
少子高齢化やAI・ロボットの進化で日本の産業構造が大きく変化すると言われます。そんな混乱のなかで自分たちが生き残る道を見出すのは至難の業です。そんな時代だからこそ注目されるのが「産学協働」です。
「産学協働」は新事業の創出や、新技術の開発を目的に大学などの教育機関・研究機関と民間企業が連携することから生まれます。その先に政府・地方公共団体などの「官」を加えて「産学官」、地域社会やNPOの「民」を加えて「産学官民」へと成長します。
自分たちはこれまで多くの協働事業を手がけて来ました。なかでもユニークなのが女子美術大学との関係です。自分たちが外部コーディネーターとなり、女子美術大学のヒーリング表現領域とメディア表現領域の3年生を対象に『産学連携によるキャラクター開発プロジェクト』という授業を手がけます。
このプロジェクトの目的は、美術大学におけるアートとデザインの専門教育の中から生まれる女性のクリエイティブな感性と、多くの課題を抱える自治体、企業のコラボレーションによって、新たな発想のキャラクター開発の可能性を探ることです。
昨年、この授業では林野庁に協力してもらって間伐を推進するキャラクターを開発。そのキャラクターが全国の自治体や企業の取り組みを応援する仕組みをつくりました。2年目となる今年は新しいキャラクターづくりを継続するとともに、昨年できたキャラクターも引き続きサポートし、学生たちとビジネスの現場をつないでいきます。
私たちが本格的な共同事業を手がけた相手は環境省でした。2001年、坂本龍一さんを中心とするミュージシャンたちとartists’ powerという団体を立ち上げたのがきっかけです。その団体に興味を持った環境省の担当者から声をかけられ、ゴミ削減を啓発するプロジェクトに参画することになりました。
その後、国産材の活用を訴える林野庁の取り組みや、再生可能エネルギーを増やしていく資源エネルギー庁の取り組みなど、「官」の霞が関と「民」のNPOが公益でつながる「官民協働」を進めました。
その協働が現在まで続いているのが林野庁です。昨年はこの関係の先に女子美術大学をつなぎ、「学」との協働体制をつくりました。エコロジーオンラインは環境をテーマにしたキャラクター事業においては「民」だけでなく「産」の役割も果たします。女子美術大学から生まれたキャラクターをビジネスに変えることで、「産学官民」の取り組みとして成長させることができると思っています。
キャラクターなどの分野で「産学官民」の協働が始まることはそう多くはありません。やはりモノづくりでの協働が主になると思います。そのモノづくりの分野では大手企業と大学との産学協働がよく行われるようになりましたが、中小零細企業はそう多くはありません。しかし、やる気さえあれば「産学官民」の協働の軸になることも可能です。
その実例としてエコロジーオンラインから生まれた里山エネルギー株式会社が手がけている小さなエネルギー機器の販売事業があります。
昨年から始まった取り組みですが、マダガスカルの人々が調理で燃やす木材が森林破壊の元凶となっている。そんな事実を踏まえ、日本の政府開発援助をその課題の解決に活用し、里山エネルギーがJICAの現地事務所と連携して、もみ殻やオガクズなどの廃棄物をエコ燃料に変え、それを燃やせる調理用のロケットクッキングストーブを開発します。
卒業生がエコロジーオンラインで働く足利工業大学には「学」の立場からストーブ製作のアドバイスをもらい、燃焼効率のよいロケットクッキングストーブの開発を目指します。一方、マダガスカルではエコ燃料の製造やロケットクッキングストーブの販売を「民」のみなさんが手がける。こうして国境を越えた「産学官民」のネットワークが揃いました。
私たちはみな、それぞれにできることは限りがあります。でも、それぞれがつながることで不可能だとあきらめたイノベーションが生まれる可能性もあります。
みなさんも業界を越えた協働を目指してみてはいかがでしょう。エコロジーオンラインもご支援をいたします。
文 / 上岡裕(協力:日本住宅新聞)
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