エコロジーオンラインは昨年10月、米スタンフォード大学の研究チームが発表した気候変動が暴力を加速させるという調査結果を紹介した。
これまで、具体的な地域紛争に関して、こうした視点でリアルタイムで分析されたことはなかったが、シリアで起きている内戦について、気候変動と深い関係があることがわかってきた。
この研究を手がけたのはカリフォルニア大学サンタバーバラ校のコリン・ケリー研究員。彼が手がけた研究によれば、2006年から2010年にかけてシリアを襲った干ばつが、現在も世界で進行する気候変動によって引き起こされ、それが2011年に起きたシリア内戦につながったと見られるという。
この地域において過去最悪となった今回の干ばつは、シリア北部の穀倉地帯の農業を破壊し、土地を持たない農業者たちを都市に追いやった。その結果、貧困と政府による失政、その他の要因が重なり、2011年春に内乱として爆発したのではないかとケリー氏は分析する。
この内乱にまぎれてISISが台頭し、問題が複雑化。他国を巻き込む紛争へと拡大し、罪なき20,000人の命を奪い、多くの人を難民へと追いやった。
この地域に起きている間伐は、肥沃な三日月地帯と呼ばれるトルコからシリア、イラクにかけての地域に大きな影響を与えている。1900年の頃にくらべ、気温にして1℃~1.2℃上昇し、雨期の降水が10%減少している。この変化が人為由来の地球温暖化のモデルとぴったりマッチするのだ。
地球温暖化は、この地域に雨をもたらす地中海からの風を弱くし、気温の上昇で水分の蒸発を加速させてしまう。そのため、この地域の砂漠化がどんどん進んでいく。その結果としてシリアのGDPの1/4を占める農業生産が1/3まで減少。イラクからの難民ですでに混乱していた都市周辺の地域へ150万の人々が押し寄せた。ただでさえ不安定な地域に、これだけ急速な人口変化が起きれば、政情が不安になるのもうなずける。
気候変動はシリアだけに起きているわけではない。私たちが暮らす東アジアでも、これまでにない異常気象が多くなった。政治的に問題がある周辺諸国から大量の難民が押し寄せてくる未来だって否定できない。
これ以上、紛争や内戦を起こさないためにも、各国政府の迅速なアクションが求められる。
<参考記事>
米軍が気候変動に宣戦布告⁉︎ 気候変動適応ロードマップを発表
文 / 編集部
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