たくましく生きる雑草に目を向けよう
春になって、野や山の風景が、一気に色づき始めましたね。畑では青々とした麦が春風に波立ち、葉を落としていた森の木々も新緑に身を包みはじめました。そして、身近な空き地や道ばたでは、ふだん「雑草」といわれる草花が、私たちの目を楽しませてくれています。今週は、そんな雑草たちの秘密をさぐってみましょう。
どんな所でも生きていく雑草たち
よく観察してみると、ふだんはあまり気にかけない場所にも、雑草たちは元気に育っているのに気づきます。たとえば、田のあぜ道にはレンゲソウ、スズメノテッポウ、タネツケバナ、庭や道ばたにはホトケノザやハルジオン、また、コンクリートのすき間からはタンポポやハコベ、さらにビルの屋上などにはナズナ、オオバコなどを見つけることができます。こうして誰にもたよることなく、どこにでも緑を作り出してしまうのが雑草たちのパワーなのです。
はるばる外国からやってきた植物
私たちにはとても身近に感じられる雑草たち。でも、私たちが目にしている雑草には、はるばる外国からやってきたものが多いことを知っていますか。たとえば、道ばたでかわいく咲いているタンポポも、今では、外来のセイヨウタンポポが多く見られるようになってしまいました。また、空き地でよく見かけるハルジオンは北アメリカから、日当たりのよい道ばたに見かけるオオイヌノフグリも、西アジア地方からやってきた雑草です。
広く、遠くへ運ばれていくタネ
どんな小さな空き地でもたくましく生えてくる雑草たち。それは、タネをいろいろな場所へ運ぶための工夫をしているからです。よく見かける例ではたんぽぽの綿毛。風に乗せてタネをできるだけ遠くへ飛ばし、うまく地面に落ちると、そこで芽を出して大きく育っていきます。風を利用する以外にも、野原で洋服にくっつくオナモミのように、動物や人に遠くまで運んでもらうものもあります。こうして雑草たちは、しっかりと自分の子孫たちを増やしていくのです。
雑草か、雑草ではないか
田んぼのあぜ道には、農家の人たちにとってやっかいものの雑草が生えてきます。でも、この時期にピンクの花をつけるレンゲソウは、じゃまな雑草とはちょっと違います。レンゲソウはもともと中国が原産。空気中にあるちっ素分を根に取り込むため、レンゲソウと一緒に田をたがやすと良い肥料になるということで、明治頃から、さかんに栽培されるようになりまし た。最近では、化学肥料にとって代わられてしまいましたが、それでも、野生化したものが休耕田やあぜ道などでかわいい花を咲かせています。
野草には自然の恵みがたっぷり
自然の香りたっぷりの草もちに欠かせないのが、春を代表する野草の一つ、ヨモギです。このヨモギは草もちだけでなく、お灸(きゅう)のもぐさや、葉をせんじて腹痛の薬などにも使われます。また、タンポポの根は胃をじょうぶにしたり熱を下げる薬としても役立ちます。そうそう、お正月の7日に食べる「春の七草=セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ」も、食用野草の代表。最近ではスーパーでも売られていますから、こうなると、もう雑草とは言えないですね。
同じに見えても違う草
ヨモギに似た草にブタクサというものがあります。この2つは、細かく切れこんでいる葉の形がよく似ており、なかなか見分けがつきませんが、茎をつかんで引っぱってみると、ブタクサは簡単に抜けてしまうのに、ヨモギは長い地下茎のせいでなかなか抜けません。ブタクサが春になって種子から芽生える一年草なのに対して、ヨモギは地下茎から芽を出す多年草。同じように見える雑草でも、そのくらし方には大きな違いがあるのです。
毎年、変化していく草むら
いつも同じように見えている草むらでも、生えている植物を観察してみるといろいろな変化が見られます。たとえば、伐採された後の森や、何も植えずに放置された畑などに最初に生えてくるのは、ブタクサやメヒシバなどの一年草の草ですが、やがて、ヒメジョオンなどの越年性の草が中心になってきます。でも、それも長続きはせず、4~5年たつと、ヤブガラシ、ヨモギなどの多年生の雑草が中心になります。そのうちに小さな木がまじるようになって、長い年月を経て、最終的には森へと生まれ変わっていくのです。
雑草で遊ぼう
身近にある雑草でいろいろと遊んでみましょう。まず、花をつけたタンポポの茎を2つにさき、その一方のはしで結んでできるのが、タンポポ腕時計。レンゲソウの腕時計は、長めの花茎を丸くして、巻きつけて作ります。そして、3本くらいでしんを作って一本ずつ巻きつけると、レンゲソウの首飾りのできあがり。他にも、草笛として遊べるスズメノテッポウ、スズになるナズナなど、身近な雑草にも遊びのタネはいっぱいありますよ。
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