気候変動による風のスピードの変化が、松やメープルなどの風で種子を広める樹木の生息域を狭め、絶滅の危機に瀕する種も出てくるかもしれない、という調査結果をエルサレムにあるヘブライ大学のチームが『Ecology Letters』誌に発表した。
今までの研究で、気候変動による温度上昇は樹木の生長を早めることがわかっていたが、風の変化が与える影響が分布にどのように影響するかはわかっていなかった。Ran Nathan教授率いるチームが行った調査の結果によると、意外なことに、風が早くなろうと遅くなろうと、調査対象樹木の分布の広がりにはごくわずかな影響しか与えないことがわかった。
しかし、気候変動によって植物の適正分布が、より涼しい北極と南極の方向に移動しているスピードに対し、樹木の広がるスピードがまったく追いついていないこともわかった。結果として、多くの樹木は気候変動に耐えられないかもしれないという。
「種々多様な樹木からなる森林の構成は将来変わるだろう。そして、総面積も減ることだろう。これらの森林が我々人間に与えている、ものやサービスが被害を受けないわけにはいかないはずだ。種の拡散が確実に行われるような有効な対策が必要だ」とNathan教授は訴える。
風によって種子を広める樹木は主に北米大陸とユーラシア大陸に生息している。森林は木材に利用されるだけでなく、水資源とその質を守り、リクリエーションや観光業へ大切な資源を提供している。
国際森林年の今年、私たちの暮らしが、森林と樹木から多大な恩恵を受けていることを考えていきたい。
文:温野まき
翻訳サポート:中野よしえ
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