電力各社が再生可能エネルギー発電設備の接続申込みに対する回答を保留する事態となったことを受けて、経済産業省は「今後の再生可能エネルギーの最大限導入に大きな制約となるおそれがある」として、総合資源エネルギー調査会に系統ワーキンググループ(系統WG)を設置。電力会社の接続可能量の検証や接続可能量の拡大方策等について審議を重ねている。この中で、電力会社が再エネ発電事業者に求めることが出来る〝出力抑制〟の在り方の見直しが、論点の一つになっている。
出力抑制は、電力の需要が少なく供給量が大きい場合に、500kW以上の太陽光・風力発電事業者に対して30日間まで無補償で出力を抑制することを求めることを可能とする再エネ特措法上の制度。ただし、電力会社は自らの火力等の出力抑制を先に行い、再生可能エネルギーを優先的に引き受ける「優先給電」が義務づけられている。それでもなお供給が需要を上回る場合に限って出力抑制を求めることが出来る。
抑制日数の上限拡大も浮上
これまで出されている出力抑制ルールの見直し案は2つ。
1.時間単位の出力抑制=現行の日数管理(最大30日)を時間単位での管理に変更する。きめ細かな出力抑制(一部出力の抑制)が可能になれば、接続可能な再エネの容量(kW)を増加させることが可能になるとしている。
2.出力抑制日数の拡大等=上限日数を30日以上に拡大する。または500kW未満の太陽光・風力発電等も対象にすることで接続可能量(kW)を増加させる。
だが、時間単位の出力抑制はシステム開発が必要になるし、上限日数の拡大は再エネ事業者の負担が拡大してしまう。このほかにも「蓄電池の設置・運用システムの開発」「地域間連携線の活用・増設」も検討されているが、いずれにしても出力抑制ルールが改正されれば、事業計画を大きく見直さなければならない再エネ事業者も少なくないだろう。
こうした出力抑制以外にも、「売電価格に一定のプレミアムを付与して、再エネ事業者に市場で直接売電させることによる売り先の確保」「EV、ヒートポンプ、給湯器等の需要機器の普及や料金メニューによる需要創出」といった方策も提案されている。
九電は運用の工夫で対応
こうした検討に対して一方の当事者でもある電力会社はどのように考えているのか。九州電力は10月30日に開かれた系統WGの第2回会議で、上限日数30日を拡大せずに再エネ接続可能量を増やす方策を提案した。それは、対象事業者すべてを一括して抑制するのではなく、最低限必要な出力抑制量に相当する事業者だけを抑制する仕組み。例えばA社とB社が出力抑制したら、次に供給過剰になった場合にはC社とD社が出力抑制するといった具合で、出力抑制の実施延べ日数を増加させることで、再エネの接続可能量の拡大を図るというもの=図。再エネ事業者の意欲を削ぐことなく、接続可能量の拡大を図る方策としては、極めて現実的な提案だと言えるだろう。
電力小売り完全自由化を目の前にして、再エネ事業の拡大は必須だ。今回の事態は、固定価格買取制度の導入に伴う太陽光発電の設備認定の急増が主な原因だが、いずれにしても、優良な再エネ事業者が不利益を蒙らないような再エネ導入拡大のための制度設計が急務だ。
日本住宅新聞編集長
大川原通之
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