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Carbon to Forestsの
國田かおるさんにお話を伺いました。
取材・文:温野 まき 撮影:織田 紘
國田かおる (くにた かおる)さん
1979年生まれ。2001年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。東京ガス株式会社入社を経て、京都大学大学院地球環境学舎入学。2004年には松下政経塾に入塾し25期生となる。2003年にCarbon to Forests(CTF)を仲間と設立し、2006年から代表を務める。著書(編著)に『カーボン・オフセット 自分の出したCO2に責任を持つしくみ (工業調査会)』
エコに興味がない人も欲しくなる カーボン・オフ・パスポート
「環境価値に興味があるんです」と、國田かおるさんはいう。
つまり、人はどうしたらエコなものにお金を払うか、ということを考えているのだ。
環境にいいとわかっていても、エコな商品だと知っていても選ばない。地球温暖化がこれだけいわれていても、なかなかエコなことにお金をかけられない人は多い。
「環境問題にあまり関心のない人がお金を払ってくれるためには、どうしたらいいのかっていうことが、ずっと気になっていたんです」
そこで、この 11月に生まれたのが「カーボン・オフ・パスポート」(税込500円)だ。まず前半には、なぜCO2を減らさなくてはいけないのをがわかりやすく解説している。でも、それだけじゃ興味を持ってくれる人がたくさんいるとは思えない。
「後ろ半分に、CO2を減らしたら特典が受けられるクーポンがついています。東京の店や団体が多いですが、全国約70カ所で使えます。計算したら総額5万円近いクーポンになりました」
なに? 5万円? それは買わなきゃ損というもの。クーポンが使えるのは、オーガニック・レストランや、おしゃれなショップ、ミュージシャンのライブチャージ、レンタカー、エコツーリズムの旅行代理店などもある。
「エコ活動をしている店じゃなくても、マイ箸を持ってきてくれたら割り引いてくださいって、一軒一軒お願いしました」
デザインもかわいくて、一つひとつに、ちゃんとパスポート・ナンバーが付いているのが心憎い。CTFのHPや書店、エコ・イベント、クーポンに参加しているお店でも買うことができる。
頭で考えるのではなく 体験することの大切さ
「小さい頃から、よく飛行機に乗ってCO2をいっぱい出す人生だったから、CO2を減らすためのパスポートをつくりたいって思って」という國田さんは、6歳のときに、父親の仕事でニューヨークに越した。
「暖房つけてアイスクリーム食べて、学校の行き帰りも車で移動...まったく非エコな暮らしでした。でも、郊外に住んでいたこともあって、緑がすごく多くて、いいところだったんです」
そんな國田さんが、環境について気になりだすのは日本に帰ってからだった。11歳で日本に帰ってきたとき、水がおいしくないのと、空気が悪いことに驚いたという。
「父は岩手県の人だったので、岩手の田んぼでよく遊びました。5歳くらいのときにアマガエルを100匹くらいつかまえて、ビンに入れておいたんです。お風呂場に置いて、空気を入れるためにふたを少し開けておいたらカエルが逃げてしまって、親戚のおばさんが腰を抜かしました」
ショックだったのは大学2年生のとき。久しぶりに行った思い出の岩手では、アマガエルが激減していた。
「カエルがいない田んぼが当たり前だと思っている従兄弟の子たちがいて、そういう子たちが大人になったときに、いったい誰が自然を取り戻そうとするんだろうって」
世界各地で活動するNPOワールドビジョンによる、40 hour famineというボランティアにも加わった。
「金曜日の夜8時から日曜日の12時まで食べるのをがまんする。そのかわり、1時間10円とか100円でスポンサーについてもらって、集めたお金を貧困に苦しむ土地に寄付します。日曜日の朝に目が覚めると、食べられるまであと何時間だろうと、そのことばかり頭に浮かびます。たった40時間でもすごくつらい。でも、アフリカの子どもたちの多くは、ずっと食べられないまま死んでいくんだ...って思ったとき、体験することの大切さに気がついた。それが私の社会活動や環境活動の根底にあるような気がします」
