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日本風力開発株式会社 代表取締役社長
塚脇正幸氏にお話を伺ってきました。
取材・文:EOL編集部 撮影:岩間 敏彦
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塚脇正幸 (つかわきまさゆき)さん
1959年生まれ、京都府出身。 1983年京都大学経済学部卒業、三井物産株式会社入社。石油部などで勤務。 1999年同社退社。日本風力開発株式会社を設立、代表取締役社長に就任。 2003年に日本風力開発株式会社は、東京証券取引所マザーズ市場に上場。
"世界の風に価値を持たせる"
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「日本に何日分の石油が備蓄されているか、知っていますか?」商社に勤務していた当時の仕事について尋ねると、逆に質問された。
「答えは半年足らずです。一般の人はそういうことを知らずに、暮らしているでしょ。その裏で命懸けで一生懸命やっている、エネルギー業界の人がたくさんいるのです」
第2次オイルショックとイラン・イラク戦争のさなか、商社マンとして中東からの石油の調達に苦労した。中東からの石油が止まったら、日本はどうなってしまうのかを考えると、日本独自のエネルギーを開発するしかないと考えた。
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「エネルギービジネスは、エネルギーをとった人が勝ちます。日本は石油もガスもウランも外国に売ってもらわなければなりません。でも自然エネルギーはどこにでもあります。もちろん日本にもあるので外国とエネルギー源として奪い合う必要はないですから」なかでも風力発電は技術革新もあり、必ず成長すると考え勉強を重ねた。商社に残ることも考えたが、安定はしていても、一度きりの人生だが、自分が世の中で最も役に立つのは何なのかと、悩みに悩んだ結果退職した。
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「起業するのは苦しいことです。でもたくさんの人との出会いがあり、その人たちにもらった『思い』やその人たちとの必ず成功させるという約束があります。会社を成功させるのに必要なのは、"人"です。モノもお金も人についてきます。」
起業当初、資金繰りが厳しくなると、商社の同期の仲間たちがボーナスを集めて持ってきてくれた。商社時代の仕事で、自分がリストラした人たちがやってきて、1年間無給で働いてくれた。金融機関が相手にしてくれない中、政府系のベンチャー・キャピタルの社長は「日本にはそういう仕事が必要だ」と社内の反対を押し切って出資をしてくれた。
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社員も今では80人を超え、名だたる企業からの転職者も多い。
「社員はみんな『何かやらないと』という前向きな危機感をもって仕事をしてくれています。でももっと、前へ進みたい。いつまでも補助金をもらっていることを是としたり、自然エネルギーだからやさしい電気のように言ってもらって喜んだりということからは業界として卒業してゆかないと」
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「天気予報はよく見ますよ。お天気キャスターよりも天気には詳しいかもしれません」
いつも風が気になり、空を見上げることも多い。どこにどのくらいの風が吹いているかは、社内の立地開発の担当者やメンテナンスの部署など、だれもが気にしている。
「風力発電施設を建設するのに大切なことは、地元にお金が落ちる仕組みを作ることです」
雇用が生まれ、風車が地域のためになっていることを認識してもらえれば、将来に渡っていい関係が作れる。企業として地域に貢献することを常に考えているという。
「将来は発展途上の国々に学校を作りたいです。ぼくらの世代に何ができるかと考えたら、未来の子どもたちに、残せるのはモノのような与えられるものではなく自分で考える教育ではないでしょうか」
行楽日和じゃなく、少し風のある日に、3人の娘さんと皇居を散歩するのが何よりの楽しみと笑った。
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笠井規隆 (土曜日, 14 5月 2011 12:51)
此処の社長の意志をみて、人間性を感じたね、長くホールドしたいね
ドイツ人の自然風力に感動した面もあるが、立派な人だな^^
こんな人がどんどん成功する日本に早くしたい。