ソーシャルメディアを使う暮らしが当たり前となり、誰もが自分の思ったことを公の場で表現することが可能になった。その結果、評論家のように振舞っている自分にびっくりすることもある。
根源的にモノゴトをとらえ、社会に変化を与えるような評論なら言うことはない。だが、評論することで満足し、何も行動しなければ、社会の課題は解決はしない。ソーシャルメディアを積極的に活用してきた自分たちも、ときにそんな罠にはまり込んでしまう。「そんなことをやってもどうせ無駄なことだよ」と。
この本に出てくるご当地電力に関わる人たちはそんなことはお構いなし。前例のないことにチャレンジするんだから、評論なんてしている暇なんてない。やってみなはれ精神でチャレンジをし続けるパイオニアたちだ。
福島第一原発事故は、この国の誰にとってもウェークアップコールだった。こんな危険なことを起こす原発にいつまでも頼っていてはいけない。誰もがそう考えたはずだ。だが、いつの間にか、日々の暮らしやお金のことで忙殺され、どんどんその意識が薄れていく。まだ収束さえしていない原発事故が遠い過去のように感じてくる。
だが、世の中にはその針を戻そうとしない人たちもいる。全国津々浦々で、自らの手で、仲間とともに、自然エネルギーを生み出す努力をしている。地域の環境によって生み出せるエネルギーが大きく違ってくるのが自然エネルギーだ。自ずとその取り組みは千差万別となる。その千差万別さの奥にあるものこそ、この本が本当に伝えたかったことかもしれない。
自然エネルギーの取り組みは地域が中心だ。だからこそ、地域の人のエネルギーの高まりが基本となる。そうすると自然エネルギーに熱い人が増えれば全国各地で地域の活性化が起きるはずだ。この本にはその好例がたくさん詰まっている。そして、子ども向けだからこそ、物語を大切にし、誰しもが読みやすい内容になった。無力感が漂ういまの日本だからこそ、ぜひ読んでおきたい一冊だ。
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