<体験レポート>草刈りの苦労を軽減する営農型発電を地域活力に繋げたい!

みなさま、こんにちは。私は滋賀県大津市に住む小中政治と申します。

私は現在、この田んぼで「コシヒカリ(米)」を作付しています。9月に収穫し、主にJAに流通させています。

もともと、この辺り一帯の田んぼは、江戸時代初期から続く、石積みの美しい棚田農地でした。

10数年前に当地域(中山間地域)の圃場整備が行なわれたことによって、耕作面積が大きく減少し、逆に法面(のりめん)が増え(従前の約5倍)、その法面管理(草刈り)に膨大な時間が費やされることになりました。

 

なんと、朝夕の涼しい時間帯に1~2時間程度で終わらせられた草刈りが、土日の日中を含め、1日半かかるようになってしまったのです。

 

子どもの頃から、家族の一員として耕作を手伝ってきた先祖代々の農地ですので、私もまた次の世代へと受け渡していくため、何とか良い方法が無いものかと考えていました。

そういう意味で、この取り組みは、よくある営農型発電とは大きくイメージが異なります。

営農型発電というと、耕作地の上に発電施設を設置する、いわゆるソーラーシェアリングという発電形態がイメージされます。この営農型発電の最大の特徴は、その形態とは異なり、草刈りというマイナス要因を発電というプラスに変える取り組みであるというところです。

大きくなった法面は耕作が出来ません。圃場整備によって5倍に増えてしまった法面をなんとか有効活用した事例と言えるんだと思います。

防草発電シートの設置を検討するにあたり、先ずは市の農業委員会に、農地法上必要となる手続きを確認しました。当初は「防草を主目的として設置するシートに太陽電池が付属しているもの」という解釈から、「農転不要」との回答でした。

その後、農水省の中山間地直接支払交付金との関係性が懸念され、一時転用許可を受けました。

法面に防草とアモルファス発電が付いた様子
法面に防草とアモルファス発電が付いた様子

営農型発電を始めたいと思った理由は、何といっても法面の草刈りが大きな負担となっていたから。農地を維持管理していくためには、年間5回以上の草刈りが必要で、概ね4週間に1回、貴重な土曜日、日曜日が草刈りでつぶれてしまいます。

この草刈り作業を、真夏の猛暑日に実施して熱中症になり、生命の危機をも感じたこともあった。そのため、なんとか草刈り作業が楽にならないものかと検討したのが、防草シートでした。

材料と工事費の見積もりを取ると、防草シートで500万円ほどでしたが、せっかく防草シートを敷くのであれば、アモルファス太陽電池の付いた「防草発電シート」にしたほうが施工費が回収できるのではと考えました。そして1,000万円の工事費を17年間で償還できるというシミュレーション結果が得られたため、設置することに決めました。

この防草シートは、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録されている「チガヤシート」を使用しており、自分も線路脇等で使用されているところを見て、いいものだということを知っていました。建設資金には、低金利のJAアグリマイティー資金を利用し、通常金利1.65%のところを、1%の利子補給や給与振込みの変更等により、600万円を0.35%の金利で融資してもらうことができました。 

関西電力のはぴeみる電の画面で発電量を確認
関西電力のはぴeみる電の画面で発電量を確認

発電実績は今のところ順調。23kWの設備で、月平均の売電収入が5万円超となるため、それをそのまま返済にまわしています。このままのペースだと、10年で融資分の返済が終わり、その後7年で出資金の回収、更にその後の3年間ぐらいが経済的メリットとなります。結果的に、圃場整備というマイナスの環境変化をプラスに変えることができ、今後の耕作や農業経営を考えて行く上での、たいへん画期的な選択になったと思っています。

もともとこのあたりは、獣害の被害が多いところで、動体感知式の録画・監視システムと、圃場整備により逆勾配となった水路から水をくみ上げるポンプ用の電源などのために、予め100Vの電源を確保していました。売電にあたっては、電線の架け替え等の費用として、別途40万円程度の追加費用が発生しました。

パワーコンディショナと監視システム
パワーコンディショナと監視システム

暑い時季の草刈りの作業量が減ったので身体的・心理的負担が軽減されました。

この草刈り作業を金額に換算した場合(業者委託した場合)、年5回実施するとして、25万円ぐらいの委託料になるようです。

獣害監視システム内部
獣害監視システム内部

今後、この取り組みが新しい営農型発電のパイロット事業として認知され、小水力発電も視野に入れながら、地域の圃場全体が発電所になってくれればと願っています。

取材・編集 / エコロジーオンライン関西 福村亜矢

www.eco-online.org Blog Feed

<里山で学ぶ>「多田 里山スクール」が開校します! (水, 20 11月 2024)
>> 続きを読む

【里山スクール講座①】丸岳コモン再生プロジェクト with けんちくや代表 山井忍氏 (Tue, 19 Nov 2024)
>> 続きを読む

【里山スクール講座②】多田の里山を味わおう!with 摘み菜ガーデン主宰 藤井文子氏 (Mon, 18 Nov 2024)
>> 続きを読む

【里山スクール講座③】丸岳コモン再生プロジェクト with 生物多様性スペシャリスト 坂田昌子氏 (Sun, 17 Nov 2024)
>> 続きを読む

【里山スクール講座④】土に触れよう!有機農業を学ぼう! VEGIMOグループ 野のファーム代表 小林寛利氏 (Sat, 16 Nov 2024)
>> 続きを読む

【里山スクール講座⑤】ストーブ、コンロにもなるログファイヤー(スウェーデントーチ)を作ろう! フォレストデザイン代表 余頃友康氏 (Sat, 16 Nov 2024)
>> 続きを読む

【里山スクール講座⑥】「いっしょに当事者研究をしてみませんか? ダルク女性ハウスコーディネーター 東京大学 先端研 熊谷研究室 研究員 上岡陽江氏」 (Fri, 15 Nov 2024)
>> 続きを読む

未来のチョコレートはカカオなし?持続可能な代替食品への挑戦 (Thu, 24 Oct 2024)
>> 続きを読む

地球の陸地面積「0.7%」の保護が、生き物を救う鍵になる (Fri, 11 Oct 2024)
>> 続きを読む

気候変動によりアフリカ全土で進む移住 感染症が拡大する恐れも (Fri, 04 Oct 2024)
>> 続きを読む

«一つ前のページへ戻る