エコは、おしゃれか、モテるか、儲かるか

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ラジオDJ やまだひさしさんに

お話を伺いました。

 

取材・文:温野 まき 撮影:織田 紘

やまだひさし (やまだひさし)さん

5月4日生まれ、北海道出身。TOKYO FM/JFN系列全国38局ネットプログラム「やまだひさしのラジアンリミテッドDX」のメインパーソナリティ。自称「カリスマ・エコDJ」として幅広く活躍中。2003年秋に、自身のラジオ番組企画「全国エコキャラバン」を立ち上げ、ハイブリッド車で全国各地のエコなスポットを取材。同年10月には環境省主催、Re-Style LIVE VOL.1が開催され、プロデュースと総合司会を担当し、今年で5回目を迎える。2006年に初めて開催された「エコ検定」では高得点で合格。著書に『やまだひさしの日本縦断(エコ)アンリミテッド』(ソニー・マガジンズ)がある。

僕はエコ初心者担当

 10代を中心としたリスナーに圧倒的な人気を誇る『やまだひさしのラジアンリミテッドDX』(TOKYO-FM/JFN系列全国38局フルネットにて放送)のDJやまだひさしさんは、「僕は、エコの初心者担当。ものすごく知ったかぶりできるし、すごくいい位置に居られるからね。もっとエコのこと勉強したい人は次のステージに行く。それは他の人に任せている」と笑う。とかく堅苦しい話になりがちなエコも、やまださんにかかれば敷居はめちゃくちゃ低い。

「エコは別にみすぼらしくてケチケチしたものじゃないんだよって。むしろ、リッチになるし、モテるよ!っていうようなことを言いながら僕自身もハマっていったので。おしゃれか、モテるか、儲かるかみたいな...そんなんでいい。ちょっと過激に思うかもしれないけれど、エコ儲かりますよ!って言うと、ぽけーっとしたおじさんも、パッとこっちを見ますから(笑)」

 難しい環境用語をバッサリと斬ってしまう達人でもある。たとえば、中学生が「排出量取引について教えてください」と質問すれば、「排出量取引っていうのは、要するに金で解決っていうことだよ。ひどい話だろ? あとは自分で調べろ!」という具合。

 実は、やまださんのトークによく登場する「あとは自分で調べろ!」は、やまださん自身がお父さんに言われてきた言葉でもある。

「この意味なに?って聞くと、"辞書で調べろ"って必ず言われるのね。なんで教えてくれないのかと思ったけど、"辞書を引くと、前後の文章も覚えるからだ"って。エコも同じなんじゃないかな」

 確かに、情報や答えだけをポンッと与えられるよりも、自分で調べることで世界は広がっていく。与えられるのを待っているのではなく、自ら動くこと、想像すること、つくり出すことの大切さを、やまださんはお父さんから学んだようだ。

「うちの父親はサラリーマンだったけど、物作りが好きだったね。週末になると何か作っていた。いちばんはまっていたのが日曜大工。だから、僕が使っていた机やベッド、滑り台...ぜんぶ手づくりなの。小学校入学のときに家具屋さんに連れて行かれて、どの机がいい?って聞くから、「これ!」って言うと、寸法を測って店を出ちゃう。そのまま大工センターに連れて行かれて、木材選んでるわけ。明日から机で勉強できると思ったのに、2学期になっても3学期になっても出来ない。そりゃそうだよ、日曜日しか作れないんだもん。いつ出来るんだよ?もう頼むよって(笑)」

 

若い子たちにとってエコは当たり前になる

 若い頃は環境のことを考えたこともなかったという やまださんが、エコと言い出したのは、6~7年前のこと。なぜエコだったのか。

「僕がラジオを始めて、今年でラジオ10年目になるんだけど、当時中学生だったリスナーがいつの間にかOLになったりしている。かつて10代だった子たちに、いまも聞いてます!って言われたときに、ん?待てよ、この人は成長しているのに、俺、止まっちゃっている? そう思ったら、何しゃべっていいかわからなくなった。壁にぶつかったんだよね。自分も新しいことを発見したいし、身につけたいって思った。そのうち、環境問題があちこちで言われるようになって、ゲストに呼んだミュージシャンが再生紙でジャケット作ったり、フジロックみたいな音楽フェスで、ゴミを拾って帰る若者とかを見て、え? ライブ終ってからゴミ拾い? 無料で?って驚いた。僕は何もしてないや...って」

