気候変動の影響で、海の生態系は、過去数百万年間には無かったスピードで変化していて、後戻りできない劇的な変化が起こっている。その結果、世界中の多くの人々が悲惨な状況になる可能性があるという。6月18日付けの「Science」誌で発表されたレポートの内容だ。
「気候変動が世界の海洋生態系に与える影響」と題されたレポートは、クイーンズ大(オーストラリア)のOve Hoegh-Guldberg教授と、ノースカロライナ大チャペルヒル校(アメリカ)のJohn F.Bruno博士の2人の世界的に著名な海洋学者により、最近発表された海洋生態に関する研究をまとめたものだ。
Hoegh-Guldberg教授によると、海は人類に必要な酸素の半分を作り出し、人類が作り出すCO2の30%を吸収していて、人間でいうと、"心臓と肺"に等しいという。人類は海無しでは生存できないが、海は今、とても体調が悪いと言わざるを得ず、「地球が一日にタバコを2箱吸い続けてきたかのような状態だ」。
具体的な問題は、急速に温度上昇し酸性化する海、海流の変化、海底内のデッドゾーンの拡大など。それらが海洋生態系にもたらす影響は、サンゴ礁やマングローブの減少、魚類の減少、食物連鎖の崩壊、海洋生物の分布の変化、病気の頻繁な蔓延といったことが考えられる。
Bruno博士は「世界の海洋生態系は"ティッピング・ポイント"に確実に近づいていると我々はますます確信するようになった。一旦"ティッピング・ポイント"が来ると、変化は加速され、他のシステムにも無差別に影響を与えるようになる。今までに前例がないので、対処するどころか、何が起こるか予測さえできない状態になる」という。
2人の科学者は、「世界のリーダー達が温室効果ガスの増加を制限するために行動を起こす緊急性を、海洋の変化は改めて強調している」と締めくくっている。
大絶滅への分岐点に近づいているという研究発表を、どれくらいの人が信じて行動することができるだろうか。
文:温野 まき 翻訳サポート:中野 よしえ
サイト
- e! Science News
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