藻...なぜ海上なのか?

 こんにちは。

 今日のロラン島は、日中の気温が7℃まであがりました!でも、週末にはまた夜間に氷点下になる予報がでています。

 

 さて、今日はのびのびになっていた、vol.4からの藻のお話の続き、なぜ海上で藻を栽培するのか、について、再びロラン島の環境NPOの資料を元に説明しますね。

 

 藻の栽培は、農業と競合する必要はありません。なぜなら、藻に必要なのは肥沃な土地ではなく、適度な太陽の光と水分(淡水または海水)、養分、そして収穫と加工のためのインフラであるからです。現在、アメリカ合衆国では、屋外の沼や水路、もしくは複数の水平パネルで構成された屋内のバイオリアクターといった、地上での藻の培養システムに注目が集まっています。そして、こうしたシステムにかかる主なコストをあげると、

 

土地

 

 

屋外/屋内の光バイオリアクター

 

電力

 

CO2を含む養分

 

栽培状態の維持

 

収穫と藻バイオマスの脱水

 

バイオマス/オイルへの加工

 

 

ということになります。

 

 コスト的には、最近のデザインの屋内バイオリアクターには$1,000,000/エーカーかかるといわれ、一方水路での培養は$40,000/エーカーであるため最も経済的と考えられています。しかしながら、水路システムの場合は、低い生産量、蒸発、海草類の侵入が欠点。こうした問題は、屋内のバイオリアクターでは発生しないけれども、一方で、現在の屋内用デザインでは、バイオ燃料の加工のための十分なスペース、温度調節、光の量が限られる、などの問題があります。これらひとつひとつが、藻の栽培と利用における、経済的影響を与える要因となるのです。どちらのシステムにおいても、将来は「水」が重要な課題となるでしょう。オイルを生成できる海藻もあり、アメリカ合衆国には、藻を培養できる沿岸陸地や海水帯水層が多数存在します。しかし、海や海水帯水層から海水をポンプで揚水するには、大量にエネルギーを消費しますし、屋外システムでは、蒸発の問題が残ります。塩濃度が高くなりすぎれば、藻は死んでしまいます。

 

 ですから、バイオ燃料のための藻ファームをどこにつくるか、というのは非常に重要な問題です。水(成長のための海水と、塩分調整のための淡水)の必要性に加えて、適度な太陽光と、CO2を含めた、必要な養分の供給も求められます。淡水と養分は、どちらも町から出る排水から供給可能ですが、かといって、養豚場が町に隣接していてはいけないように、藻ファームを町の近くに作るのも考えものですーどちらも臭いがありますから。藻ファームと養分の供給元との距離が開けば、配管やポンピング、もしくはトラック輸送にかかるファームのコストにも影響してきます。

 

 オイルの必要性と藻の潜在生産力から、藻の培養の挑戦のために多額の投資が行われていますが、現在は、地上におけるシステムを完成させることに重点が置かれており、海上での培養についてはあまり議論されていません。これまで見てきたような、地上での培養に関するいくつかの問題は、海上で行えば解決することは明らかです(たとえば、場所、水、ミキシング、温度調節、養分の供給など)。その一方で、インフラ、アクセス、配送コスト、トラッキング、海上交通、環境への負担、永続性、コントロール、収穫、加工などの問題が生じます。しかし、様々な問題が考えられるからといって、海上での藻の培養の可能性を排除してしまってもいいのでしょうか?

 

 だからこそ、4月にロラン島で開催される「風/海/藻の国際ワークショップ」において、「世界の海上で、藻をベースとしたカーボンニュートラルなバイオ燃料を生成するのは可能か」が話し合われるのです。

 

 と、藻のお話はここまでで、今日は、またまたお知らせがあります。

 

 3月5日に発売された、木楽舎から出ている月刊誌『ソトコト』4月号の「知的な地的なエネルギー学!」という特集の中の、「デンマーク3都市から届いた、エネルギーフリーへの挑戦記録」という16ページの取材と記事執筆を担当させていただきました。今回はロラン島の話題ではありませんが、コペンハーゲン、スナボー、スキーヴェという3つの街/町から、それぞれ、街、家、職場でどのようにしてエネルギーフリーの実現を目指しているかについてリポートしています。日本の街や家、職場で活かすことができそうなヒントもちりばめられていますので、ぜひご一読ください!

http://www.sotokoto.net/sotokoto/

 

 次回は、藻について「なぜ、ロラン島なのか?」について書きますね。

 それでは、また!

 

PROFILE

ニールセン 北村 朋子(にーるせんきたむらともこ)

デンマーク・ロラン島在住のライター、ジャーナリスト、コーディネーター。再生可能エネルギーの利用などの環境や食など、地球と人にうれしいライフスタイル追求がライフワーク。森の幼稚園の運営委員、ロラン市地域活性化委員、デンマーク・インターナショナル・プレスセンター・メディア代表メンバー。

 

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