東日本大震災で暗くなった日本にまぶしい夜が戻ってきたのはいつだっただろうか。都心の繁華街を歩いていると福島原発の事故によって計画停電が実施されたのが嘘のよう。しかし世界に目を転ずるとこうした電気を手にできない地域はたくさんある。なんと世界の13億人が無電化の状態にあり、質の悪い灯油ランプなどのおかげで健康被害や火事の危険にさらされている。
エコロジーオンラインでも昨年から、ナノ発電所の販売を応援し、その売り上げの一部を途上国の無電化地域に寄付をする活動を始めている。だが、途上国相手の支援はそう簡単には進まない。支援物資を送る送料や現地の税関を通り抜けるため、不必要な手間や資金が必要となることが多い。
そんな障害を乗り越え、こうした取り組みに成功した人たちがいる。ルミンエイドを共同開発したアンナ・ストークとアンドレア・スレシュタはその代表だ。コロンビア大学で建築とデザインの勉強する彼女たちは2010年1月に起きたハイチ地震をきっかけにルミンエイドの開発を思い立つ。災害時に不可欠な食料、水、シェルターに加え、電源が失われたなかで再生可能エネルギーを利用したライトが必要だと感じたのだ。
その思いを強くしたのは東日本大震災の体験だった。なんと3月11日、彼女たちは建築学部の研修で訪れた日本で未曾有の地震を体験したのだ。
当初の開発の目的は、自然災害で最も多い雨や洪水による被災の救援だ。そのためには防水機能が不可欠。そのため、ふくらませた半透明のビニールシートで覆うデザインを採用。ランタンのように光を拡散させLEDの光を柔らかくする工夫を施し、雨や川の水に濡れる心配をせずに気軽に使えるルミンエイドが誕生した。
ルミンエイドは折りたたむとコンパクトな財布くらいのサイズになる。大量に発送もしやすく、充電も太陽光にさらすだけの簡単な操作であるため、被災地で使いやすい。そうした社会性も評価され、彼女たちは今年、米トヨタ自動車のWomen in the Worldというプロジェクトで「2014 マザーズ・オブ・インベンション(発明の母たち)」に選ばれ、女性の社会起業家としても注目の的となっている。
彼女たちはこの商品の販売開始にあわせて、世界中で電気の供給の無い地域に住む人たちに灯りを届ける「ギブ・ライト・プロジェクト」を立ち上げた。2台分のお金を支払うと1台を注文主に1台を無電化地域に届けるなど、パートナー支援団体とともに光を必要とする国や地域にルミンエイドを届けている。
ソーラーパネルとLEDの進化によって、電線の整備などに大量の予算を投ずることなく、必要とする人たちに必要最低限な灯りを届けることが容易にできるようになった。実際にアフリカでも彼女たち同様、自然エネルギーを手がける女性起業家たちが増えている。
彼女たちが切り開いた未来にはどんな光景が広がっているのか。世界中の人々の熱い視線が集まっている。
文 / 編集部