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Covid-19は地球環境にとって吉か、凶か。ポストコロナを想像する。

7'r / CC BY-NC-ND 2.0
7'r / CC BY-NC-ND 2.0

エコロジーオンラインは今年で創立20周年を迎える。エコロジーオンラインという名前でNPOを立ち上げる前は「普通の人のエコロジー」というプロジェクト名で活動していた。

自分は31歳まで東京のレコード会社に勤めていたから、地球環境の専門家でもなんでもない。今のままの暮らし方で地球は持つんだろうか。湾岸戦争をきっかけにそんな風に思ったところから、東京の会社をやめて生まれ育った栃木に戻り、今のようなネット中心の暮らし方にシフトした。

『普通の人のエコロジー』を追い求めて。

そんな貧しい経験しか持たない自分だから、新しく活動を始めても失敗ばかり。あっちこっちの活動に参加してみては専門家や活動家の先輩から顔をしかめられるようなことが繰り返される。レコード会社出身だったから、怪しいやつ、どこの馬の骨だって感じもあったのだろう。

だが、自分と同じように変わろうと思って訪ねて来た人たちを叱りつけるような活動では広がりはない。そう思ったところから「普通の人のエコロジー」という専門家視点を持たないNPO活動をつくりあげてきた。この方向性もまた普通と違っていたので「エコロジーオンラインの活動はよくわからない」と批判にさらされることもあった。

Covid-19によって改善された中国とイタリアの大気汚染
Covid-19によって改善された中国とイタリアの大気汚染

まあ、そんな変なNPOを立ち上げて20年になったわけだが、その間にリーマンショック、東日本大震災、熊本地震、台風19号など、様々な困難に巻き込まれた。そこに新たに襲ってきたのが今回の新型コロナだ。

新型コロナで経済活動が停滞した。おかげで中国やヨーロッパの大気汚染が改善したり、大気中に放出されるCO2が減少したり、僕らのようなNPOなら喜んでしかるべき地球の状態になっている。この状態が続けばグレタ・トゥーンベリさんのような若者たちが批判する各国政府の対応の遅さも改善され、パリ協定には前向きに作用するかもしれない。

だが、状況はそう簡単ではない。新型コロナによって健康被害に苦しむ人もいるし、今のままの経済危機が続けば、先進国であっても資金難によって貧困に落ち、命を落とす人も多数出てくるだろう。途上国においては極度の貧困が進み紛争などを加速させる懸念も生じてくる。

 

リーマンショックで体感した「経済」と「環境」の両立の重要性

エコロジーオンラインはリーマンショックの際に嫌というほど「経済」の問題を思い知った体験がある。当時、僕らは東京都と組んでお台場の潮風公園に都民共同発電所などをつくる活動をしていた。そのキャラクターとしてつくったそらべあが人気でグリーン電力証書のアイコンとして活用されることになった。

当時、東京都が企業が排出する二酸化炭素に制限をかけて、それを越えた分についてはグリーン電力証書を活用してオフセットする取り組みを創設した。それによってエコロジーオンラインにも収益の一部がシェアされる約束になった。かなりの金額がエコロジーオンラインに振り込まれると言われていて、これからは楽に非営利活動ができると小躍りした。ところがそんな未来はやってこなかった。リーマンショックが起きたことで企業活動が停滞し、CO2の排出が大きく減少に転じたのだ。おかげで思惑通りにグリーン電力証書は売れない。地球温暖化防止を呼びかけている団体だから、CO2の排出量が減ったことを恨むこともできない。結果、地球にとっては良い事だからと自分たちの心をなぐさめた。

だが、それだけでは終わらなかった。里山保全事業を受注していた企業が銀行の貸しはがしにあって倒産。エコロジーオンラインも大きな困難に直面することになった。「経済」が安定していなければ「環境」への取り組みもできない。様々な協力者の助けによって難局は切り抜けたものの、その後に続いた東日本大震災と福島原発事故でさらなる傷を負うことになった。

そんな状況であったにも関わらず何とか20年を過ごして来られたのは奇跡のような話だ。昨年は台風19号の被害も体験した。家族も含めた多大な支援がなければここまで続けることはできなかっただろう。

リーマンショックを越えるインパクトを持つCovid-19

ロックダウンで閑散とするロンドン市街 Marc Barrot / CC BY-NC-ND 2.0
ロックダウンで閑散とするロンドン市街 Marc Barrot / CC BY-NC-ND 2.0

エコロジーオンラインが「環境」と「経済」の狭間に転落するきっかけとなったリーマンショックは、現在の新型コロナによる経済危機と比較されることが多い。リーマンショックで傷んだ経済を健全にすべく、各国政府が協調して経済活性化に予算をつかった。その結果、世界経済は勢いを取り戻し、二酸化炭素の排出も再び上昇に転じたのだ。

コロナが終息していけばこのリーマンショックの時と同じようなことが起こるという専門家も多い。だが、本当にそうだろうか。リーマンショックの際に普通の人たちは命の危険を感じることはなかったし、行動を制限されることもなかった。それにくらべて今回は世界中のあちこちの都市が封鎖され、移動が制限され、テレワークが推奨された。オリンピックだって延期を余儀なくされ、来年の開催を危ぶむ声も多い。

こうした体験を通して私たち「普通の人」は、これまでになかった多くのことを学ぶのではないだろうか。自国の医療体制は整備されているのか、貧困や格差は何を社会にもたらしたのか、世界の国々に教育は行き届いているか、新たな感染症はどのように生まれるのか、そんな危険な地球でどのように大切な人の命を守るか・・・。今回の新型コロナ問題は私たちがSDGsを通して解決しなければいけなかった様々な社会課題をあぶり出し、誰しもが自分事として感じるきっかけになったと言えるのではないだろうか。

命の大切さを感じながら、コロナ後の未来を想像したい。

エコロジーオンラインはリーマンショックの際に「経済」と「環境」の両立を大切にすべきだということを嫌というほどに味わった。今回は新型コロナウイルスによって「社会」の大切さについて多くを学ぶだろう。

今回はリーマンショックとは確実に違う。地球温暖化によって変化した社会からは感染症の脅威はすぐにはなくならない。今後の脅威をいかに予測し、被害を少なくし、こうした地球が抱える課題と共生していく方法を考えることが必要になるのだろう。

無人の観光地の映像など世界各地で映画のような現実を見せられている。まさに人類は未体験の日々を過ごしているのだ。今回のパンデミックを体験した人たちがどんな暮らしを選びとるか。まさにそこに地球との共生の種が隠されている気がする。

手を洗い、外出を控え、命の大切さを感じながら、コロナ後の未来を想像したい。

エコロジーオンライン理事長 上岡 裕

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