本日開幕する春の選抜高校野球。その舞台となる阪神甲子園球場では、2007年より、全面的なリニューアル工事を行ってきた。その集大成として、「銀傘(ぎんさん)」の愛称で親しまれている内野席の屋根に太陽光パネルが設置され、3月1日から稼動を開始している。
設置されているのは、太陽電池の製造・販売を手がけるホンダソルテックのCIGS薄膜太陽電池。CIGSとは、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)という4種類の化合物の略。薄膜技術を使った太陽電池は、一般的な他結晶シリコン系太陽電池などと比べると、製造時のエネルギーが圧倒的に少ない。その指標となるのが、製造エネルギーと太陽電池がつくった電気エネルギーが同じになるまでの時間である「エネルギーペイバックタイム(EPT)」だ。太陽電池はその使用期間がEPTを過ぎて初めて、クリーンなエネルギーをつくることが可能となる。
推定発電量は年間約19万3000kWh。これは、1シーズンに同球場で行うナイター54試合分の照明の使用電力量に相当するという。一塁側と三塁側の内野席通路には表示板が設置され、昼間の試合であれば、来場者は発電状況を確認することができる。
余談だが、SIGS薄膜太陽電池は色が「黒い」ため、上空からの写真や映像などで非常によく映える。最近では、シックな黒色が外観を損ねないという理由から、同太陽電池を古い日本家屋に採用するケースも出てきているという。さまざまなメーカーの参入が後を断たない太陽電池市場。今後は見た目のデザインや、製造エネルギーが少ないといった商品の差別化が、より重要となってくることだろう。
文:加藤 聡
コメントをお書きください