アマゾンカワイルカ / Amazon river dolphin
みなさんは、ピンク色のイルカを見たことがありますか?
ファンタジーの世界のような話ですが、世界にはピンクイルカのようなおもしろい生き物がたくさん存在しています。
今回取り上げるのは、「アマゾンカワイルカ」。別名ピンクイルカとも呼ばれています。
彼らはピンク色や淡いブルー、灰色の体をしています。
アマゾンカワイルカは、主に南アメリカのアマゾン川周辺に住んでいます。
海に住むイルカもいれば、川に住むイルカもいるようです。
カワイルカは他にも数種類いますが、それらはまとめて「Boto」とも呼ばれています。
アマゾンカワイルカはその中でも一番大きな体を持ちます。
障害物もへっちゃら!アマゾンカワイルカの特徴
アマゾンでは、雨季に森が水に浸かってしまう「浸水林」と呼ばれる現象が起きます。
なんとこの時期は、水位がいつもより約12メートル上がることも!
アマゾンカワイルカの背びれは、そんな浸水林となったアマゾン川の中でも引っかからずに泳げるように、こぶのように退化したんだとか。
さらに、隙間に隠れた獲物も、長い口先で器用に捕まえることができます。
出っぱっているおでこの脂肪は、「メロン」と呼ばれています。可愛いですね。
なんで体がピンク色なの?
子どものころはだいたい灰色や青色のような色をしていますが、大人になるにつれ、だんだんピンク色に近づいていきます。
一般的に歳をとったオスは、よりピンク色になると言われています。
ピンク色の動物といえば、フラミンゴを思いつく方が多いかと思います。
フラミンゴは食べる物によって体がピンク色になりますが、アマゾンカワイルカはそうではありません。
彼らはメスをめぐって他のイルカと争ったり、体が岩や植物にこすれたりすることによって、体がピンク色になります。そのため、体の表面には基本的に傷がついています。
皮膚の色素が弱く、毛細血管がすけて見えるため、ピンク色をしているイルカもいるようです。
濁った水の中も自由自在に泳げるヒミツ
↓濁っているアマゾン川の中を泳ぐアマゾンカワイルカ
かなり濁った水の中も、平気で泳いでいますね。
川の中には、岩や植物などの障害物がたくさんありますが、かなり濁っているため、実は目はあまり役に立ちません。
そのため、アマゾンカワイルカの目は小さく退化し、視力も良くはありません。
そこで、彼らは目で見る代わりに「エコーロケーション」を使います。
エコーロケーションは、クジラやコウモリ、鳥など1000種以上の動物が使っています。
アマゾンカワイルカの場合、頭にある “メロン” から出した超音波の反響によって、魚やモノの距離や位置、大きさなどが分かります。
常に自分の身の回りの状況を把握するため、一秒間に約80回、クリックスと呼ばれる音を出します。そうすることで、複雑な川の中の情報も分かるのです。
↓1:14ごろ〜 エコーロケーションの時に出すのはこんな音。
海のイルカとどう違うの?
アマゾンカワイルカは川という環境に適応するため、海に住むイルカとは少し違う進化を遂げました。
海に住むイルカは速さに、川に住むイルカは機敏性に特化した体を持っているのだそう。
海に住むイルカは、早く泳げるように弓のような体の形をしています。
そして首にある椎骨(ついこつ)と呼ばれる骨がくっ付いているため、首をあまり動かすことができません。
それに比べて川に住むイルカは、椎骨がくっ付いていないため、首をかなりいろいろな方向に動かすことができます。上の動画でも、首をあちこちに動かしていますね。
泳ぎの速さは、海に住むイルカよりのんびりですが、体がとても柔らかく機動性もあるので、浅いところから狭いところまで、障害がたくさんある川の中も自由自在に泳ぐことができます。
アマゾンカワイルカは毎日、自分の体の約5%分の食べ物を食べます。
アマゾン川には、ピラニアやカニ、カメなど様々な生き物が泳いでいます。
ここでの食物連鎖の頂点であるアマゾンカワイルカにとっては、まさに食べ物の宝庫です。
サメなどの天敵もいないため、海よりも暮らしやすいと言うイルカもいるとかいないとか・・・
謎だらけのアマゾンカワイルカ
少しずつ生態がわかってきたものの、これらはほんの一部にしか過ぎません。
彼らの住むアマゾン川はとても濁っているため、水中の調査をすることが困難です。そのため、アマゾンカワイルカについてはまだまだわからないことばかり。
漁船の網に絡まって死亡してしまったり、工場や生活排水による川の汚染、ダム建設により住む場所を奪われたりするなど様々な要因でアマゾンカワイルカの数は減り、絶滅の危機にあります。
彼らを保護するために、今も多くの研究者たちが謎を解明しようと奮闘しています。
2023年10月 100匹以上が大量死
2023年10月には、アマゾン川に棲むアマゾンカワイルカが100匹以上も死んでしまうというニュースが報じられています。
気候変動による干ばつで、川の水位が下がり、水温が通常より10度も高い39度にまで上昇していたようです。
私たち人間が入るお風呂と同じくらいの高温の水の中で生きるのは、イルカたちにとっては相当厳しいのではないでしょうか。詳しい死因については未だ解明中のようですが。。
近年、気候変動のニュースを目にすることが多くなってきました。人間だけではなく、多くの動物たちにも甚大な影響が出ていると感じます。
コピー・イラスト / kawe