早稲田大学は11月8日、世界銀行(国際復興開発銀行)発行の「グリーンボンド」を1000万豪ドル購入したことを明らかにした。グリーンボンドとは、気候変動問題に取り組むプロジェクトを資金面から支える目的で、世界銀行が発行する債券のこと。対象となる事業は代替エネルギーの導入、温室効果ガスの排出軽減に関する新技術の開発支援、森林再生、洪水対策など多岐にわたり、起債によって調達された資金はこれらの事業に配分される。
世界銀行は2008年、公的機関・民間企業の提携による地球温暖化対策を促進する目的のもとで“開発と温暖化問題に関する戦略的枠組み”(Strategic Framework on Development and Climate Change)を立ち上げたが、このフレームワークをベースとしてグリーンボンドに関するプロジェクトは始まった。最初の案件は同年11月のスウェーデンコロナ建て、発行総額23億2500万コロナ(最終的には28億5000万コロナ)の起債案件。2010年には日本でもニュージーランドドル建てでの発行事業が行われている。
早稲田大学では、債券投資を通じて地球温暖化対策に貢献できるとして今回の購入を決定した。債券投資を含むこうした金融活動が、温暖化問題をはじめとする地球環境問題とリンクするスキームは重要な意義を持つ。2012年末で期限切れとなる京都議定書に続く温暖化対策を議論する「COP17」が11月28日から南アフリカのダーバンで始まったが、延長を主張する陣営と新たな枠組みを求める国々との間の意見集約は難航している。その要因の1つが経済発展と環境保全の調整という慢性的ともいえる課題の存在が考えられるが、グローバル経済・環境問題双方の知見を有する世界銀行が、金融というツールを駆使して経済性と環境問題対策を上手く仲介できれば、地球規模で起きている気候変動を解決する有効な手段となってくれるに違いない。
文:田中一整
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