つくし誰の子、スギナの子
日当たりのよい土手や野原に生えるツクシ。ニョキニョキと伸びるその姿はとてもユニークです。でも、このツクシ、よく観察してみると、花も葉も見あたりませんね。一体、どうやってツクシは増えていくのでしょう。3億年も前から生き続けるふしぎな植物、ツクシにスポットを当ててみます。
ツクシとスギナの“親子な関係”
冬が終わると、春を待ちこがれていたように、茶色くて、ユーモラスなツクシがスクスクとのびてきます。では、ツクシって一体どんな植物? そのかぎは、ツクシが枯れ始める頃に同じ所に生えてくる「スギナ」にあります。このスギナとツクシの関係を調べるために、地面の下をそっと掘ってみましょう。すると、まったく違う植物に見えるスギナとツクシが地下でしっかりとつながっているのがわかります。スギナには花がありません。その花のような役割をしているのがツクシなのです。
ツクシの筆先のふしぎな秘密
ツクシを漢字で書くと「土筆」。その“筆先”にあたるのが、ツクシの頭の部分です。若いツクシの頭は、6角形の小さなタイルを貼りつけたような姿をしています。そして、ツクシの成長にしたがって、そのタイルの間にすきまができ、たくさんの小さなかさを広げたような形に変わっていきます。それぞれのかさの下にはふくろがあり、ここから、緑色の粉が飛び出すのです。これが胞子(ほうし)。花の代わりに子孫を増やす大切な役割をするのです。
キノコやシダとよく似ているよ
多くの植物は花を咲かせてタネをつくります。そのタネから芽が出て子孫が増えていきます。これが種子植物。それに対してツクシの場合、地面に落ちた胞子から芽が出て、「前葉体(ぜんようたい)」という小さなコケのような植物になります。この前葉体から生まれた子どもがスギナとして育つのです。このように胞子で増える植物は「胞子植物」とよばれ、スギナなどシダの仲間のほかに、キノコやコケ、カビなどがその仲間です。
スギナは全身、はたらきもの
スギナを観察すると、たくさんの節(ふし)があることに気づきます。その節を、くきでは「はかま」、えだでは「さや」がつつみます。これらは葉が変化したもの。ふつう、植物は葉の部分で光合成を行い、必要な栄養分をつくりますが、スギナの場合は「はかま」や「さや」では十分な栄養分がつくれません。そのため、地面から直立した「くき」やそこから分かれた細い「えだ」の部分でも光合成をします。他の植物と違い、スギナは全身で養分をつくり出しているのです。
地下に広がる大きな貯蔵庫
栄養をつくり出すスギナがまだ生えていない春まもない頃。なのに、ツクシはスクスクとのびてきます。なぜでしょう? その秘密は地面の下にあります。前の年、スギナがつくった栄養分がでんぷんとなって、くきが変化した地下茎(ちかけい)とよばれる地下の貯蔵庫にたくわえられているのです。この地下茎の栄養を使って出てくるのが、ツクシやスギナなのです。
スギナとジャガイモの共通点は?
ツクシが顔を出す頃、畑ではジャガイモの植えつけが始まりますね。このジャガイモ、地下にあるので根のように思われがちですが、じつは、スギナの地下茎と同じようにくきが変化したもの。ここに養分をたくわえておき、芽を出して子孫を増やしていくのです。スギナの地下茎にも、ジャガイモと同じように「無性芽(むせいが)」という小さなイモがついており、ここからも元気なスギナが育ちます。スギナは胞子だけでなく、地下茎や無性芽からも子孫を増やせる器用な植物なのです。
3億年前のスギナは、木のような巨体だった
胞子で子孫を増やす植物には、スギナやシダのほかに、コケ、キノコ、カビなどがあります。今から3億年前の地球上は、こうした植物たちが巨大な森林をつくっていた時代。その森林には、スギナの先祖も生えていました。でも、今のスギナとちょっと違うのは、なんと幹の直径が30cm、高さが15m以上もあったこと。もし、この時代に人間が生きていたら、スギナの草むらに迷いこんだ小さな虫になったような気分だったでしょうね。
ツクシは春の味がする?!
土手や野原にたくさんのツクシを見つけたら、ツクシ料理にチャレンジしてみませんか。まず、ツクシの固いはかまを取って、きれいに洗ってから、たっぷりのお湯でさっとゆでてアクをぬきます。軽くいためて、塩・こしょうで味付けをしたり、ゴマあえやつくだになどにすると、歯ごたえのよい“春の風味”が味わえます。また、スギナは、天日で干してお湯でせんじると、ビタミンたっぷりのお茶になるんですよ。一度、お試しあれ。
※必要以上にツクシをとることはやめましょうね。
山根容子 (金曜日, 11 4月 2014 08:36)
色々調べて、一番良く解る説明でした。すっきりしました!!有り難うございます