菅首相が退陣の条件の一つにあげた再生可能エネルギー特別措置法案が、8月26日の参院本会議で全会一致で可決、成立した。
この法案は、太陽光や風力によって生み出された電力の買い取りを電力会社に対して義務付けるもので、買い取り費用は電気料金に上乗せされる。
原案に関する修正協議の結果、電力消費の多い企業に対しては料金上乗せ分に関して割引措置を実施すること、また、買い取り価格に関しては第三者の専門家で構成される算定委員会で決めることや、自然エネルギーの種類等によって価格差をつけることなどが決められた。本法案の施行予定は来年7月。買い取り価格決定の議論に関しては、年明け早々に始める予定とのことだ。
競争的な市場経済体制を前提とした場合、一般的な財やサービスの価格は、市場における需要・供給サイドの状況によって決められる。このことはまた、市場メカニズムを通じて決定された価格が、需要側・供給側双方の事情や状況が反映された一種の情報、すなわち市場参加者に対するシグナルとして機能することを意味する。
このような情報としての価格シグナリング機能は、例えば私達消費者に対して財やサービスの質・価値等を示唆し、消費者サイドはそれら価格情報や自己の予算等を鑑みて様々な財やサービスを選択したり、購入するかしない等の経済活動の決定を行うことになる。
今回の買い取り価格算出にあたっては、このような市場メカニズム的側面の他にも、公共性・公益性といった観点が大きく関わってくることになる。なぜならば、電力が極めて日常的且つ広範な影響力を有するものであり、他の財とは異なる様々な要因が考えられるからだ。
社会的余剰の最適化と、家計や企業といった個々の経済主体の最適行動との整合性を、どのように考えるのか。今後の日本の電力政策、ひいては国益全体に関わってくるテーマであるだけに、適切な情報開示等を含む透明性や公益性の観点を伴った取り組みが重要となるだろう。
文:田中一整
*エコロジーオンラインではこの法律に関してより詳細にレポート行う予定です。
<参考記事>
菅首相が執心する「再生可能エネルギー法案」は本当に有効なのか?
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