 おそらく当時、エコを考えて行動しているのは若い世代のごく一部の人たちだったはず。でも、やまださんは、「いまから普通にこういうことを伝えれば、この子たちにとっては、それが面倒くさいっていう感覚じゃなくて、当たり前だって思えるようになるんじゃないか」と感じたという。

「だけど当時は、環境教育っていうと上からの物言いと、悲劇的な話しかしなくて、それがすごくやだった。未来の話をするのに、もう絶望的だとか、住むところも食べ物もなくなるんだよって言われたら、じゃあ宇宙に引っ越せって言うの?って」

 絶望している場合ではない、"行動すれば未来は変えられる"ことを、どうしたら若い世代に伝えられるだろうと、やまださんは考えた。そして生まれたのが、音楽のパワーを借りて、面白く、楽しくエコを伝えるRe-Style LIVE(*)だった。

 

Re-Style LIVE VOL.5withチーム・マイナス6%の裏テーマ

 Re-Style LIVE VOL.1が開催された2003年以来、自らプロデュースと総合司会を担当。同郷でもあるGLAYのメンバーを中心に、ORANGE RANGE、HYDE、元ちとせ、木村カエラ、絢香...など、そうそうたるメンバーの賛同を得て開催してきた。とにかくライブに来てもらい、アーティストを通じて地球環境に少しでも関心を持ってもらうのが狙いだったが、今年5回目を迎えたRe-Style LIVEは、いままでとはちょっと違う。

「最初は、いろんなアーティストのライブが見れるからみんな来てたんだけど、回を重ねるごとに、"音楽も楽しかったけれど、もう少しエコについて知りたかった"という意見も増えてきた。だから、今年はエコについてのボリュームを上げてるの」

 実は、今回のRe-Style LIVE VOL.5 withチーム・マイナス6%では、1992年にリオデジャネイロで開催された地球サミットで、当時12歳の少女が大人たちに向けて訴えた伝説のスピーチが裏テーマとなっている。奇しくも今年の夏、やまださんの故郷、北海道でG8サミットが開催されるとあって、この裏テーマへの思い入れには並々ならぬものがあるようだ。

「自分が生まれ育った北海道に世界各国の首脳が集まって何を話し合ってくれるのかっていうのは大変興味があるけど、それと同時に、16年前にセヴァン・カリス=スズキ(*)という少女がそうした人たちの前で、あれだけのスピーチしたのに、何も変わってねえじゃないか!って言いたくて、今回、朗読をモチーフにショーをやるんです。国の偉い人たちに僕たちの意見が本当に届くのか、そろそろはっきりと教えてくれ!っこと。それから、普通の人たちが普通にエコの気持ちを持って行動していかないと、だめなんだっていうことを伝えたい」

 そして、世界環境デーの6月5日。Re-Style LIVE VOL.5 withチーム・マイナス6%の東京会場となったNHKホールは、今年も10代を中心とした若い世代で埋め尽くされた。ライブで使用される電力は、グリーン電力証書によるもの。アーティストもスタッフもリユースカップを使い、バックステージでの食事は、地産地消に即した東京や関東近郊産であることをアピール。最高にハッピーなライブと演出で会場がヒートアップした終盤、セヴァン・カリス=スズキの言葉が俳優の緒形直人さんの声で朗読されると、会場は水を打ったような静寂に包まれた。

 ライブを目前に控えたインタビューで、「エコのボリュームを上げてみて、どうだったかは、このライブが終った後にわかる。結果が楽しみだね」と言っていた やまださん。鳴り止まない拍手がその答えだったのではないだろうか。

 

* Re-Style LIVE...2003年から始まり、環境省のサポートで行われる毎年恒例となっている一大環境イベント。VOL.5の今年は、東京は6月5日にNHKホールで、Les Frères、KCB、w-inds、風味堂、The brilliant green、松岡充・都啓一(SOPHIA)、Robin Dupuy(CHELLO)、山田大祐(影絵師)と俳優の緒形直人さんによる朗読によるライブ、いとうせいこう&柳生真吾をトークゲストに迎えて開催。北海道は6月10日に札幌市教育文化会館で、orange pekoe、CREATIVE OFFICE CUE、福原美穂、ONE☆DRAFTが出演。

 

サイト

やまだひさしのラジアンリミテッドDX

URL: http://www.jfn.co.jp/dx/

Re-Style

URL: http://www.re-style.jp/

 

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