地熱発電開発に挑む人々の熱きドラマ「マグマ」に注目!

連続ドラマW「マグマ」放送記念トークショーに登壇した真山仁さん (撮影:中川容邦)
連続ドラマW「マグマ」放送記念トークショーに登壇した真山仁さん (撮影:中川容邦)

 大飯原発の再稼働を巡り日本中が揺れるなか、代替エネルギーとして期待される地熱発電をテーマにしたドラマ「マグマ」が現在、WOWOWにて放映中だ。原作は「ハゲタカ」で知られる作家・真山仁さんの同名小説。2006年に発表され、現在の日本のエネルギー危機を予言していたとも言われる同作だが、タイムリーな時期での映像化ということもあり、一段と注目を集めている。

 

 ドラマの舞台となるのは3.11後の日本。未来を担うエネルギーを開発しようと地熱発電に魂を懸ける人々を軸に、彼らの情熱に打たれ葛藤する外資系ファンドのエリート女性社員、さらには利権を狙う政治家や大学教授らとのスリリングな人間模様を描く。6月1日には、放送開始を記念し、東京都内で真山仁さんのトークショーが行われた。

 


 ドラマ化について、「多くの人に地熱発電を知ってもらうためにも、最も映像化を望んでいた作品」と真山さん。地熱発電をテーマにしたきっかけについて聞かれると、「もともとは石油をテーマに書きたかった。でも中東やテキサスに取材に行かせてほしいと言ったら担当編集から断られてしまい……(笑)。そんななか、たまたま友人のお父さんが地熱開発の協会の理事をやっていて、話を聞いてみると地熱発電は虐げられているらしいと。直感的にすごく良いテーマになるかもしれないと感じました。小説というのは障壁や困難があればあるほど面白い作品になるんです」と明かし、「しかも日本はエネルギー資源がない国だって教えられてきたのに、実際には足元に莫大な量の地熱ポテンシャルがあった。これはスクープだと思いました」と取材当時を振り返る。かつて新聞記者だった頃の血が騒いだそうだ。

 


一般的な地熱発電と高温岩体発電のイメージ
一般的な地熱発電と高温岩体発電のイメージ

 ドラマのなかでカギを握るのが、「高温岩体発電」という技術。一般的な地熱発電は、地下数㎞のところにある熱水だまりから熱水と蒸気を汲み上げ、タービンを回して発電を行う。しかし、天然の熱水だまりを探し当てるには多くの時間やコストがかかり、不確実性も伴う。高温岩体発電では、地中を深く(3000m以上)に存在する高温(300~400℃)の熱を持った岩盤まで穴を掘り、水を注入する。熱水だまりを人工的に作りだし、発電に利用しようという仕組みだ。

 


「高温岩体発電は日本やフランスなどで実証実験が行われましたが、実用化には至っていません。そんななか、現在も開発が続いているのがオーストラリア。オーストラリアには断層がほとんどなく、岩盤の特性が同じため、どこを掘っても高温の岩盤に突き当たるのだそうです。最近聞いた情報では来年度の完成を目指していて、仮に24時間365日の正式稼働がスタートすれば、これまでにない規模の高温岩体発電が実現するということで、『マグマ』での夢が1つ叶うことになります」

 

 真山さんは今後の日本のエネルギー政策について、重要なのはエネルギー安全保障の問題だと言い切る。

 

「3.11以降、国内の電力の約9割を火力発電に頼っています。こうした状況は、化石燃料の使用による温暖化もさることながら、燃料費の増加が貿易赤字をもたらしています。いったい日本は化石燃料をいつまで輸入できるのでしょうか? そして原発を減らそうとするのであれば、代わりになるものを考えないと前には進めません。そういう意味で、24時間365日発電し続けることのできる地熱発電こそ、将来頼ることのできるエネルギーだと考えます。地熱発電への転換は失敗するかもしれない未来への投資です。それでも歴史上、何度も危機を乗り越えてきた日本の強さを信じています」

 

 主演は、NHK連続ドラマ小説「カーネーション」の好演が話題となった尾野真千子。さらに谷原章介、長塚京三、石黒賢、大杉漣、釈由美子など、個性的な顔ぶれが脇を固める。連続ドラマW「マグマ」は毎週日曜日夜10時から放送中。日本のこれからのエネルギー戦略、そして地熱発電の可能性について、考えるきっかけを与えてくれる作品となるはずだ。

 


取材・文/加藤 聡

 

連続ドラマW「マグマ」

http://www.wowow.co.jp/dramaw/magma/index.html

 

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