私たちのように地球環境保護を手がける団体が貧困対策や高齢者支援に関わることはそうありません。こうした変化の背景にあるのは国連が主導するＳＤＧｓ（持続可能な開発目標）の進展があげられます。

マダガスカルの森林破壊を止めることが、地域の貧困対策になることはお話をしました。音楽による認知症ケアの事業では地域の介護施設の入所者に音楽を聞いてもらうことで、暮らしの質を向上させ、抗精神病薬などのクスリを減らすことを目指します。その結果、介護にかかる国の予算を減らすことにつながります。

先進国と言っても社会的な問題がない国はありません。そうした問題によって社会から疎外される人を無くそうというのがＳＤＧｓの大きな目標です。かつてないペースで進む少子高齢化や子どもたちの貧困、女性の社会進出の問題など、まだまだ日本でもやるべきことがたくさんあります。

私たちの仕事は地球環境保護になりますが、そうした枠を超えてこうした問題に関わる必要があることをＳＤＧｓは伝えています。

僕らの変化と同様に経済の世界でも新しい潮流が話題になり始めました。環境や社会に配慮した企業に投資をするＥＳＧ投資です。Ｅ（environment）＝環境、Ｓ（social）＝社会、Ｇ（governance）＝企業統治という３つの側面から投資対象の企業を選別していきます。

地球温暖化に配慮してCO2を出さない取り組みをしたり、化学物質の対応をしたり、人権に配慮したり、社会貢献活動をしたり、これまでもＣＳＲ活動をする企業は存在していました。そこに企業統治というコンセプトが加わりました。

ここに来て日本では大手企業の不正がどんどん明るみに出ています。パワハラなどの問題や不正な取引などテレビや新聞を賑わさない日はありません。

日本企業のお粗末な企業統治をどのように健全に変えていくか。日本における企業風土を見直し、世界の投資家たちが要求する基準を満たして行かなければ、積極的な企業活動にはつながらなくなってしまいます。

ＥＳＧ投資とは別に地球温暖化防止をテーマとしたダイベスト運動も盛り上がりを見せています。地球温暖化防止のためのパリ協定をきっかけに世界に広がった活動です。これまで日本ではあまり広がりを見せてきませんでした。パリ協定から２年が経ち、いよいよ目立った動きが出て来ました。

この運動は「脱炭素」を意識したもので石油や石炭に関わる産業から投資を引きあげ、自然エネルギーなどに振り向けることで地球温暖化防止を加速します。すでにバンク・オブ・アメリカやモルガン・スタンレー、シティバンクなど、世界の著名な銀行がダイベストを表明しています。

こうした流れから大きくずれているのが日本の大手銀行です。日本国内の電力自由化にあわせて、大手電力会社が発電コストの安い石炭発電の建設に舵を切りました。それをみずほフィナンシャルグループや三菱UFJフィナンシャルグループなどの大手銀行が支えています。そのため、化石燃料への投資で世界のワースト１位、２位だという批判を受けています。世界が低炭素経済へとシフトを進めるなか、日本がいまだに石炭や石油への依存を断ち切れないのはとても残念なことです。

このままで日本は大丈夫か？

そういう声もどんどん高まってきています。ＥＳＧ投資が世界の潮流になっていくなか、このままで良いわけがありません。

2018年はもっと厳しい場面に立たされることが多くなるでしょう。

エコロジーオンラインは小さなＮＰＯ法人ですが、国や大手企業と連携して、世界で活動する団体へと成長して来ました。

私たちの力の及ぶ限り、みなさんのシフトチェンジを支援して、日本の明日を支える努力をしていきたいと思います。

新しい年も一緒に世界の課題を解決することに汗を流しましょう。

文 / 上岡裕（協力：日本住宅新聞）