【EOL里山部】里山資本主義のお手本!地域のエネルギーは地域の木質ペレットで!-新潟WPPC編-

初日の興奮冷めやらぬまま一路新潟へ。

ニッポンNO1メーカーの(株)さいかい産業さんの新工場を見学させていただきました。

日本市場全体で5000台。同社が勝負をかけてつくったこの新工場の生産能力はナント1万台!

だからと言って1万台つくるというわけではなく、需要の計画を予め立てて生産します。同社をはじめ、もっと国産のペレットストーブが売れれば産業も地域も森も喜びます。

写真は3.11後に仮設住宅向けに作られた“MT-311SUMITA”来シーズンへ向けてここから旅立っていきます。

心臓部のヒーターこんなところも撮ってもOKと太っ腹なさいかいさん。王者の風格か^^

この何本もある管に空気を通して熱交換させて排気するので効率も非常に良いのです。

こちらは主力シリーズのSS-1。来シーズンへ向けて準備万端。

急な見学要請にも快く対応いただき有難うございました。

次に、燕三条へ向かい、今日の先生、一般社団法人木質ペレット推進協議会事務局長の佐藤靖也さんと合流。

佐藤さんに今のペレット事情をレクチャーいただきました。

新潟県のペレット工場は13あり、どれも4~5億かけた年間2000tの大規模クラスばかり。しかし、あまりうまくは行っていないと。

理由は原材料の調達能力がフル稼働レベル(8000㎥)まで達していないのと、どれも乾燥機付きタイプで今の燃料高でつくりたくても、乾燥代に膨大なコストがかかるので思うようにつくれない。仮につくれたとしてもこの量をさばく為にはペレットストーブ2000台が必要。

これは規模が大きいことが仇になっているケースでソーラーシティー・ジャパンのスペシャルアドバイザー村上敦さんがいつも指摘している大規模プラントのアキレス腱ですね。

昨日の小国の高橋さんはそこを懸念して本体を小型にして乾燥機はつけなかったのです。

一方止むを得ず乾燥機をつけたのがこの三条施設。でも、それには里山や公園緑化管理等の支障木の処分費軽減を軸とした自然生木のペレット化が必要であった為。しかし、ここからの発想が素晴らしいのです。

これら生木を処理するのに輸送費をかけては更にエネルギーの無駄が生じるため、この施設はコンテナ式の移動施設。現地に行き、その場で処理・生産をします。これなら、多くの無駄が削減出来ます。大規模施設にはこうした芸当も出来ませんね。

更に、この移動式中規模200t能力の乾燥燃料は『木』。しかも、この支障木です。これなら先の事を回避でき、持続可能なペレットつくりが出来ます。

三条市はバイオマスタウン構想を掲げ、ここに今後はペレットステーションとしてドライブスルーでペレット購入できる場所もつくり、その担い手は障碍者施設が行う。市民のバイオマスに対する意識向上にも繋がり、一石二鳥、三鳥の素晴らしいお手本の完成です。

実はどこの自治体もこれら支障木の処分費が年間4億円くらいかかっていて、この費用をこういうような形で圧縮・利用できれば自治体も工場も助かるのでもっと多くの方にこの仕組みを知って欲しいと佐藤さん。

今もデザイン・企画会社を経営しているだけあって、ペレットをいかに普及啓発していくか?の様々なセンスの良い“仕掛け”をご披露いただきました。

例えば新潟市秋葉地区ではペレットボイラーでつくったお花を“Green’S Green”商品として東京の大手フラワーショップ等々に販売。購入者はJ-VERも購入して社会貢献できる付加価値のついたお花を販売することが出来、差別化アイテムとなるわけです。

そして、流通を通さず、園芸農家が直接花屋に売る仕組みもつくる。こうしたことで農家に適正な利益が配分され、その恩恵でペレットボイラーも持続可能に利用ができる。

『経世済民』。まさに地を行く仕組みが素晴らしいです。

この仕掛けはそれで終わりません。次に移動した場所はその秋葉地区でここにかつて石油生産日本一の、にいつ丘陵があり、そこを“石油の里から木質エネルギーの里へ”とうたって“moreTreesの森”をつくりました。この山に新潟市が11保全団体と契約して70%間伐、そして出てきた材はもちろんペレット化。そして、先の園芸農家はこのペレットを燃料として使うのです。

どこをとってみても非のつけどころの無い仕組みです。

にいつ丘陵模型
にいつ丘陵模型
新潟市、WPPC、moreTrees三者調印
新潟市、WPPC、moreTrees三者調印

その他の取り組みとしては十日町のキノコ排菌床をペレット加工し熱エネルギーを生産、長岡市とは先の剪定枝からのペレット化なども行っています。

わたしが最も印象に残ったのは佐藤さんのこのお話でした。「今まで、環境問題について色んな啓発的話をして『コト』を語ってきたが、そんな講釈より、まずペレット、ペレットボイラー・ストーブと言った『モノ』の普及が先なんだ」と。確かに、色々語ったところで、ペレットが出て行かなくては何も前に進みません。

そこで、佐藤さんは“TEH PELLET STORE”というペレットストーブを実際に見れて、体感できて購入できるリアル店舗をつくりました。その場所はオシャレな家具や雑貨が販売されている新潟市S.H.S鳥屋野潟湖畔店

このオシャレな空間にオシャレにペレットストーブを設置して実際の部屋にいるように体感すれば、これまで存在を知らなかった女性が大いに評価するだろうと。

この読みが見事に当たりオープン3年目では200台販売達成し購入者のナント80%が女性だそうです。

また、店を取り仕切るリーダーも女性。ここにも佐藤さんのきめ細かな仕掛けが伺えます。

卵が先かニワトリが先か?

ペレットの生産が先かペレットストーブ・ボイラーの販売が先か?

佐藤さんはストーブ・ボイラーの販売が先と断言します。理由はすでに新潟でもたくさんの施設があり、生産能力に関しては問題が無く、当初は多少遠くてもそういった施設から買えば済む問題で、それよりも実際に継続的に売れて行かなくては元も子もないのだと。

 

最後に佐藤さんを囲んでパシャリ。本当に色々貴重なお話を有難うございました!

 

【文・吉田 登志幸】

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