誰でもいつでも関われて 続ける秘訣は「楽チン」「楽しい」
1997年にCOP3が開かれたときに大学生だった國田さんの世代は、環境問題に関心がある人たちも多い。沈みゆく島ツバルや、北極の近くまで行って見てこようという人もいたという。けれど、自分たちが飛行機などを使って移動すること自体が温暖化の加速につながると考えるようになった。
「出した分のCO2は、自分の責任で始末するところまでできたらいいねって、仲間たちと話し合ったんです。イギリスにフューチャー・フォレストという団体があって、飛行機に1回乗ったら木を1本植林するという活動をしていました。それだったら日本でもできるかも...、2003年にCarbon to Forests(CTF)という団体が生まれました」
出したCO2の分、森にしていこうというオフセット活動だ。航空券の値段から逆算して、CO2を減らすための金額を決めて、協力を働きかける。お金を払ってくれた人には、「あなたのおかげで未来に温暖化ではなく森が残ります」というメッセージが記された感謝状を贈る。そこには、砂漠が植林されて緑になる様子の写真が添えられた。立ち上げ当時は、もっぱらオフセットを依頼する立場だったという國田さんは、2006年からは代表を引き継いでいる。
「環境活動は、ノンプロフィット(無利益)だけが頑張るものではない」と國田さんはいう。持続して社会に広めていくためには、環境問題に対する働きかけをソーシャルプロフィット(社会的な公益)として、誰でもいつでも関われるものにする必要があるのだ。
いま取り組んでいる、つくばエキスプレスの沿線「柏の葉」で展開するエコアクション・ポイント事業は、そんな活動のひとつで、CTFとはまた違ったアプローチ。
この地域に8月にオープンした「柏の葉フューチャービレッジ」では、地域の自然保護や住民参加型のコミュニティづくりといった試みが行われる。柱のひとつとなっているのが環境省の委託事業、エコアクション・ポイントだ。
「地域の人たちにエコ活動をしてもらって、それを企業が評価してポイントを発行します。たまったポイントは、近くのお店などで使えるんです」
得したな、楽しいなと、みんなが積極的にエコ活動に参加することで、地域経済も活性化していくという一挙両得の試み。
「自分が体験する感覚というのがいちばん大事なんだと思います。そして、体験を共有し合うこと。統計やデータからは、なかなか取り組んでいる人の顔が見えてこない。でも、知り合いから"こんなエコしてるよ"って聞いたら、自分もやってみようかなって思いませんか? 私も自分が気持ちいいほうに進んだら、結果としてエコといわれるようになった感じです。だから、生粋のエコじゃなくて、ゆるエコですね」
みんなが続けていけることは、どんなことなのか。きっと國田さんには未来のヴィジョンが見えているのだろう。
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岩永育美 (水曜日, 02 10月 2013 18:37)
海外事業みたいですので、理解してもらうには、時間もエネルギーも必要かと思います。
外国で生活されていたようですのでご存知かと思いますが、アメリカは紙新聞を廃止し、電子新聞になりました。
その為、失業者が増え、森を取り戻す為に理解してもらうのは大変だっと思います。私も紙新聞を販売している ので、森を取り戻したいあなたからは私は敵に映るかもしれませんが、エコ商品の1つであり、日本ではたくさんの新聞社員がいます。
日本もアメリカの真似をして電子新聞になると新聞社員、印刷会社社員、新聞販売店社員、配送社員、広告会社、古紙回収業社員、が失業者します。
頑張って、エコ活動、ボランティア活動しても支援がついていかないと思います。
ポイントの営業を読売新聞に営業してみられたらいかがですか?
私は販売店の人間ですので一般世帯に案内の手伝いぐらいしかできませんが、