程修了(理学博士)。現在、東京大学海洋研究所研究員。これまでの研究は、外洋域の炭素循環、沿岸域の窒素循環に関する研究など。専門は、地球化学、海洋化学。


シンポジウムレポートシリーズ
第2回「サステナビリティの科学的基礎に関する調査2006」シンポジウム>>

 


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