夏だ、みんなで、ファーブルだ
いよいよ夏本番。昆虫や小さな生き物たちが活発に動き出し、自然を観察するにはまたとないシーズンです。エアコンの効いた部屋でじっとなんかしてないで、図鑑やノートを片手に、公園や林、川や海へ飛びだしてみよう。
自然観察に行く時は…
みんなのお父さんやお母さんが子供だった頃は、トンボやチョウ、ホタルなどの虫は日本中いろいろな所にいました。でも、今では、自然が少なくなり、そこに住んでいた生き物の数もめっきり減ってしまいました。だから、もし、たくさんの人が自然の生き物を採集してしまったら、あっというまにいなくなってしまい、子孫を残すこともできません。虫などを観察する時は、その虫がいる場所で観察するようにし、持ち帰ったりしないようにしましょうね。
自然観察の達人・ファーブル (1)
読んだことある? 『ファーブル昆虫記』
フランスの昆虫学者、ジャン=アンリ・ファーブルのぼう大な昆虫観察日記を、30年にわたって全10巻にまとめたものが『昆虫記』。ファーブルは、それまでの科学の本のように難しい言葉で実験結果を書くのではなく、観察の時に感じたドキドキするような気持ちまでもやさしく伝えたいと思いました。だから、『昆虫記』は、ファーブル自身が昆虫と過ごした生活の記録にもなっており、1世紀を経た現在でも世界中で読まれています。
いつ、どんな生き物が観察できるの?
ほとんどの昆虫や節足動物たちは、生まれて1年以内の短い生涯(しょうがい)。幼虫の期間が長いわりには、成虫として活動するのはわずかな期間のものが多いので、観察できる時期も限られていますね。お目当ての虫がいたら、その時期を見逃さずに出かけましょう。
自然観察の達人・ファーブル (2)
観察を重んじたファーブル
ファーブルは、本に書いてあることをそのまま信じるよりも、自分で観察や実験をして確かめることをいちばん大切にしていました。だから、ファーブルの研究結果や論文に対して他の学者たちから反対意見が出ても、長い時間をかけて昆虫の観察を続けていたファーブルには間違っていないという自信がありました。『種の起源』で有名なイギリスの科学者ダーウィンも、ファーブルのことを「たぐいまれな観察者」と呼んだほどでした。
小さな生き物は、どんな所にいるんだろう
花
虫にとって、花のミツは消化がよく、動きまわる時のエネルギーにもなる食べ物。また、花粉は幼虫のえさになったり、卵をつくる養分になったりもします。これらのエサを求めて、チョウやハチなどが集まってきます。注意深く花の中をのぞいてみましょう。
石の下
昼でも日のあたらない石の下には、夜に活動する虫たちがよく隠れています。湿った土と乾いた土では、住んでいる昆虫も違いますが、ハサミムシ、オサムシ、ミミズ、アリなどせまい所を好む虫が見つけられるでしょう。
林
クヌギやコナラなどの表面から出る樹液は、昆虫たちの大好物。カブトムシやクワガタ、チョウ、カナブンなどが集まります。早朝や夕方が見つけやすい時間帯です。
外灯
夜になると、外灯の光に集まってくる昆虫や小動物がいます。ガ、コガネムシ、カブトムシやカゲロウなどのほか、これらをつかまえようと巣を張って待ちかまえるクモも見られます。
潮だまり
引き潮で、岩の低い部分に海水がたまった潮だまり(タイドプール)が観察のポイント。ヤドカリやカニ、イソギンチャク、フジツボ、ヒトデなど、海の生き物がたくさん見られる「天然水族館」です。潮の満ち引きの差が最も大きい「大潮」と呼ばれる日がいちばん観察に適しているといわれます。
観察記録をまとめるコツ
せっかく自然観察をするのですから、その結果を観察ノートに書いてみましょう。まとめるコツは、「いつ・どこで・どんな虫が・何をしていたか」。「いつ」では年月日や天気、「どこで」は場所のほか、まわりにどんな植物や虫がいたかなどもこまかく記録します。「どんな虫か」では、その虫の絵を書いたり、写真を撮って貼るのもいいでしょう。あとは、虫を見つけて自分が感じたことや考えたことなどを書きこめば、自分だけの“昆虫記”になりますね。
自然観察の達人・ファーブル (3)
『ファーブル昆虫記』が愛されるわけ
いろいろな場所へ行って、昆虫をたくさん集めて標本にすることだけが観察ではないとファーブルは言っており、自分の身のまわりにいる昆虫の観察に何年も、何十年もかけています。それだけでも、一生かかっても終わらないほどでした。身近な昆虫と出会い、観察し、さまざまな疑問を持ち、それをときあかしていく…。『ファーブル昆虫記』は、私たちに自然観察の原点を教えてくれる本です。
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