エネルギーの自由化はこれまでのエネルギー業界の壁を壊して新しい事業者の参入を促します。ソフトバンク、KDDI、NTTなどの通信を中心に、eコマース、ケーブルテレビ、ハウスメーカー、鉄道、航空、自然エネルギー企業、自治体など、様々な分野の事業者が名乗りをあげています。

電気、ガス、電話などは日々の暮らしのなかで継続的に使われるものです。そういう意味でちょっとしたコストの差でも長く使うと大きな差になってはね返ってきます。電力会社側からみたら、毎月の請求は小さくても、長い契約を結べれば事業としてのうまみが出てきます。

これからはいくつかの事業を束ねることで営業や顧客管理などのコスト削減を図り、セットで料金を割引するサービスが多くなります。電気+ガスや電気+通信は当たり前。電気+ケーブルテレビ、電気+eコマース、電気+鉄道、電気+航空・・・、それぞれが複雑にからみ合って事業化されていきます。すでに固定電話+携帯電話+インターネットのセット割で混乱している消費者にとってはその選択はかなり難しいものになるはずです。

さまざまなサービスが出てきてわかりづらくなると逆に単純な選択方法を選ぶ人も多くなります。わからないからそのままでいいやという人もいるし、とにかく原子力以外の電気や自然エネルギーを選ぶという人も出てくるでしょう。

地球温暖化防止には良くても出力が不安定だ！と言われ続けた自然エネルギーも、木材などを燃やしてタービンを回す木質バイオマスや地熱発電などは出力が安定します。これらをベースにして活用すれば太陽光、風力が不安定であってもバランスをとることができます。小規模ながら自然エネルギー１００％の電力会社が生まれる可能性もあるわけです。

ただ、自然エネルギーは、天然ガス、石油、石炭などの化石燃料にくらべて圧倒的に発電量が少なく、昨年３月の統計で全体の１０％（水力をのぞくと２．２％）しかありません。当然、すべての人には行きわたりません。だからこそ、思いのある人が自然エネルギーを手がける電力会社を選べば、事業者の経営が安定して地域の自然エネルギーは増えていきます。自然エネルギーの電気は固定価格買取制度で支えられているため制度上FIT電気と呼ばれます。ぜひ、覚えておいてください。

今年はもう一つ大きなことが起こります。それは世界的な起業家イーロン・マスクが率いるテスラモーターズが家庭用の蓄電池「パワーウォール」を圧倒的な安さでマーケットに出してきます。その価格は販売されているものにくらべほぼ半額！しかも、使用する電力にあわせて９台までつなぐことができます。昼の間に発電した太陽エネルギーをこの蓄電池に貯めて夜の電気として使う人が世界に増えていきます。電力会社との契約をやめてしまう家庭も出てくるかもしれません。

そこまでいかなくても、ソーラーパネルが低価格になったおかげで、購入する電気と自家発電して使用する電気の価格差がなくなる時代が近づいています。これをグリッドパリティと言います。家庭の余剰電力の買取制度の終了が近づくと、補助用電源として電力会社との契約は最低限に残すけれど、太陽光と蓄電池で暮らす家庭も増えるでしょう。

好きな電力会社を選ぶのも、電力会社から自立するのも自由！自分らしい暮らし方を選択する時代がすぐそこまで来ているわけです。

文 / ソーシャルエコロジー研究所（編集協力 / 日本住宅新聞）