ソーラーシェアリングで進める地域の農業再生

「再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度」(FIT)が導入されて、間もなく4年を迎えようとしています。

FITが自然エネルギー業界に与えたインパクトは大きく、2015年12月末時点で、なんと2,623万kWの自然エネルギー発電設備が新たに国内で設置されました。

これらの発電設備から供給される電力は、廃炉となった東京電力福島第一原子力発電所が供給していた電力量を上回ります。

新たに設置された発電設備のうち、2,517万kWが住宅用や事業用の太陽光発電です。

日本は2000年代中盤まで、住宅用を中心に世界一の太陽光発電導入量を誇り、世界的なシェアを持つ太陽光パネルメーカーが複数ありました。そうした背景もあってか、導入しやすい太陽光発電設備が大きく増加する結果となっています。

農地が太陽光発電所になる?

一方で、FIT導入以前はほとんど事例がなかった大規模な太陽光発電の計画が増えたことから、国内各地で森林の伐採や土地の造成による発電所の建設が行われ、その中には農地を発電事業用に転用する事例も多く含まれています。

日本農業新聞が昨年行った調査では、FITが始まった2012年7月から2015年5月までの間に4,000haの農地が太陽光発電事業用に転用されたとしています。

この中には、荒廃農地(長期間耕作されなかったことで森林になっているなど、農地としての再生が困難な農地)も含まれていると考えられますが、農地は日照条件が良い土地が多いので、農業よりも収益の大きい太陽光発電用地としての利用が進んでいるようです。

農地が転用されて太陽光発電所になると、食料を生産する場所としての土地の機能が失われていってしまいます。

太陽光発電は、発電出力に比例して必要な土地の面積が増えるため、このような開発が進むと「エネルギーか食料か」という土地利用の対立構造が生まれてしまう懸念があります。自然エネルギーが食料生産の基盤を奪うということがないようにするために、この二つを両立させる手段を考えなければなりません。

ソーラーシェアリングとは

その一つの解決策となるのが、農地で耕作を継続しながら太陽光発電によるエネルギーを生み出そうという取り組みである、「ソーラーシェアリング」(営農型太陽光発電)です。

ソーラーシェアリングは、2013年の3月に農林水産省が「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」という指針を出したことで、設置が認められるようになりました。

2015年時点で500~600件の設備が導入されていると推定されており、都道府県別では千葉県が最も導入量が多いようです。

農地にソーラーシェアリングを設置するための基準としては、

①設備の下で農業ができる空間を確保すること(概ね太陽光パネルまで2m以上の高さとする)

②容易に撤去できる構造とすること

③収穫される作物の量や品質が悪くならないこと

④設備の設置による作物の転換が行われないこと

といった条件があります。このように色々な条件は付きますが、ソーラーシェアリングはしっかりと農業が継続されることが大前提となっているので、その多くは必要なルールだと言えるでしょう。

ソーラーシェアリングで農業再生!

では、ソーラーシェアリングがどうして農業再生につながるのでしょうか?

それは、太陽光発電による事業収入を農業に活用することが出来るからです。

例えば出力50kW程度のソーラーシェアリングを設置すると、年間の発電量は60,000kWh程度(一般家庭約15世帯分)になります。

この電気をFITで全量売電すると、2016年度の国が定めた調達価格は24円/kWhで計算すると、年間144万円の売電収入が得られます。

現在、私自身も千葉県匝瑳市でソーラーシェアリングによる地域の農業再生プロジェクトを進めています。ソーラーシェアリングの下で農業を営む法人として、地元の若手農家さんを中心としたThree little birds合同会社を共同出資により設立、発電事業からの収益を農業に活用していく仕組み作りをしています。

2016年3月末には、自社1号機となるソーラーシェアリング「匝瑳飯塚 Sola Share 1号機」が完工しましたが、耕作放棄地になっていた土地を借りて設備を設置し、売電事業から得られる収益で農地を再生するために必要な資金を賄っていきます。

将来的には、これを一つのモデルとして全国に展開していく計画です。

農林水産省の統計では、2015年度時点で全国に450万haの耕作されている農地があります。一方で、全国には42万3千haの耕作放棄地があるとされています。

これは、東京都の面積の2倍に相当する広さです。農家の収入減少や担い手不足による農業従事者の減少が問題となっていますが、社会の基盤を支える農業を再生していく一つの手段として、ソーラーシェアリングがもっと広がることで、農業が抱える問題解決の一助となるのではないでしょうか。

文 / 千葉エコ・エネルギー株式会社

代表取締役 馬上 丈司

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