2月14日、河北新報が電力自由化の未来を占う上で重要なニュースを伝えている。“「卒原発の一環」山形県が新電力会社設立”と題された記事がそれだ。
この記事によれば山形県が再生可能エネルギー事業者などと組んで地域電力会社「山形県新電力」(仮称)を設立する方針を固めたという。県内で生み出された太陽光、水力、風力、バイオマスなどの電気を買い取り、県内外の顧客に販売する。まずは公共施設から始め、民間施設や一般家庭にも供給を拡大。吉村美栄子知事が掲げる「卒原発」に沿って、原発に頼らず、地産地消の電力を活用していく。
全国に地域電力の産声があがる!
こうして自治体が電力会社をつくるのは山形県が初めてではない。2013年9月、群馬県中之条町が全国に先がけて新電力「一般財団法人中之条電力」を設立している。代表理事には町長自らが就任。原発に頼らない電力の地産地消を掲げ、自然エネルギーを推進する条例も制定した。中之条町にはすでに3つのメガソーラー発電所があり、その電力を町内の公共施設に売電。利益を再生可能エネルギー推進のために活用する。中之条町ではメガソーラーに止まらず、小水力発電も計画し、自然エネルギーによる地域活性化を目指すという。
日本に先行して電力の自由化が行われたアメリカでは自由競争を通して電力価格が値下がりし、コスト高になる原発の新設が進まず、廃炉になる発電所も多くなっている。卒原発や脱原発を掲げる自治体がこうして地域で生まれた再生可能エネルギーを地域で販売する電力会社を立ち上げていけば日本から原発がなくなる日もそう遠くないかもしれない。
Switch for greenでもお伝えして来たとおり、2016年4月、日本の電力市場は自由化され、すべての家庭で自由に電力会社を選べるようになる。これまでの大手電力会社も地域独占の規制がなくなり、他の地域の顧客に電力を販売できるようになる。それに負けじと、通信、家電、金融などの分野の大手企業も電力事業に参入する方向で動き始めている。
こうして盛りあがり始めた電力自由化によって開放される市場は、全国で約7600万の家庭、約740万の商店・事業所によって構成される。なんとその規模は7.5兆円。この秋以降、本格的な顧客獲得に向けた熾烈な競争が繰り広げられることになるだろう。
来年には家庭で使う電力を自分で選べる時代に踏み出すわけだが、私たちの暮らしにどんな変化が起こるのだろう。すでに自由化されている大きな工場や施設の実例から予想してみるとこんな風になる。
あなたの選択が未来を変える!
あなたがある新電力に切りかえることを選択したとする。契約申込書に記入し、現在の会社から新しい会社へ切りかえる意志を表明する。あなたの家に来ている電線には何ら変化はない。ただ、新しい電力会社があなたが使用する電力を測定する機器を設置に来るか、送ってくるかもしれない。その機器はインターネットにつながっていてあなたの家で消費している電力を瞬時にクラウドにアップする。その電力会社は全国の家庭の電力使用をコンピューターで管理し、過不足がないように電力網に電力供給する。そしてこの電力会社から請求書が来る。銀行振り込み、ネット決済、コンビニ決済などであなたはその電力料金を支払う。ただ、あなたが電力会社を変えないとしたら、電話の時がそうであったように全く変化を感じない可能性も十分ある。
こうしてこれまでより安い電力料金を手にする人が出てくる。ただ、自由化において重要なのは電力料金を安くすることだけではない。山形県や中之条町のような地元の電力を買うことができ、原発の電気が混ざっていてない再生可能エネルギーの電力を買うこともできる。そこには私たちの意志が反映する。どんな未来をつくりたいか。それによって電力を選択する時代となるのだ。
編集協力 / 日本住宅新聞
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