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株式会社エコノスの代表取締役社長
長谷川勝也さんにお話を伺いました。
取材:森末忍 写真:亀谷光
長谷川 勝也 (はせがわ かつや)さん
1966年、北海道北見市生まれ。国士舘大学経済学部卒。31歳の時に「北見シグナス株式会社」社長に就任。その後2005年に「システム96」(札幌)と合併し、社名を現在の「株式会社エコノス」へ変更する。44店舗のリユースショップを展開する同社の代表取締役社長を務めながらも、カーボン・オフセットと北海道を結びつける先駆者として、環境事業に関する講演の講師などもしている。趣味は子どもと遊ぶことと山登り。
リユース・リサイクルショップから 循環型ビジネス総合カンパニーへ
「北海道から全国に発信していきたいんですよ」
エコノスの長谷川勝也さんの言葉には力が込められていて、手応えを感じていることが伝わってくる。
北海道におけるハードオフ・ブックオフなどのリユース・リサイクルショップ展開から、エコブログサイト「エコナコト」の運営、更にはカーボンオフセットプロバイダ事業・環境コンサルティング事業までスタートさせたエコノス。そのパワフルかつエココンシャスな事業展開には、北海道のみならず、全国から注目が集まる。「エコノス」という社名の由来は、エコロジーとエコノミーの「エコ」と、北海道の「北=ノース」からとった「ノス」だという。実にコンセプチュアルだ。
2005年リユース・リサイクルショップ同士の合併で現在の形となったエコノス。
「合併がきっかけになって、何のための事業なのか、うちの会社って何のためにあるのか、社員と真剣に考えました。リユース・リサイクルショップだけなのかって」
そこから現在の事業展開の元になる理念が生まれてくる。
「大きな"環境"っていうテーマに関して、消費者にいちばん近いところでやっているわれわれとして、もっともっと環境に貢献できる会社になっていこう。そうやって社会に貢献し、次世代につながっていくんだという"誇り"を持ってもらいたいという理念ができました。そこから『循環型ビジネス総合カンパニー』という方針を決めて、一気に環境ビジネスを展開できるようになりました」
ここには長谷川さんのエコロジー的な発想の原点とも言える、かつての青年会議所での活動の影響がある。
「26歳の頃から北見の青年会議所に入って、地域興しとか、次世代の子どもたちのために動いていたからね。環境というテーマにも敏感になれる土壌はあったのかもしれないですね」
環境の底辺を広げる エコブログポータルサイト
「最近リユース・リサイクルショップが受けているのは、環境にいいことができて気分良くなれるからなんだと思っています。お金ももらえて、しかもありがとうございますって言われるし(笑)。それで楽しいんですよ」
楽しさが受けて、若者や主婦などユーザーの身近な環境への取り組みが広がっていく様子を見て、
「エコノスがやっていく循環型ビジネスは『環境(問題)の底辺を広げる』がテーマで、そこには楽しさが必要なんだと気がつきました」
長谷川さんは、それをどう具体化するかを考えているとき、活況を呈し始めていたブログに注目した。
「ブログを通した環境コミュニケーションのポータルサイトを作ろうと思いました。自分が書いてうれしい、記事を読んでうれしいというサイトです。それはエコノスの、将来の、本当のビジネスのポータル、つまり玄関になっているんです」
個人、専門家、企業といったさまざまな立場の人々が、エコをテーマにしたブログを通してコミュニケーションをとる。サイトをサポートする企業のバナーは、各企業の環境関連サイトへとリンクする。
「一般の主婦は、たとえば大手電機メーカーの環境への取組を知らないわけです。調べようとも思わないし。それがエコナコトからバナーでポチっとやってくれれば、このメーカーそんなことやってるんだ、となるわけですよ。メーカーや商品に対しては愛着がわくようになっていくしね。主婦同士の話題になったりして、こういったつながりで底辺が広がっていくでしょ」
エコナコトに入るバナーは、一般的な一業種一社というような枠はなく、競合する大手電機メーカーなどが共存する。
「広告代理店の方からはあり得ないって言われたんですけどね(笑)」
そこには、企業の取組がそれぞれバラバラになっていて関係性やリンクがなく、非常にもったいないという思いがある。サイト内のバナーについての説明の部分には、その思いがこうまとめられている。
「すべての『エコな企業』をリンクさせます」
そして、エコブログサイト「エコナコト」は、環境goo大賞2007で優秀賞を受賞した。
カーボンオフセットから地域興しへ
カーボンオフセットプロバイダ事業へのきっかけは、洞爺湖サミット。
「サミットが近づいて、新聞などで排出権の話題が出るようになって、京都議定書ってなんだっけ、と調べました。そしたら議論が大企業と国だけのものなんです。それで何とか中小企業とか一般消費者のものにならないのかなと思って、自分で排出権の勉強をし始めたら...これはぼくの知らないところですごく動いてるぞ、と(笑)。どうやらカーボンオフセットっていう概念があって、カーボンオフセットプロバイダっていうのがあるんだ。じゃやってみようや、と」。ひとことでかたづけられてしまっているが、驚くべき行動力である。
プロバイダ事業と並行して、カーボンオフセット関係のコンサルティング事業も展開している。
「排出権などに関する情報や考え方を、先に走っているわれわれが伝えていかねばならない。それがコンサルティングです」
オフセットコストなどについて、循環型ビジネス総合カンパニー・エコノスならではの提案ができる。
「コストは価格に転嫁されていくんですが、それをマーケットが受け入れてくれなくてはモノは売れません。いまのままだと、いいものであっても売れない。それはモノを売ったことがない人が考えているからだと思うんです。カーボンオフセットは、自社の商品の付加価値を高めてくれるものです。その付加価値を高める提案をするのが、われわれカーボンオフセットプロバイダだと思ってます」
そして、カーボンオフセット事業には次のステップが見えている。
「北海道をカーボンオフセット先進地域にしたいという思いがあります」
エコノスは、環境省が主導する国内オフセット・クレジット(J-VER)制度(*)の創出モデル事業を積極的にサポートしている。
「J-VERは北海道の地域興しの一助になると思ってます」
森林吸収クレジットがJ-VERの対象になることを踏まえてのことだ。なにしろ北海道は全国の森林面積の約4分の1をしめるほどの「森林王国」。
「森林の排出権が認められれば、森林にお金が流れていくことになります。北海道の排出権がいいということになれば、そういうプロジェクトが次々と生まれます。そこには雇用も生まれて...いいなぁと思ってるわけです。北海道の排出権をブランド化したいですね」
いまや時の人とも言える長谷川さんに、北見の青年会議所時代の熱い思いが、蘇っているようだった。
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