この地域にはもう一つ、観光の目玉があります。それが漁業で生計を立てる海洋民族ヴェズの存在です。
ヴェズの人たちはマダガスカルの西部から南部にかけての海岸部に住み、古くからの伝統的な暮らしを守って生きています。
私たちが22日に訪れたのは多数の観光客が訪れるベタニア漁村です。
この村には里山エネルギースクールに向けた学校があります。豚も300頭ほど存在し、他の地域と同様に炭と薪で煮炊きをするため、バイオガスのポテンシャルが高い地域です。また、非電化でもあるため、小さな太陽光発電などもあちこちに見かけました。廃棄物をエネルギーに変える里山エネルギー的な展開にはぴったりだと感じる地域でした。
ヴェズの人たちは獲った魚を食べることなく販売します。そのお金で食料品や炭を購入しています。しかし魚の値段は昔のまま。最近では近海の雑魚がとれなくなり、沖合に生息するカジキマグロなどに依存することが多くなっているといいます。
地球温暖化による気候の変化やプラスチック汚染など、彼らの暮らしに大きな影響を与えます。エネルギーコストを下げることで、彼らの暮らしを少しでも豊かにできればと思います。
最終日となった23日はアンチラベ付近の村でバイオガスを導入した農家に聞き取り調査を行いました。
農家を営みながらローカルガイドとして活動するイーリーさんがバイオガスを導入したきっかけはドイツ人観光客のガイドをしたことでした。丸裸になった山々を見たドイツ人観光客が彼にこんな提案をしたといいます。
「君が森の再生にチャレンジしたら、バイオガスのプラントを寄付してあげる」
この申し出を受けたイーリーさん。自分の村に600本の木を植え、その対価としてバイオガスプラントを受け取りました。半年前のことです。
忙しい日々の暮らしのなかで、バイオガスプラントに牛の糞尿を入れ続けることは苦労がいります。3日分をまとめて投入することなどもあります、今のところ順調に稼働しているとのこと。
調査に同行したスッチョン教授は、十分にメタン発酵しているのだが、その割に火力が少ないことが気になったといいます。メタンガスを台所に送る導線の設計が悪く、どこかに水が溜まっている可能性がありまる。イーリーさんには、正しいパイプの導き方を指導し、これからの連携を約束して彼の家を後にしました。
マダガスカル・みらいのテクニカルアドバイザーとなったスッチョン教授は、NGOの活動としてすでに設置されたバイオガスの相談に乗ることも重要だといいます。
手づくりのバイオガスは5年も経つと発酵することのない無機物が残留してしまいます。15年くらいは持つと言われて設置したイーリーさんですが、5年を経過した後のメンテナンスの知識は持っていません。こうした指導についてもNGOとして手がけていくことが重要なことだと思われます。
この地域も自給自足の米づくりのかたわら、牛を飼う集落が多く、クルマを降りて聞き取り調査をしました。その結果。多くの農民がエコ燃料やバイオガスに興味を持っていることがわかりました。
今回の訪問では、子どもたちに向けた森林環境教育の実践ともに、具体的な里山エネルギーの普及に向けたビジョンが明確にすることができました。
有機廃棄物をエネルギーに変えるとともに、そこから生まれる肥料を地力アップに活用し、農民の暮らし向上させることも視野に入ってきました。
日本、タイ、マダガスカルでネットワークを構築。貧しい農民・漁民の暮らしを向上させる活動につなげることができれば幸いです。
里山エネルギープロジェクト事務局
エコロジーオンラインの里山エネルギープロジェクト / Project Satoyama Energyでは、この活動を通して森を破壊しない「里山エネルギー」を広げるリーダーを育てていきます。彼らを中心に途上国において薪や炭を大量に消費する従来のエネルギースタイルからの脱却を促し、循環型エネルギーの有効性を広め、地域社会に森の再生を呼びかけていきます。