川を再生する「近自然工法」

 そろそろ雌アユが河口付近で産卵するために川を下る季節だ。高知県安芸郡にある馬路村では、雌アユが川を下っていなくなる12月から翌1月に、安田川で「近自然工法(きんしぜんこうほう)」という工事が行われるのが恒例となっている。

 同村は、かつて美味しいアユが獲れることで知られていたが、植林されたスギの管理の影響などで土砂が川底に堆積するようになり、さらに護岸のコンクリート整備によってアユが激減した。アユのような川魚にとって川淵(かわぶち)は大事なエサ場と休息所であり、稚魚が生育する場でもある。土砂流出や護岸整備の影響で、水系が単調になり豊かな生態系が失われていくのだ。

 そこで村役場は、「近自然工法」で全国の川を再生させている「西日本科学技術研究所」の福留脩文さんに依頼し、2007年末から、安田川に伝統の石積み工法「土佐積み」を駆使した「水制工(すいせいこう)」を施してきた。これより、堆積した土砂が減り、川に深みや淵が再生され、生物調査ではアユやアメゴが増えていることが確認された。いまや数少ない天然ウナギも獲れる安田川。毎年少しずつ行われる「近自然工法」の広がりに期待したい。

 

文/温野まき

コメント: 1 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    宮城晃 (金曜日, 25 10月 2013 20:58)

    素晴らしい取り組み、この『近自然工法』の実証を全国に広め、日本の自然を今世紀中に取り戻すキーポイント、キーマンになってほしい。

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