
米メリーランド州にあるメリーランド大学の研究者たちが、夏の気候変動と喘息患者の入院数に関する報告をまとめた。その結果、気候変動によって極端になった気象パターンが喘息患者と公衆衛生に複合的な影響を与えることがわかってきた。
彼らはまず12年にわたるメリーランド州の入院記録データを手に入れ、厳しい天候と入院の関係について調べた。そこでわかったのが夏の極端に暑い日には喘息の入院患者が23%も増えていることだった。一方、大雨が降っている場合のリスクは11%も高まっていた。
なぜ、極端に暑い日には入院患者が増えるのだろう。その原因はまだ明らかにされていないが、一説によれば暑い日にはオゾン濃度が高くなり、それが喘息を発症させている可能性があるという。メリーランド州にあるボルチモア市では2040年、喘息患者の入院のリスクが2倍になることもわかった。もし、気候変動にブレーキがかからず、このままの状況で進むとすると、増加する喘息患者のために医療費のコストがかさみ、子どもたちには学校に行けなくなる子どもも増える。その公衆衛生上大きなコスト負担となってはねかえってくる。
「人々は気候変動を今ここにある危機だとは認識していない。バングラデシュの人だけでなく、ホッキョクグマだけでなく、メリーランドの人々が体験することなんです」と、この研究の中心を担ったアミール・サプコタ准教授は語る。
メリーランド州の年間平均気温は15度前後。日本の都市と比較すると山梨県甲府市の平均気温とほぼ同じだ。まさにここ日本でも同じようなことが起きる可能性がある。
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Asthma hospitalizations in Maryland could rise with climate change
翻訳・文 / ソーシャルエコロジー研究所